修治の家庭事情
私と修治は早川の無事を祈りながら病院を後にしました。結局交通事故で一泊だけの入院でしたので、病院を出たのは事故をした次の日の昼間でした。
私達はトボトボと歩いていました。どこに向かって歩いているのでしょうか。
時折周囲を確認し、蛇島が近くに居るかどうかチェックしていました。普段よりなんだか緊張しています。
救急車の音や大型バスの音さえ聞こえなければ、本当に静かな通りでした。少し歩くと住宅街があり、公園に向かう親子連れとすれ違うような道でした。
修治「柴田、もう俺達は諦めるしかないのかな?」
柴田「早川があんな事になっちまったからな・・・」
修治「俺が美恵に俺の家に泊まれと言ったんだ。彼女を守るつもりだったけど・・・・守れなかった俺が悪い。全ては俺が。元凶は俺なんだ・・・・・。もし俺で良ければ最後までお前に付き合わせてくれ。俺の弟も関わっているかもしれないし。どうなっているのか調べたい。俺には・・・・・家族は居ない。居ないようなもんだ。死んだって別に良いんだよ。悲しむ人も居ないから」
修治は家族の事であんなにも涙を流す親をこれまでの自分の人生で見た事が無いのです。これまで生きてきて、両親の涙を見た事が無いのです。常に自分が住んでいる町から遠く離れた街にいて、困った時だけ電話で連絡をする。そして息子が入学した学校の世話をする。生活費を送る。現状というかここ長い間、人生のほとんどが、ただそれだけの関係なのでした。
むしろ向こうには新しい家族が居て、幸せに暮らしているかもしれない。だから自分は両親が居る家に寄せ付けられないんだ。そのように考えると自分の存在価値は、意味は親からしたら一体何なのか、よく分からなくなる時があります。父や母は私が早川のような状態になったら大粒の涙を流して泣いて、運転手に対して激昂してくれるでしょうか。早川の母の怒りと悲しみは演技ではありません。親だからです。家族だからです。家族が大好きだからです。
もし人が亡くなって涙を流すのは、きっと思い出があるからだと思います。思い出が無ければ涙は流れないかもしれません。他人に涙を見せたくなければ思い出を作らない事が必須なのかもしれません。
柴田「そんなこと無ぇよ。悲しいよ。俺が泣いてやるから」
修治「お前が?(笑)」
柴田「そりゃお前当たり前だろ、友達なんだからさ。先輩とは思ってない(笑)・・・なんだよ年上の同級生が先輩って(笑)今もこうやって一緒にどこにいくわけでもなく歩いているじゃないか」
修治「そうだな・・・・・」
空を見上げました。いつもと変わらない青空で、鳥が飛んでいます。更に歩き続けます。
修治「そういえばお前の大好きな和歌や、親友のリュウ、馬鹿乃蒼は大丈夫なのか?」
柴田「和歌は昨日メールしたらちゃんと返信あった。大丈夫だったてさ。詳しく聞いたら、やっぱ警察が家の周りを車で巡回してるみたいだ」
修治「まぁ、さっき会った末広さんもなんも言ってなかったし、誰からも何も連絡が無いって事は無事って事だな。良しとするか」
ピリリリリリリ・・・・・・
ピリリリリリリ・・・・・・・
そんな話を修治としていたら、私のポケットの中にある携帯電話が鳴り響きました。事故に遭ったのに画面に傷が入った程度で、なんとか携帯電話は機能していました。
この作品が面白いと思ったらブックマークと感想をお願い致します。
広告下の☆☆☆☆☆→★★★★★評価を宜しくお願い致します。
作者のモチベーションアップになります。
作者のエイルはブログもやっております。
是非、立ち寄ってみて下さい。
https://eirblog.com/