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殺し屋の組織編②

 レナやジュディと話し合った結果、零次達はすぐにフィーネ国を出る事になった。


 もし仮に追っ手が来ている場合、とっくに国の中に入っていると考えて居るからである。姿が見られていない状況で逃げれば、逃げ切れる可能性が出てくる。


 それに、仮に戦闘になったとしても街の外ならある程度被害が抑えられる。零次達は荷物をまとめると、速攻で国を出る手続きを済ませた。


「よ、よかったんですか。私なんかの為に国を出てしまって……」


「ええ。元々長居するつもりもなかったので」


 おどおどするマダラ―に、零次は微笑みかける。既に必要な道具はジュディが購入している。あの国特有のパンも買えた事だし、出発しても何ら問題はないのだ。


「それで、ここからどこに行くんだレイジ?」


「とりあえず、隣のダージャブル国に行こう。あそこは比較的逃げて来た人を受け入れているらしいし、俺達の目的にも近いからね」


 零次達の目的。それは魔族の国に行って、魔族を皆殺しにする事。


 この世界では、魔族の襲撃によって日々数多くの人類が命を落としている。それを食い止める為には、やはり零次のように力を持った者が魔族を皆殺しにするしかないのだ。


 その為にはまず、魔族の国に侵入するしかない。ダージャブル国は、魔族の国に割と近い位置にあるのだ。


 ダージャブル国に入ってマダラ―の安全を確認したら、魔族の国に入る。そこから先は戦うだけだ。レナとジュディの力を借りて、魔族を討ち滅ぼす。


 まだ魔族の国に入っても居ないのに、零次は緊張がこみ上げてくるのを感じた。思わず唾を呑み込む。


「すいません、何から何まですいません……」


「いちいち謝んなってオッサン。それにアタシ達はやりたくてやってんだから気にすんなよ」


 ぺこぺこと頭を下げるマダラーの肩を、ジュディが軽く叩く。そのまま陽気に先頭を歩いていた彼女だが、急に足を止める。


「どうした、ジュディ?」


「…つけられてる」


「え?」


「皆、走るぞ!」


 不意に、ジュディが走りだした。零次は慌てて彼女の後を追いかける。マダラ―、レナがその後に続く。





「おっ、どうやら尾行がバレたみたいだね。どうする?」


 零次達から数十メートル離れた、国の近くにある小さな森。


 その中でうつ伏せに寝そべっていたハートが、楽しそうな声を上げた。


「かなりの距離を開けていたはずだケド。良く気付いたね、あの子」


「勘が鋭いんだろうな。まさか、他の奴に助けを求めるとは。想定外だった」


 ダイヤとクローバーがそれぞれ登っていた木から飛び降り、ハートの両脇に降り立つ。クローバーは手でひさしを作ると、零次達が逃げていった方向を確認した。


「あの方角だと……かなりの距離はあるけど、ダージャブル国ある。入られると厄介じゃない?」


「んー、そうだねえ。あんまりこの偽造通行証使いたくないし。可愛くないんだもん、この柄」


 ハートが通行証をうちわのようにヒラヒラと振る。国へ出入履歴で足が付かないように、彼女たちは常に偽物の通行証を使っているのだ。


「面倒だし、クローバーの力で遠隔からぶっ飛ばせばぁ?」


「簡単に言うな。この距離からだと確実に当てられる自信がない」


「えーっ。使えないなぁ」


「うるさい本名を全世界に公開するぞチビ女」


 そ、それだけはー! と叫ぶハートの声を聞いて、ダイヤは溜め息を吐いた。どうしてこんなにのんびりなのだろう。早くしなければ獲物が逃げてしまうというのに。


「大丈夫と言っただろう? ダイヤ。わたしの追跡能力に死角はない」


 と、そんなダイヤの不安を見透かしたかのように、肩に手が置かれた。ダイヤは不満をぶつける。


「でも、せっかく見つけた獲物を警戒させた上、みすみす見逃す必要がどこにあるって言うの、スペード? メリットがない気がするんだケド」


「だから、大丈夫だって」


 スペードと呼ばれた女はそう言うと、ハートを一方的に口撃していたクローバーに声を掛ける。


「クローバー。君の力で雨を降らせてくれないか? それと、洞窟を一つ作りだしてくれると助かる。サイズは君に任せる」


「了解、ボス」


 クローバーは右手を真っ直ぐに翳す。そして息を大きく吸って吐いた。


 動作はただそれだけ。しかし数秒後には空を黒雲が覆い尽くし、土砂降りと言うには烏滸がましい量の雨が降り注いできた。


「うわっ! これヤバイよ、クローバーやり過ぎやり過ぎ!」


「仕方ないだろう。雨の量は調節できないんだ」


 クローバーはハートの苦情をバッサリ切り捨てると、突き出したままの右手を横に振った。すると、かなり遠くの方で何かがせり上がっていくのがぼんやりと見えた。ゴゴゴゴゴ、と言う地響きがこの森にまで響いてくる。


「出来たよ、ボス」


「よし、それじゃあ行こうか。早くしないと風邪を引きそうだからね」


 




 突如降り注いだ大雨に、零次達は為す術なく蹂躙された。


「うわっ! これはまずい!」


 どうにか濡れないようにしようにも、荷物の中に雨よけになる様な物はない。零次が立ち往生していると、隣でレナが呪文を唱えた。


「【エターナル・バリアー】!」


 瞬間、彼女の頭上に光の障壁が出現した。本来であれば敵の攻撃から身を守る為の盾を、彼女はあえて上に翳す事で傘としたのだ。


「皆、この中に入って!」


 レナの張った障壁はかなりの広さがあり、四人全員が入り切った。その時、ジュディが十時の方向を指さした。


「おい、あんな所に洞窟があるぞ!」


 指さされた方向には、確かに洞窟と思わしき物があった。おかしい、先ほど見た時はなかったはずだ。零次が見落としていたのだろうか。


 しかしそんな事を考えている余裕などない。レナの魔法とて、いつ切れるか分からないのだ。零次達は洞窟に急いだ。


 洞窟に到着すると、レナは障壁を解除した。零次は濡れた服を絞る。水を大量に吸った服は、絞れば絞るだけ水を吐き出していく。


「それにしても、凄い雨だったね。ゲリラ豪雨って奴かな」


「ゲリラ豪雨…? 勇者様の出身国では、そう呼ぶのですか?」


「まあね。それにしても、意外と暖かいねこの洞窟」


 外の気温とは裏腹に、洞窟の中は比較的暖かかった。これなら雨宿りをしている間に濡れた服が渇くかもしれない。


「そうですね。このくらい暖かければ、風邪を引く事もないでしょうね」


「うん、そうだねレナ……」


 そこで零次の言葉が詰まった。理由はレナの胸元にある。


 雨に濡れたせいで彼女の服が透け、濡れた布が肌に張り付いて色々とまずい事になっていたのだ。


「ッ!」


 零次の視線で、レナも異変に気が付く。顔を真っ赤にすると、両手を交差させて胸元を隠す。


「勇者様のエッチ…」


「い、今のは不可抗力だろ!」


「まあまあ、二人とも喧嘩すんなって。それよりせっかくだし、この洞窟を散策してみないか?」


 顔を赤くして言い争う二人に、ジュディが割って入る。


「でも……」


「いいじゃないか、せっかくだし。ちなみにアタシは一人でも行くよ。だって何かワクワクするじゃん、こう言う感じの洞窟って」


 ジュディはそう言うと、元気いっぱいに奥に向かって歩いて行ってしまった。後に残された零次とレナは顔を見合わせる。


「全く…ジュディったら」


「でも、ジュディの言う通り面白そうだよね」


 洞窟の探検など初めてだ。それにどの道雨が止むまで動けないのだ、探検しても問題ない。


「あ、マダラ―さんはどうします? 何ならここで待っていても……」


「いえ、私も行きます。いつ奴らに襲われるとも分からないので、出来れば皆さんと一緒に」


 結局、全員洞窟の探検に向かう事になった。レナの魔法で光を点け、零次達は奥へと進む。


 洞窟は所々曲がりくねったり、道幅が広くなったりはするものの概ね一本道だった。道もかなり歩くやすく、零次達はさほど疲れる事もなく歩いていけた。


 歩いて五分もしない内に、零次達はジュディに追いついた。ジュディが立っていたのはドーム状に広がった空間で、すぐ左には垂直にそそり立つ崖がある。


「ここが、奥地かな?」


「みたいですね」


「お、皆来たんだ」


 零次達に気が付いたジュディは振り向く。


「それにしても、ここは暑いね。入り口とは大違いだ」


「そうですね」


 洞窟内部は、入り口付近に比べてかなり蒸し暑かった。いくら内部だからと言ってここまで違うものだろうか? と疑問に思うくらいには。


「何でこんなに暑いんだろう…」


「それはねえ、この洞窟の地下にマグマが流れてるからだよ!」


 声は頭上から聞こえた。


「誰だ⁉」


 上を向くと、崖の上に一人の少女が座っていた。そんな彼女の後ろには、三人の女が立っている。


「なんだ、君たちは?」


 零次が眉を顰めていると、後ろから「ヒッ!」と言う悲鳴の声が聞こえた。振り向くとマダラ―だった。尻餅を突き、震える右手で彼女たちを指さしている。


「か、彼女達です。私を執拗に追い回していたのは……」


「何だって⁉」


 零次は女達を見る。座っている少女と目が合うと、彼女はヒラヒラと手を振って来た。


「やっほ。殺しに来たよ」


 まるで今から散歩でもするかのような気軽さの少女に、零次は背中に冷たい物を感じた。反射的に腰の聖剣に手が伸びる。


「アハッ、そんなに警戒しなくても大丈夫だよ。すぐに終わるし」


「ッ!」


 零次は無意識の内に聖剣を抜いていた。少女はそんな零次を見てクスリと笑うと、ポケットから一枚の紙を取り出した。後ろの三人もそれに続く。


「一応名乗っておこうかな。せっかく名乗る機会があるんだし」


 瞬間、四人の女は同時に手に持った紙を飛ばした。紙は零次の足元に等間隔で突き刺さる。突き刺さった物を見て、零次は疑問府を浮かべる。


「トランプ?」


 そう、それはトランプのカードだった。数字は全て1で統一してある。


「『マジック』。それが私達のチーム名」


 少女の後ろに居た、背の高い女が言い放つ。


「んでもって、そこの男を殺す刺客の名前。覚えといてねー」


「ひいいいっ!」


 少女が手を振る。マダラ―は顔を強張らせ、悲鳴を上げて数歩後ずさった。逆に零次は数歩前に進み出る。


「何でこの人をッ…」


「ん? だって依頼人クライアントからの指示だし」


 少女はあっけらかんと言い放つ。零次は頭に血が上るのを感じた。


「だからって、人を殺していい訳ーーーー」




「まあ本人も覚悟は出来てるんじゃないかな? ねえ、極悪非道の組織『マダラ盗賊団』のだんちょーさん」









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― 新着の感想 ―
[一言] この前の死神の一件からそんなたってないのに次は犯罪組織のボス守ってたとか零次くん可哀想
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