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【シュークリーム・サンデー】~幻獣を説得して動物園の檻に入ってもらうのだ~〔検索除外・永久封印〕  作者: 楠本恵士
第5章・なにやらボクを亡き者にしたい暗殺集団に狙われているのだ
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第7話・モノアイ娘にも……いろいろと動物園に入れない事情があるのだ

 山盛りの眼球料理を食べ終わった、サンデーとナイトが店を出ると、店横の狭い路地で男女が言い争っている声が聞こえた。

 見るとサンデーの席に料理を運んできた一つ目の女性店員と、二つ目の男が何やら揉めていた。

 一つ目娘が言った。

「信じられない、どうして一緒に動物園に入ってくれないの?」


 二つ目の男性が言った。

「オレは現世界から洞窟を通って、こっちの世界に来た現世界人だぞ。万が一、ウ●コになったらどうするんだ」

「それはイヤだけど……でも、動物園の檻に一緒に入って見世物になってくれても」

「ムチャを言うな! オレだってウ●コにはなりたくない」


 しばらく、痴話喧嘩(ちわげんか)らしき会話を聞いていたサンデーが、話しに割り込んできた。

「聞きたくもなかったが、痴話喧嘩らしきモノが耳に入ってしまったのだ……彼氏が現世界人なので揉めているのかなのだ」

 単眼(モノアイ)娘が、タメ息混じりに言った。


「彼氏と一緒になら、檻の中に入ってもいいんですが、離れて別世界で暮らすとなると」

 腕組みをして考えるサンデー。

「また、異世界往来の問題なのだ……三代続いた異世界人ならウ●コの呪縛から、逃れられるかも知れないけれど──転移や召喚でない一世代の現世界人には、ウ●コの法則が発生するのだ」


【第二の法則】

 召喚や移転でなく、ルートを通ってコチの異世界に来た現世界人は、ルートでしかもどれない。

 その場合、もどる現世界は現世界人がいた世界のみで、途中でウ●コになってしまう。


「異世界人と現世界人の間に生まれた子供は、どちらかの血の濃さでウ●コになるか、ならないかが決まるのだ……その確率はデンジャラス過ぎて、不確実要素が大きいのだ」


 ナイトがサンデーに訊ねる。

「なんとか、ならないんですか。彼氏がウ●コにならずに、一つ目の彼女と同じ異世界の動物園に行く方法」

「こればっかりは、どうにもならないのだ」


 ここでサンデーは、見えない壁を越えて読者に直接話しかけてきた。

「なんなのだ、その目は……また、作者に頼み込んで設定を変えれば解決すると……言いたげな顔をしているのだ。そんなご都合主義が通じるのはナイトの時だけなのだ……困難を解決して乗り越えてこその、ヒロインなのだ」


  ◇◇◇◇◇◇


 一つ目の娘の恋人を

、どうやってウ●コ化させずに異世界へ移動させるか……その答えを探して、サンデーはナイトと一緒に町をブラブラと散策して歩く。

「こうやって、歩いていると意外なところから、問題解決のヒントが見つかったりするのだ」


 狭い路地を歩いて行くと、サンデーたちに背を向けて、落とし穴を掘っている忍者がいた。

 忍者に話しかけるシュークリーム・サンデー。

「何をしているのだ?」

 振り向きもせずに、石畳を外した路地に落とし穴を掘っている忍者が答える。

「見りゃわかるだろう、落とし穴を掘っているんだよ」

「なぜ、掘っているのだ?」


 忍者はサンデーに背を向けて、穴を掘り続ける。

「実はな、殺し屋だから依頼主の名前は明かせないが、あるヘタレな人物からシュークリーム・サンデーって名前の女の子を、事故に見せかけて暗殺するように依頼されてな」

「ほうっ、それは大変な仕事なのだ……なんという名前の暗殺集団なのだ?」


「〝隣の殺し屋さん〟」

「なんか、可愛らしい集団名なのだ」

「そう言ってもらえると、ありがたい……うちのリーダーが。あっ、リーダーと言うのはアイパッチをした露出度が高い格好をした女だが。そのリーダーが命名したチーム名だ、昨今は殺し屋集団も増えてきて少しでも親しみやすいネーミングの方がいいと言ってな」


 忍者の話しは続く。

「ここだけの話し、過去にパーティーを追放されて、逆恨みで相手の一族を無関係な女子供者まで虐殺するようなヤツには、追放されるだけの理由があるとオレは思っている」


「どんな理由なのだ? ここだけの話しでいいから後学のために聞かせてもらいたいのだ、他言はしないから」

「性格に問題ありだから、追放されたんだとオレは思う。そのくせ、本人が思っているほどジョブのスキルは高くない……報復を怖れて大虐殺を行うようなヤツだからな、器が小さい小心者だろう」

「なるほど、なるほど」


 掘った穴の底に両端を斜めに切った竹を、何本も突き刺しながら、忍者が言った。

「さらに厄介なオプションまで、依頼してきやがった」

「どんなオプションなのだ?」

「ターゲットと一緒にいる、息子のナイト・サタデーってヤツを暗殺に巻き込まないように守れってさ……殺し屋をなんだと思っているんだ!」


 何か言いたげなの、ナイトに向かって、サンデーは人差し指を唇に立てて制して、おしゃべりな忍者へ質問を続ける。

「もしも、その息子が落とし穴のトラップに落ちそうになったら……どうするのだ?」

「その時は、〝身代わり〟になって守る……さてと、斜めに切った竹にしびれ毒を塗ってと……あとは落とし穴を隠せば完成だ、おっと一般人が落ちないように暗殺トラップありの看板を立てないとな」


 隣の殺し屋さんの忍者が、穴から出ようとサンデーの方を向いて、片足を落とし穴のフチにかける。

「グチっぽい話しを聞いてくれて、ありがとうな……あんた、名前は?」

「ボクは、現世界では奄美 日曜。異世界ではシュークリーム・サンデーと名乗っているのだ」

「えっ、うわあぁぁ」

 足を滑らせた忍者が、仰向けで転んで穴の中で串刺しになった。

 ピクッピクッと穴の底で、白目を剥いて蠢いている忍者を見てサンデーが言った。

「さすが、忍者……生命力がGのように強いのだ。問題解決のいいヒントをもらったのだ」


  ◇◇◇◇◇◇


 次の日──サンデーとナイトと頭にマンドラゴラを生やしたダジィ、それと一つ目娘と娘の恋人の四人と一物は、現世界人が出てきたという洞窟の前にやって来た。

 巨人が口をすぼめたような洞窟を見てサンデーが言った。

「まるで、肛門のような洞窟の口なのだ……では、はじめるのだ」


 最初にサンデーは、育ったマンドラゴラを、泥人形の頭から引き抜く。

 ダジィが悲鳴をあげる。

「ぎゃあぁぁぁ! ダジィ!」

「思った通り、マンドラゴラの代わりに発した悲鳴では死の影響は出ないのだ……一つ目娘の恋人、名前を教えるのだ」


 サンデーは聞いた名前を土鈴 ダジィの胸に彫り込む。

「さあ、洞窟に入って進んでいくのだ……身替代わり泥人形ダジィ、そして途中でUターンしてもどってくるのだ」

「ダジィ!」


 ダジィはズンズンと洞窟に入って行った。

 いくら待ってもダジィがもどってこないので、サンデーがナイトに言った。

「洞窟に入って、ダジィがどうなったのか見てくるのだ」

「イヤですよ、儂だってウ●コになっちゃうかも知れないじゃないですか……サンデーさんが見てきたらいいじゃないですか」


「ボクの父親は子供の時に、かくれんぼをしていて変な穴を通って、コチの世界に迷い込んだ現世界人なのだ……クラスごと異世界転移してきた、底辺カーストの父親を持つ、ナイトの方がウ●コになる確率は低いのだ」

「そうは言っても」


「これを見たら、喜んで洞窟に入ってくれるかなのだ……ほれ」

 サンデーがティーシャツを少しめくり上げて、下乳の日焼け境界線をナイトに見せた。

 途端に洞窟に向かって走り出すナイト・サタデー。

「喜んで見てきまーす」


 息をきらせて洞窟からすぐに、もどってきたナイトが言った。

「はぁはぁはぁ……ダジィ、ウ●コになって倒れていました」

「思った通り、洞窟ルートは胸に名前を彫ったダジィを現世界人の本人だと勘違いして、ウ●コに変えてしまったのだ。これで一つ目娘の恋人は同じ異世界の動物園に行けるはずなのだ……たぶん」


 サンデーは、火祭 ネコマを呼び出す。

 人力車を引くフンドシ姿の俥屋(くるまや)格好で現れたネコマにサンデーが言った。

「この二人を別異世界の動物園に連れて行って欲しいのだ、男の方はルート通過の現世界人なのだ」

 現世界人に嫌そうな顔をするネコマ。

「おいおい、大丈夫なのか? 人力車がク●まみれになるのはごめんだぜ」


「ちゃんと対策を打ったから大丈夫のはずなのだ……たぶん」

「サンデーがそう言うなら信じるぜ」

 人力車の座席に汚れ防止のシートを敷いて、ネコマが言った。

「人力車の座席に並んで座りな、動物園に連れて行ってやるぜ」


 一つ目娘と、その恋人を乗せた人力車は、別異世界へ繋がるトンネルへと入って行った。

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