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月光

作者: ユー


 赤く染まった空があと少しで一日の終わることを告げる


 私は廊下を歩いている。多くの生徒が下校し、昼間の賑やかな雰囲気とは一転、そこには静寂とした雰囲気が流れていた。私が担任を持つクラスの教室の前まで来たので、立ち止まって目をやると、赤色の陽射しが窓から差し込む教室にはどこか深刻な表情をした生徒一人を残していた。


「どうした?なにか悩み事?」


 気づいたら私はその生徒に尋ねていた。急に話しかけたためか、その生徒は体を一瞬、ビクッとさせてから、辺りを見回した。それから私を見て、少し悩んだ表情をした後に口を開いた。


「ちょっと、これからのことがわからなくて・・・。」


「これからのこと?進路について?」


 そう尋ねると、その生徒は首を振る。それからその生徒はゆっくりと口を開いた


「生きているのがただ辛いんです。これからどうやって生きていけばいいのかわからなくて辛いんです。」


 と予想外の答えにたじろいでしまい、


「いじめられているの?」


 と尋ねてしまい、少し後になって後悔した。ただ、その生徒はその問いにも首を振った。その様子を見て、少し安堵している自分にすこし腹が立った。


「じゃあ、家庭的なこと?」

 

 その問いにも首を振る。じゃあその生徒は一体なにに悩んでいるのか。。きっとそんな思いが顔に出ていたんだろう。私の様子をうかがっていた生徒が口を開き、ゆっくりと語りだした。


「別に今の環境に不満があるわけではないんです。ただ、これから何をして生きていけばいいのかわからないんです。自分にはやりたいことが何もないんです。自分はこれからどうしたらいいんですか?先生はどうして教師になったんですか?」


 その問いは私の痛いところをついた。正直、私は先生になりたくてなったわけではない、この生徒同じようにやりたいことがなかったから流れるまま流されたらなっていたからである。きっとこの問いに対しての本当の正解は「私の夢が教師だったから」であるだろう。それでも私は、、、


「わからない。。。」


「ですよね。変なこと言って、すみません。忘れてください。」


 そういうとその生徒はハハッと笑顔を作って、こちらから目線を外して、足早に帰る身支度をし始めた。


「私も君と同じだよ。。」


 と私は小声で話すと。生徒が身支度していた手を止めて、こちらに再び目線を戻した。その表情は先ほどの笑顔ではない、かといって深刻な表情でもない。驚きが混じったそんな表情をしていた。それから私はつづけた。


「私もこれからどうすればいいかなんてわからない。それは大人になってからも変わらないよ。」


「それならやっぱり、生きてる意味なんか、、、」


「生きている意味ね、、、」


 生徒の表情が怒気を含んでいた。きっと生徒が求めている答えとは違ったんだろう。でもね、、、


「私はあなたではないし、あなたも私ではない。だからあなたにとっての生きている意味は私にはわからない。けれども、あなたは生きている意味を、理由を、探して、もがいてる。きっと、それは誰よりもあなたが誰かのために生きようとしてるからじゃないの。」


 生徒の表情がまた驚きに変わっていた。きっとそれは私の頬を一筋の涙がつたっていたからであろう。それからその生徒は再び身支度をし始め、ペコリとして足早に教室から出ていった。すっかりと辺りは暗くなり。月の光が差し込む教室に私は一人であった。窓から空を見上げるときれいな満月がそこにあった。私は月に手をのばして、


「あなたも私と一緒ね。」


とポツリとつぶやいた。




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