第68話 Ⅳ号戦車ライセンス版、特四式中戦車
三国同盟は、まだ関係各部との調整を水面下で行っている最中だが、生産技術の供与とバーターで戦車を供給する話は先行して始まっている……少しでも早く始めて台数を増やしたいというドイツ側の思惑があるからだ。
九七式中戦車を作った原 乙未生大佐が中国大陸から帰還し、少将として陸軍技術本部第5部長となり、この計画の中心人物となった。
生産するⅣ号戦車は、ドイツ陸軍のワークホースと呼ばれるほど、よく使われた車体で扱いやすい設計なのだが、この当時はドイツ軍の主力はⅢ号戦車で、Ⅳ号戦車は支援戦車の扱いだ。生産体制もⅢ号はドイツ国内の生産企業を再編し、八社の企業が連合組織として統括され生産したのに対してⅣ号は、ほぼクルップ社のみだ。
「何とかなりませんかね? 日本としては24口径のKwK37ではなく43口径のKwK40を搭載したものとしたいのです」
来日しているクルップ社の責任者に直談判して、現在主流のE型ではなくSd.Kfz.161/1を生産できるよう交渉する。
「しかし、あれはまだ試作段階で生産技術も確立されていませんし……」
渋るクルップの責任者に、またもや未来情報をチラつかせて圧力を加える(本当に、こっちに来てからこればっかりだな、オレ)
「情報によると、イギリスで開発しているマチルダ戦車は24口径の75mm砲では撃破できないと聞いています。敵戦車を撃破できない対戦車戦兵器など意味がないと思いませんか?」
本当はT34の話をしたいのだが、この世界ではまだT34ショックも起こっていない。
「Ⅳ号戦車一両のためには40tもの鉄鋼材、240kgのアルミ、60kgの鉛と亜鉛、150gのマグネシウム、100kgのゴムを必要とするのです。これだけの資源を投入した兵器が不十分な働きしかできないと、後で総統が知ったらどんな事態になるか……この日本での生産協力には総統閣下も大きな関心を持っていると聞いてきますが?」
「うーぅ……、そのせいで生産が遅れても私は、責任持ちませんよ」
最後は、そういいながらもドイツ本国から試作生産ラインの情報を送ってもらえることになり、本国の生産モデルより随分前倒ししたものを生産できることになった……将来きっと役に立つので許してもらいたい(前にも言った気がするな、これ)
「こりゃ強そうだ」
出来上がった車両を日本の戦車関係者に見せた感想は、皆そう言った。いや全長はチハとほぼ一緒なのだが、幅があって車高が低い、いわゆる腰が落ちている感じ。さらに43口径の長砲身砲に変えたこともあって砲身がズドンと前に飛び出している。まるで小太刀を持った小兵と長槍を持った鬼武者だ。
「九七式の後継車を、いろいろ考えていたんですが、ちょっとこれには勝てそうにないですね……」
原少将の言っているのは一式中戦車、あるいはその後継となる三式中戦車のことか。チヘは前面装甲は50mmで主砲は47mmだ。チヌなら主砲は75mmになるが……ちなみに某歴史小説家が装甲にヤスリを当てたところ削れてしまってビビったと書いている戦車のことだ。まあ、いずれにしてもこのクラスではT34に勝てない……Ⅳ号G型の80mm装甲/48口径75mm砲でも万全というわけではないが。
「本当は次のⅤ号戦車をやりたいんですがね……」
オレが、ため息交じりに漏らしたのを原少将は聞き逃さなかった。
「パンター? 聞いたことがない戦車ですね」
「……いや、あと少ししたら出てきます。深くは聞かないでください」
ごまかせたのかどうか分からないが、原少将はさらに追求することは止めてくれた。変なやつだとは確実に思われたと思うが。
Ⅳ号戦車のライセンス版車両の国内で運用される名称は、ドイツやイギリスと合わせて特四式中戦車と呼ばれることになった(イギリスでの名称はMk.Ⅳスペシャルだ)。生産した全車両をドイツに送るわけではなく、日本にも取り置いてソビエト戦車相手の主力とする予定だしね。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
兎にも角にも、日本でのⅣ号戦車の生産が始まり、ヨーロッパに向かう輸送船に積み込まれて遠路遥々、ドイツまで輸送が始まった。生産台数は、まだまだ少ないけど徐々に増やして、ドイツ、日本、イギリスの生産台数でソビエト戦車の生産台数に対抗出来ればいいなぁと皮算用をする。しかしその後、T34の生産数の資料を見て愕然とした。1943年の月平均の生産量が1300両?! 信じられん数だ。これでは、ドイツ、日本、イギリスがいくら頑張っても生産数では太刀打ちできない……ソビエトが量産を始める前に早期決戦をするか、工場を破壊して生産量を増やせないようでもしないと勝てそうにない。
やっぱり鉄機兵か地上攻撃機を作るしかないかなぁ……鉄機兵なら戦車よりは生産性が良い。問題は搭乗者の養成だが、TKT計算機をさらに小型、高性能化して操縦をサポート出来れば……。それと地上攻撃機、スツーカのように急降下爆撃ではなく、A10的なものが作れないか? ソビエトのT34量産が始まる前までに作るのは、かなり時間が足りないが……。




