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目標地点


 私と和歌は、公園へ入った方向と逆方向にある小さい階段に向かって歩き始めました。


和歌「・・・私、今でも思い出すんだけどさ、よく脱出出来たなぁって・・・・」

柴田「あぁ・・・・本当に・・・あれは・・・」


 あれからというもの、蛇頭ヶ丘のトンネルの脱出の夢をよく見ると和歌は言っていました。慣れで夢の途中から、もうこれは夢であるという事が分かってしまって、自分の目を覚まさせる事が出来るようです。しかし最近ではそのまま夢だと分かった上で夢の続きを眠りながら追っているそうでした。その方が現場を俯瞰的に見る事が出来て良いと言っていました。


和歌「そこでいつもと違うのはね、そういう夢の見方を続けていると、えいちゃん側の視点で夢の続きが見られるようになってきたのよ。操作が出来るようになってきたの。夢の中の自分の姿を客観的に見る事が出来るのよ。凄くない?(笑)これって私の超能力かな?」

柴田「ええ?マジで?・・・・それは凄い能力だな。てか、夢の中の主人公が変わっちゃうってことだよね?和歌が見てる夢なのに、俺の視点に切り替わるって・・・・なんかの映画みたいな・・・・」

和歌「そう。だから夢の中で見る私自身の姿は雨でずぶ濡れ、泥だらけでさ、全然可愛くないのよ(笑)えいちゃん、よくこんな泥んこで汚い女と付き合ったなってなっちゃうじゃない(笑)こっちからしたらさ」


柴田「そんなことは無い。必死に生きようとしたんだよ。その結果、みんなで脱出出来た。俺から言わせれば和歌のおかげだよ」



 私はあれからまだ蛇頭ヶ丘の夢を見ていません。トラウマになってもしょうがないような出来事であったのに・・・・・。



柴田「和歌に助けられたんだよ。和歌が居なかったら脱出出来なかったかもしれない」


 炎で塞がれてしまったフェンスから出られなくなった光景を見て、私は一度脱出を諦めそうになりました。しかし一緒に居た和歌に励まされて、もう一度逃げてみようという気持ちになったのです。もし私一人だけであれば、その時はきっと諦めていた事でしょう。一緒に行った修治もリュウも、乃蒼も早川も蛇頭ヶ丘でそのまま蛇島たちに殺されていたかもしれない。

 私にとって命の恩人は和歌でした。皆にもその事をいつか伝えなきゃいけない。映画ではヒーローと言えば男性を指すことが多いですが、一度脱出を諦めた私のような人間ではなく、この最後まで諦めなかったこちらの和歌が私にとってヒーローなのです。

 少し前に起きた事件の筈なのに、思い出せば思い出すほど、何故か自分は遠い過去の事のように感じます。逃げ切ったという達成感というよりは、退院当日に再度蛇島に襲われて蛇頭ヶ丘の外でまた次のステージが始まってしまった・・・・。そのような感触です・・・。今の事で頭が一杯になっていました・・・・。



 様々な事を考えながら、二人で二十分程度歩いたでしょうか。

 和歌の足が止まります。



和歌「えいちゃん・・・・着いたよ」


柴田「・・・・・・・・」



 私達は頭上を見上げました。







 Hotel 『PAST』





柴田「PAST・・・・・『過去』って意味か・・・・・・」

和歌「えいちゃん、入ろう」


 私達は和歌の言う、『目標地点』に無事到着しました。

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