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第75話 新兵器開発とドイツで太公望

 遣欧艦隊から戦訓として、『鶚を強化して航空戦艦で他の戦闘機や爆撃機と同程度の能力を持った機体』が欲しいとの要望が送られてきた。本来なら魁がこの用途に使えればよいのだろうが、残念なことに魁がいくら軽快でも航空戦艦で運用するには無理がある……それに魁は爆装できないので別に爆撃機も必要になる。通常空母より搭載機数が少ない航空戦艦では、そんな無駄なことは出来ない。


 ということで鶚を強化した戦闘爆撃機を開発することになった。鶚は、もともと機首ではなく機体中央部にプロペラがあることで使い勝手がいいと評価されていたので、全体のレイアウトは同じようにすることで進められた……ただ前々から機体中央に回転物があるのは取り扱いに難があるという意見があり、いっそのことジェット化してしまえば、ということになった。それにジェット化で大馬力が手に入るのはマルチロール機にはなかなか都合がいい……こうして機体両側にジェットエンジンを持つ形状にすることになった。


 本来なら震星のようにジェットエンジン一基でもよかったのだが、ジェット噴流が尾翼にぶつからないようにするということで小型のターボジェットエンジンを新規開発することになり、さらにコンセプト設計段階で『エンジンを重量バランスポイントに据えて噴射方向を変えられれば垂直離着陸を行えるのではないだろうか』という案が出た。つまりVTOL化である(というか、もうオスプレイだろう。これ)……新機軸を詰め込み過ぎという気もしたが、何か解決すべき問題があるわけではなく戦訓から新しいものを作るという話だったので、開発する側もいろいろなアイデアを実現させたいと考えたのは否めない。


 当然、こんな難しい案件はすぐに完成させることなど無理で、モックによる機体の垂直飛行テストなど実験を繰り返しながら開発が始められた。


◇     ◇     ◇     ◇     ◇


 それとは別に、ドイツ軍で開発する新型戦車について意見を伺いたいという話が来た。Ⅳ号戦車を日本で生産する時、長砲身砲を搭載することに拘ったことに今更ながら興味を持たれたらしい……まあ薄々、あとで面倒なことになる予感はしていたけど。なので『同盟国間で新規兵器技術についての意見交換と協力体制の構築ができるなら』という条件をつけて了解することにした。ついでにジェットエンジンのフランク・ホイットル氏やロケット開発のフォン・ブラウン博士とか能力の高い人と顔繫ぎができそうだしね……


 さて、行くのは決定としてどうやって行くか……当然、船で追いかけるのは時間が掛かり過ぎるのでなしとして、まだ長距離民間航空路線なんてないから軍用機で行くしかない。で、ついでというかこの機会に、シーレーン防衛用の哨戒機飛行路を試してみるというのを兼ねて、実際に運用する二式大艇で飛んでみることになった。まず東京、台北そしてシンガポールとコロンボまでは決定だ。日本や同盟国のイギリスの重要拠点だし距離もちょうどよい……その先が難しいのだが、アラビア半島南岸のアデンから地中海側のアレキサンドリアを通ってマルタ。次はシーレーンを辿るようにジブラルタル、プリマス、ロンドンか……最後は航路から離れてハンブルグ、ベルリンという合計11か所を経由して6日間という航路になった。シーレーンを辿らなければ半分くらいで行けるのだが仕方ない。


 実際に飛んでみるとなかなか大変だったが、それはまた別の機会ということで以後はベルリンに着いた後の話。


◇     ◇     ◇     ◇     ◇


「ようこそベルリンへ。種子島少将は以前フランス駐在武官だったことがあると伺いました……その頃、お会いしておけなかったのが残念ですな」

以前、陸軍のドイツ駐在武官であった大島浩少将が現在では駐ドイツ大使となっていた。軍人から外交官へ転身したというより、初志貫徹してドイツに自分のすべてを賭けているという感じが若干恐ろしい。


「海軍と陸軍ですから交流はありませんでしたね。海軍駐在武官の小島中佐のところには、よく来ていたのですが……まあ、今後は陸軍とも力を合わせていければと思います」

大島大使とは、あまり仲の良くなかった小島中佐のことを出して牽制しながら、でも陸軍とは協力していきたいというのは伝える……もう彼は陸軍の人間ではないけど。


「そうですな。今回の日独英三国同盟により、ますます交流の必要性が高まっていますからな……現在は海軍からだけ遣欧部隊が来ていますが、できれば陸軍からも兵を出してもらえるよう、本国に口添えを願いしたいものです」

話し方は柔和だが、本国に伝えるよう利用しようとしてくる……オレの苦手なタイプだ。他国とやり合う外交官には必要な資質かもしれないが。


「種子島殿は海軍のみならず陸軍の兵器についても造詣が深いと伺っています。ヒトラー総統から直々に意見を伺いたいと招請されたとか。いやはや大したものですなぁ」

純粋に褒めているのか何か別の意味があるのか……大島大使に言質を取られないように注意しながら、

「いや兵器開発の分野は、海だ陸だという区別はあまりないので……たまたま持っていた知識で意見を述べたことが総統の目に止まったようです」

と謙虚に答えておく。


「いやいや、ご謙遜を……来週からは早速ドイツ陸軍省での会議が入っているようですので、大使館の歓迎パーティやドイツ政府とのレセプションなど、予定が詰まってしまって申し訳ありませんが、どうぞよろしくお願いします」

大使がねぎらいの言葉をかけつつ、紹介してきた人にオレは驚かされた。


「さて、このご婦人は御存じですかな? 日本から遠く欧州に来られて自動車ビジネスを立ち上げた女傑……いや麗しくも優秀な女性、霧島 梓嬢です」

そう言って、大島大使はテンちゃんをオレに紹介してくれた。大使館主催のパーティーに大使から紹介してもらえるほどの立場を築いているのは素晴らしい。


「ええ。以前、駐在していた時に何度かお会いしたことがあります……当時は、それほど事業が大きくなる前でしたが、今は大活躍のご様子。同じ日本人として頼もしい限りです」

オレの他人行儀な礼賛に、

「あら、覚えていていただいて嬉しいですわ……以前はいろいろ助けていただきましたから私からも精いっぱい恩返しをさせて頂きたいと思いますから何でもおっしゃってください」

そう言って微笑みを返してくる……普段のテンちゃんからは想像できないほど社交的な感じだ。ルーシーさんと会う時もこうしてくれればいいのに……いや、ルーシーさんは本心を読めるから、そんなふうにしてもダメか。


◇     ◇     ◇     ◇     ◇


 そして翌日。ドイツ政府とのレセプションで、いよいよ総統本人と顔合わせをすることになった。


「ようこそ、我がドイツへ」

鷹揚だが周囲に多くのドイツ高官を連れて、強いオーラを感じさせるヒトラー総統のお出ましだ。


「総統閣下、はじめてお目にかかります。日本海軍の種子島時休と申します。この度は閣下直々に私をお招きいただいたと聞いています。ありがとうございます」

まずは差し障りのない感謝の言葉を述べたつもりだったが、そう簡単には済まさせてくれなかった。


「ほう、海軍将校……貴官は日本におけるドイツ戦車の生産で貴重な助言をしたと聞いている……差し支えなければ何故そのようなことができたのかを聞かせて欲しいものだ」

早速、疑問を質されていしまった……さて、どう答えるか。


「私は技術関係の士官ですので、あまりどちら向きの技術と拘わる考えは持っていません……たまたま今回は、戦車の生産について意見を求められましたので」

オレは山本長官に鍛えられた? 言い訳スキルで答えを捻り出す。


「ふむ。有能な人物は何についても有用な意見が出せるということか。しかし今回の意見は我がドイツ陸軍でもなかった見解だ……なぜこのような先見の明が得られたのか教えてもらえるかね?」

総統はオレの答えを受け入れつつも、聞きたかった本題であろうことを問いかけてきた。


「それは以前も貴国の生産責任者に伝えましたが、短砲身砲ではマチルダ型の装甲を破れないと……」

オレは用意しておいた答えを伝えたが、それでは納得してくれなかったようだ。

「はて? 日本は同盟国になった国の戦車にそこまで危機意識を持つものかね?」

……さすが戦車については、後世でも評判の高いヒトラー総統だ。なかなかしつこい。


「……技術の進歩には同時性というものが存在します。つまりイギリスの新型戦車で採用された事柄は遅かれ早かれ、他国でも採用されるものです。今回のように」

最初に言ったことの堂々巡りのような答えだが……頭のよさそうな答え方だが、理屈が嫌いなエライ人とかは気分を害してしまうので注意が必要なやりとりだ。ヒトラー総統は大丈夫だろうか……

「……なかなか興味深いな。君とはいろいろと話がしたいものだ」


 これは、上手くいったのか? 単に疑いが深まっただけかもしれない……ちょっと予防線を張っておくため、興味を惹く話もしておくべきかな。

「……私は日本から新兵器の開発についてドイツおよびイギリスと協力関係を築くために今回、訪問しました。私の専門であるジェット戦闘機や貴国のロケット技術などの開発協力と情報共有を行えたら、うれしく思っております」


「ジェット戦闘機とロケット技術か……日本とは良い関係を築きたいものだ。よろしく頼むぞ」

……何とかうまくいったかな。オレは少し肩の荷を下ろしながら、本番はまだまだこれからだぞ、と気を引き締めなおした。



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― 新着の感想 ―
[一言] ヒットラーに食い込むためパンツアーファウストの構想を 上奏すれば?歩兵でもT-34を倒せる武器は喜ぶよ?これでフォンノイマンと繋ぎを作れば?総統と仲良くなれるよヒットラーは霊媒体質みたいなの…
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