明るい未来
柔らかな日差しが窓ガラスを貫通し、彼の網膜に入り込んでくる。この柔らかというのは彼にとっては重く、苦しい、地獄炎のようなものだった。
OO市に住む高校生のSはしばらく学校に行かず、一日中家で暮らしているいわゆる登記拒否だった。様々な理由が彼をそうさせたのだが、最近では徐々に学校に行く勇気が芽生えてきており、何度が制服を着て玄関に立つことは出来ていた。しかし親や担任はその事を過剰に褒めたせいで彼は自分はその程度の人間に見られていたんだと思い込み、結局後戻りしつつある現状だった。
ひとりっ子かつ両親は仕事をしているので朝はもちろん一人だった。それ故に、毎朝退屈になるのでテレビを見たりゲームをしたりとダラダラとしていた。
ある朝、彼はいつものようにぼーっとテレビを見ていると、あるニュースが目に映り込んできた。
それはある一人の登校拒否についてのニュースだった。内容はその子が学校へ行くと周りの生徒は彼を平然と迎え入れ、まるで不登校なんてなかったかのように振舞ったというものだった。
その行動はその子にとってプラスとなり、今では元気に通っているという、そんな記事だった。
「俺も一回行ってみようかな?」
このニュースを見た彼は今一度そう思った。しかし、想像するのは教室のドアを開けた時に刺さる生徒や担任の目線。自分が来たことによると思われるザワザワする声。担任がそれを注意し、チラチラと自分を見る光景。その光景が嫌すぎて彼は何度も勇気を押し殺してしまった。
でも、やはり学校へは行かなくてはならない。来年は受験ということもあり、成績の心配や何より母から失望もされたくない。
その一心でSは学校へ電話をかけた。
その真意は自分が来てもクラス全体で何事も無かったかのようにして欲しいと担任に頼み込むためだった。無論、教師は了承した。Sはテレビのスイッチを切って制服を着た。思えば去年の春、ウキウキした気持ちでこれを羽織り、通っていた学校だ。そう思えばなんの問題もない。そう、思い込んで彼は靴を履いた。
高校に入学するからと、父がくれたものだ。しっかり踵を入れて大きく深呼吸をした。
そして、
「いってきます。」
しーんとした玄関に向かってそう声に出した。
誰もいない空気の冷めたリビングでは誰かが切り忘れたテレビの音だけが響いていた。
「えー繰り返しお伝えしています通り、ただ今OO市全土には全て覆い尽くすほどの隕石が堕落してきております。まだ避難していない住民の皆さんは急いで避難してください。繰り返しますただ今OO市全土に...。」
ドアを開けると今までになく明るい日差しが目に飛び込んできた。
Sはそれを自分に対する未来と見ると同時に、強い一歩を踏み出した。