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もう一つの手がかり


 修治と私はこのまま症状に何も変化が無ければ退院だそうです。ついでに私は先日の切り傷を診て貰いましたが、問題は無さそうでした。薬を飲むように指導されました。


修治「柴田、これからどうする?末広さんの分析も時間がかかるだろ」


 考えました。これ以上私と修治が動けば動くほど、被害者が出てしまうのではないか・・・。そう思ったのです。


柴田「潔く家に帰ろうと思う。家ならとりあえず、蛇島に後をつけられなければ安全だという警察の言葉を信じようと思う」

修治「・・・そうか。家に帰ってどうする?」


 私は背中から一冊のボロボロになったノートを取り出しました。

修治「・・・・あ!これ車内から持ち出せてたのか!」

柴田「俺も修治と一緒で嫌な予感がしたんだ。トートには入れずにとっさに自分のズボン内側のケツの所に弟のノートさしておいた」

修治「ナイスだ柴田!一度俺のホテル寄って行くか?お前が言っていた『違和感』について調べようか」

柴田「一緒に調べるか。でも、修治だとこの違和感に気付かないかもしれない」

修治「そうなのか?それじゃあ・・・・・和歌やリュウ、乃蒼だったらどうだ??分かるか??」


 普段の行動範囲が私と似ていないと気付かない位の僅かな部分。この私の違和感に賭けてみるのもいいのではないかと思っています。しかし修治は普段何をしているかさっぱり分からないので、このノートを調べるのには他の人間の協力が必要でした。



修治「あっ・・・・・・」

 私は振り返ると茶髪で長身の身形の良い女性が立っていました。とても綺麗な女性でした。誰かに似ています・・・・とても誰かに似ています・・・・。




「美恵の母です」


柴田「・・・・・」

修治「・・・・・」



 急な早川の母親の登場にビックリしてしまい、声が出なくなってしまいました。



早川母「柴田君と芹沢君・・・よね?」

柴田「はい・・・・あの・・・はじめまして・・・・・」

修治「あの・・・・・・この度は申し訳ありません。私の運転のせいで美恵さんがこんな事になってしまって・・・・」


 早川の母親は私達の姿を見て、少し寂しそうに答えました。


早川母「あの子はね・・・・父親の言う事しか聞かないのよ・・・・。父親が単身赴任でね。私が親代わり・・・というか私は本当の親なんだけどね・・・・。家族全員で父親の元に引っ越せばよかった・・・・。今では強くそう思ってる・・・・」


 早川の家は何か事情がある家庭なのでしょう。留年が決まった時も退学をするのか或いは、働きながらの定時制に編入するのかで揉めていた事を他の友人から聞いた事がありました。ともすれば留年の理由は父親の単身赴任が理由なのかもしれません。



修治「あの・・・・・本当に・・・巻き込んでしまって・・・・・申し訳ありません・・・・」


 私は修治と一緒に頭を下げました。




早川母「・・・・・に・・・・」

二人「・・・・はい?」




早川母「に・・・・二度と美恵に近づかないで!!お願いします!!もう二度と関わらせないで!!」



 母親は泣きながら唾を吐きつけるように私達に言い放ちました。


 自分の娘がベッドで呼吸器をつけられて、あのような姿になっているのです。声を荒げるのも、涙を流すのも無理もありません。親が子どもを思う気持ちに私達のような他人の意見で打ち勝てるわけがなく、何も答える事が出来ず、ただただ早川の母親に謝り続け、修治と唇を噛んで下を向いていました。


 私達は子どもなのです。何も責任がとれません。私達の判断で結果的に早川は意識不明になってしまいました。責任が取れない何もできない、無力で無能な自分達にただただどうしようも無い苛立ちがありました。

 自分を許せない・・・・・・こんな気持ちのまま・・・・続けていくことが出来るか・・・。


 ・・・・・・どうにか・・・・この事件を終わらせたい・・・・・。


 早く・・・・・大人になりたい・・・・・・。周りに何を言われても・・・・・責任が取れる大人になりたい・・・・・。

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