ぱんつ
ひまつぶし
シーンは切り替わり、ここ"ミクロア"の中心に大きく存在する王国「ミラリオ」の王宮内で、ある騒動が起こっていた。
なんでも、もうすぐ王位を継承する予定の王家の長男が、
「運命を感じる!」と、外へ行きたいと言ってやまないのだ。
「王子様、王国の外は森に囲まれており、危険なモンスターたちがうろついているからいけませんと…以前もお話したではないですか」
「大丈夫だ、俺は強い」
「いえそういう問題ではなく…」
ここ最近はこんなやりとりしかしていないそうで、目を離すと王宮脱出の機会をうかがい実行するといった感じで、王家の人間のほとんどは疲れ切ってしまっていた。
「運命を感じたというだけでそうわんぱくにならないでくださいませぬか」
「運命と言ったら運命なのだ」
「…」
ーーーーー
王子が王宮脱出計画を企画してから1週間ほどが経ち、王子はやっとこ森へとこっそり潜り込んだ。
大切にされ育った王子に、森のあふれる酸素は新鮮に刺さった。
小鳥型のモンスターのさえずりや、近くを流れる川のせせらぎなどが美しい演奏を奏でるように響き渡る中で、王子は森の出口を求め彷徨っていた。
「やはり厳しいか…顔も名前も居所もわからないのに出てくるのは間違いだったかもしれん」
森に入ってからもう何時間経つかわからないが、少しずつ確実に体内からは水分が奪われ、空腹も顔を見せ始める。
あまり長く探索せず、素直に引き返すか…
森のモンスターを食料とするか…
しかしこの一帯にはなぜか中サイズのモンスターがいない。
小型のモンスターをいくら捕まえても腹の足しにはならないし、大型のモンスターは流石に敵対するのが不安だ。
それにそもそも大型のモンスターもいないのだ。
「腹が減った」
日が暮れ始めて王子は弱音を吐いた。
歩けど歩けど森の外には辿り着かず、手頃なサイズのモンスターも居ない。
1度川の流れる方に歩いていき、川を見つけたが魚型のモンスターも1匹たりとも居なかった。
水分補給場所を失う訳にも行かないので、川沿いに歩を進めるが、星が見え焚き火をし眠りにつくまで、とうとう森の出口は見つけられなかった。
ーーーーー
「独歩、明後日は王国の騎士隊試験に備え、魔法学校に入校する試験の日だ。
途中に深い森があるけれど、お前なら大丈夫だ。
これを持っていくといい」
草屋さんはそういうと、私に"藁のようなものに包まれた物体"を渡した。
「ここで代々作っているモンスター避けのアイテムだ。きっと役に立つ」
「くせぇ」
「食料にもなる。いざとなったら食べるといい」
「食いたくないねぇ…」
この家を出ることに多少心残りはあったが、草原の外も見てみたい。
紋章ができたあの日と同じように、私はワクワクしていた。
それでもやはり、7年の歳月を共にした家だ。
去るのはなにか込み上げるものを感じた。
王国からも通信魔法でいつでも話せるみたいだけど…
「……お世話になりました、元気でね、草屋さん」
「あぁ、独歩も元気でな」
草屋さんは、私が何度振り返っても小さく手を振ってくれていた。
ーーーーー
「タニアスくん、なかなかいい人選するね。
まさかあの子を王子に転生させるなんて」
「いやー今回は自信ありますよ、先輩」
「中の人を知ったらきっと驚くだろうね…ぐひひ」
「気色悪いのでその笑い方やめてくださいよ。
先輩、転生前と全く変わってないじゃないですか」
続くかもしれないし続かないかもしれない