まるで映画みたいに
第3回小説家になろうラジオ大賞に応募した作品です。テーマは「映画」。
私達の事を話すと「映画みたい」ってよく言われる。
そうかな。ごくありふれた話だよ。
彼も私も、特別イケメンや美人って訳じゃない。彼の事は世界一好きだけど。
きっかけはささいなこと。
同じ幼稚園で隣になった。
「あそう はるおみ」と「いがわ まき」だからただの名前順。
でも隣だとペアで動く事もあり、すぐに仲良くなった。
陽臣は男らしい所もあるけどとても優しいし、自然な流れだ。
「マキちゃん、しょうらいぼくとけっこんして!」
「うん、ハルくんとけっこんする!」
幼稚園の年中にはそんな会話をしていたと思う。
親同士も仲良くなり家族ぐるみの付き合いだった。
同じ小学校に通い、一年の時には「ハル君は私のカレシだから!」って他の女子にアピールしたっけ。今思い返すと必死だな私、ってちょっと笑える。
誰にも彼を取られたくなかったんだ。
それが、ある時から周りが私達をひやかすようになった。
同じ幼稚園の子が私達が結婚の約束をしていたとバラし、事あるごとに夫婦だとからかわれた。
私の事をふざけて彼の名字で呼ぶのが面白かったらしい。全然面白くないのに。
そんな感じで中学に上がった時にはもう陽臣とは殆ど話せなくなっていた。
……本当は、私はずっと彼が好きだったけど。
でも私より陽臣の方が辛かったと思う。
私に話しかける時も必要最低限で、硬い表情と声変わりした低い「井川さん」呼び。
もう無邪気な笑顔で「マキちゃん」と呼ぶハル君はどこにも居ないんだ、と思って独りでこっそり泣いた事もあった。
そして忘れられない中学2年の2月。
私は部活の先輩に告白された。告白って言うか「バレンタインにチョコくれ」って言われただけ。
噂はあっという間に拡がった。陽臣の耳にも入ったんだろう。
その日の夕方、陽臣が家に来た。
暫く交流が無かったからお互いのメアドも知らなかったし、他に方法が無かったって。
「おばさん、俺、婿養子になっていい?」
思い詰めた表情の陽臣がいきなりそんな事を言い出して、私も母もビックリ仰天した。
「――――あれ、まだ書いてないの?」
「あ、ごめん。昔を思い出しちゃって」
彼に言われ、慌てて婚姻届の名前欄を記入する。
井川 麻生。植物の麻に生きるで麻生。
その左横には私の名前と同じ漢字で麻生 と読ませる陽臣の名前が記入済み。
「ねえ、本当に井川 陽臣になるの?」
「しつこい。マキと結婚するなら一択だろ。出しに行くぞ」
大人になった彼は男らしくそう言って記入済みの紙を掴んだ。
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