夜熱
心地いいことばかりを言う人には、
当然、気をつけるべきだ。
意識に、摩擦の無い言葉には、
ほんとの心など、乗らない。
心がなかったわけじゃない。
けれど、そうするしかなくて、
心地いいことばかりを言ってきた。
美しい菓子と指先が、頭に浮かぶ。
夏の光、夏の幻、言葉に怯えた。
日々に丸く、閉じこもった。
孤独の薄ら暑い夜が、やって来た。
明けて豪雨の朝が、来るという。
熟れた熱にうなされたまま、
明日にむけて、明日のために、
何ができるというのだろう。
折れたまま、無理を重ねた。
わかっていることは、
心地いいことばかりを
言わないことだ、やさしく。
聞かないことだ、なるべく。