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罪廻る箱庭  作者: 熾篠ルナ
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第一話

 ここ最近この町では多くの人が殺されているらしい。どれも無残な姿だと。怖いなとは思ったが、そんな話は軽く聞き流していた。何せ、今日はお祭りの日なのだ。家族と楽しく遊ぶ日にそんな暗い話は忘れてしまった。


 そんな暑い祭りの夜、のどが渇いて水を飲みに起きて廊下に出たら家に家族ではない誰かがいた。そいつは隣の部屋に入った。私は怖くなって静かに自室へと逃げるように戻った。


 私と父は同じ部屋だ。隣は母と三つ年下の妹、葵が一緒に寝ている。二つの部屋と言っても襖で区切られているだけだ。


 蒸し暑い中血の匂いが漂ってきたと同時に泣き声と叫び声がした。


 隣の部屋が見える襖から様子を見た。見てしまった。


 頭に生えた角に尖った尻尾。尻尾を使って妹をかばった母ごと斬りつけている。もう二人とも息をしていない。


 叫びそうになった。叫び声で起きた父に止められなければ叫んでいた。父も見てしまったのだろう。私の口を押えている手が震えていた。


「他にも人間はいるかー?」


 ばれたらまずい。そう肌で感じ二人で押し入れに静かに隠れた。コツコツと足音が色んな所を探している。そう聞いていたら目の前で音が止まった。



 押し入れを開けられた。だが、反対側だったためばれなかった。見られなくて安心はしたが心臓の音でばれるのではないかとひやひやした。




 その夜はとても長く感じた。




「チッ、他にいねぇのかよ」


 そう吐き捨て殺人者は家を出て行った。朝日が隙間から漏れていた。


 父と無事を確かめ合った。生き残った。嬉しかったがそうはいかなかった。


 二人とも冷たくなっていた。私の泣き声で近所の人が様子を見に来ていた。


 父は私の様子だけ少し見て近所の人に救助を頼みに行っていた。そうしてかなりの速さで葬式が終わった。私は一週間も泣き続けていた。泣きつかれていた中なぜあの殺人鬼がこの家に来たのか、なぜ家族が殺されたのか、何者なのかずっと考えていた。


 そうして憑りつかれたように殺人鬼について調べるようになった。近所に聞き込みをしたり、図書館で調べたりした。聞き込みでは人ではなく鬼ではないかという話が多かった。図書館で種族について調べまわった。字について学び始めたばかりで探すのに手間取ってしまった。鬼についての情報はあったがあの殺人鬼とは少し違うように感じた。そう思いつつほかのページをめくっていると……。


「見つけた……!」


 殺人鬼と同じ特徴を持った種族がいたのだ。その種族は悪魔というらしい。不定期にいろんなところに現れ人々を殺していく残虐な種族ということが書かれていた。悪魔に関連のある本を片っ端から読み漁った。結果、悪魔を討伐する組織があることを発見した。厳密には人々に害を与える存在を討伐、撃退する組織らしい。これだと思い組織に入るためにはどうすればいいか調べ始めた。


 悪魔について調べるだけで一年もかかってしまった。だが、色んなことを学べた。


 組織に入るにはお父さんに相談するほかなかった。あまりお父さんには心配かけたくはなかったが他に道はなかった。


「お父さん、大事な話があるのだけど……今いい?」

「どうした。最近忙しそうだったがそれについてか?」


 仮面を作っていた手を止めてこちらをお父さんがこちらを見た。


「お父さん。……学校に行きたい」

「どの学校だ?」

「アブソリュートグローリー聖校……」


 父は驚いた顔をした。


「優秀なハンターを輩出しているザイノイア聖教直轄の名門学校じゃないか。それはソフィア……母さんと葵の敵討ちのためか?」


 気づくのが早いなぁ。目を逸らしてしまった。


「……はあ……お前のことだ。止めても無駄だろう?行くのはいいが十歳から入学だろ。行くまで後四年あるぞ。どうするのだ?」

「修行とやれるとこまで勉強する」

「……わかった。だが家事なども並行してやることだ。学校は西方でここからとても遠い。教えてやるから覚えろ」


 その言葉に大きくうなずいた。


 それから家事や勉強、修行を毎日繰り返し試験当日。試験といっても文字の読み書きと面接での意気込みのみである。勉強を続けてきた藍にとっては簡単すぎた。面接も難なく通過した。


 学校には寮があるのでそちらで暮らすことになるため、一週間ほど前から引っ越し作業となる。ここから七年ほど父とはほとんど会えなくなる。長期休みは冬季のみなのでそのあたりで帰省できるだろう。


 いざ、出発しようと思ってもやっぱり少し寂しい。知っている人が一人もいないのだ。唯一の家族である父とは一年に一度ほどしか会えない。でも、優秀なハンターになってあの悪魔に復習をするために泣き言は辞めよう。終わったら胸を張って父にただいまと言いたいな。


「藍」

「……お父さん。行ってきます」

「……修行など頑張っていたが学校はとても大変な場所だ。行くならば挫けるなよ」

「はい!」

「それと、これを」


 父に渡された見たことない仮面だ。


「え、これ。仮面?」

「お守りとして加護もついている。気を付けて行ってこい」

「……うん……行ってきます!」



 家の周りでは見ることのないレンガを積み上げた建物群の中に一際大きい建物が見えた。学校だ。入るのは横にある寮だ。二人部屋らしいのだが同部屋は誰だろう。


 部屋へと案内され、扉を開けると白茶色のふわふわした髪の人がいた。

「あ!同部屋の人?よろしくね!!」


 いきなり圧の強い子である。


「はい。同部屋の如月藍といいます。よろしくお願いします。えーと……」

「あ!ごめんね!私はシャーロット・グレイっていうのだ。シャーロットって呼んで!改めてよろしくね!後、同い年だしため口でいいよ!」


 そう会話しながら荷物を運びこんでいく。


「あまり見かけないタイプの荷物だね。この辺の子じゃないの?」

「蓬莱って国だよ。この辺の人でも寮って入るの?」

「東の方の国!旅行行ってみたいと思っていた場所だ~!えっとね、この辺というか、この国周辺国というかそんな感じかな?家から遠い子は多いかな。私もちょっと遠いし」

「そうなのだ。そうだ、シャーロットはどこの国なの?」

「フォグリアっていう国だよ!ここから西の方にあるの」

「……地図で見たことはある。農業が盛んな自然豊かな国…だっけ?」

「まあ、間違いではないかな?自然しかない国だよ~それに比べてこの国、エンルリッドは色々あってみるだけでも楽しいのだよ!」

「そうなの?今度フォグリアにも行ってみたいな」

「あまり楽しくないと思うけどね……あはは……」


 そう笑いながら部屋を片付けていった。私が来たのが遅かったのかシャーロットの片付けが早いのか、シャーロットは「お出かけしてくる!」と外に行ってしまった。とても元気がもらえるような子だったな。ふと笑みがこぼれてしまった。


(あの時からあんまり笑わなかったから久しぶりに笑ったな)


 そうして慌ただしい1週間が過ぎ去った。



 アブソリュートグローリー聖校入学式。学校の大聖堂で行われる。式は特に異常無しで進み、聖女様のお話の時間になった。ザイノイア聖教関連の名門学校なのもあり、聖女様が直々に入学式に来てくださるのだ。ドキドキしてまだかまだかと期待した。


 白緑色の髪をなびかせて透き通る宝石のような浅緑色の目をしていた。あまりにも美しかった。皆見とれてしまっているのが分かった。


「皆さんご入学おめでとうございます」


 最初の一言。一言だけでもとても心地の良い声なのが分かった。ずっと聞いていたい、そう思えるほどに。皆、聖女の話に耳を傾ける。


「新入生の皆さんはこの学校の校訓を覚えられましたか?覚えられていない場合は今から覚えておいてください。『不撓不屈』です。どんな困難や苦労があっても挫けずその壁を砕く心意気を持つということです。諦めなければどこかに活路が見出せることができます。意識して学校生活を過ごしてくださいね。

次に音楽祭についてです。あまり宗教や学校に関係なさそうな行事ですが、神様に捧げる行事になります。こちらの行事もハンターとして役に立つことでしょう。

そして最後に本校に入学した目的であるでしょうハンターのお仕事についてです。この仕事はとても危険なものです。安全という言葉が一番似合わないでしょう。ですが、とても必要な仕事です。皆さんがこの学び舎で必要なことを学び、自分を守り、一般市民を守れるほど強いハンターになれることを祈ります。

ありがとうございました」


 短く感じた聖女様のお話は終了した。難しい話ではあったがとても大事なことだったことは分かった。改めて意味を理解するために後でノートにまとめておこう。


 入学式が終わった後は学校の案内だ。校舎、大聖堂、寮、食堂、練習場など色々な場所の説明をされた。勉強を早くしたくてたまらない。そう思い聞きながら歩いた。


「よし、施設の説明はこんなものだろう。教室に移動だ。」


 そして、授業について説明が始まった。


「本校で学ぶ内容は知っているとは思うが改めて説明するぞ。

国や宗教、種族についてなどの社会について、体術・剣術などの実技、魔法学、音楽、実技応用などだ。実技科目より座学の方が多いから頑張れよ~」


 こうして、長く短い学校生活が始まった。


お読みいただきありがとうございます。不定期になると思いますが完結までしっかり書き上げられるように頑張ります。

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