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11話 王族の秘密合戦

 ローエングリン王子が非公式国家会談を終え、アンジェリークを部屋に送っていった直後。

 会談を見守っていた、三人の近衛兵が動く。一人が扉にカギをかけた。


「陛下、殿下、お疲れ様でございました」

「さすが、人体を知り尽くした、医者伯爵家の変装技術」

「役者の娘であるアンジェリーク王女も、見抜けておらぬか」


 カツラをとったり、付けヒゲを外す、国王と宰相。

 カギをかけたのは、ローエングリン王子の父親だ。医者伯爵家の当主は、近衛兵に変装していた、年下の親戚をねぎらっていた。


 王子が座っていた位置に、レオ少年の父親、国王が陣取る。

 正面には、ライ少年の父、王弟の宰相が腰を下ろした。その隣に医者伯爵が座る。


「弟よ、アンジェリーク王女をどう見る? 弁論に(すぐ)れる、雪の天使を」

「あの王女を北国に渡せば、我が国は戦わずして、負けるようなものですよ、兄上」

「医者伯爵家の見解は?」

「予定通り、ラインハルト王子の側室にした方が良いでしょう。いや、伯爵家に格上げになったので、レオナール王子の正室でも」

「……婚約者候補に挙げたとき、二人とも、『口達者で強気な(きさき)は要らぬ』と全力で拒否した」

「……左様でございましたか」


 天井を見上げて、ぽつりとつぶやく国王。医者伯爵当主も、それ以上は、何も言わなかった。

 微妙な空気を察した宰相が、医者伯爵に声をかける。


「ならば、二人とも、ローエングリンの妃にするか?」

「いいえ。雪の天使を二人も花嫁にすれば、国王にならざるを得なくなります。

政治に興味が無い息子は、国王の器ではありません。医者伯爵家を任せることすら、不安ですから」

「王太子の権利を放棄させるつもりか?」

「いいえ。もしも、レオナール王子とラインハルト王子が、亡くなる可能性を考えれば、放棄させるべきではありません。

オデット王女を婚約者のままにすれば、背後に雪の国がちらつくことになります。

西の公爵への抑止力になるものは、利用できるだけ、利用するべきです」


 王族たちは、用心深い。防音に優れる部屋を、年若い王子の自室に与えていた。

 なおかつ、ここまでの会話内容は、ひそひそ声に加えて、東西南北の異国の言葉を交えた、五か国語で話した。

 国王の目的を知るのは、この三人だけ。


 どの国も、王族は、したたかだ。権力を維持する上で、利用できるものは全て利用する。

 国王は、ローエングリン王子とオデットの見合いを利用して、中立だった分家王族、医者伯爵を国王派に取り込んだ。


 操り人形の国王を作りたい西の公爵と、西の公爵を政治から閉め出したい国王。

 西の公爵家で、四代ぶりに生まれた王女を、王太子の花嫁に押すのは見えていた。


 国王は、裏で策を張り巡らせる。

 雪の国の王家の血を半分持つアンジェリークを、王宮へ召喚したのも、その一つ。


 だが、頭がお花畑だった西の公爵令嬢は浮気して、勝手に自爆してくれた。

 現在は、国王たちが有利になっている。


「……陛下、殿下。そろそろローエングリンが、部屋に帰ってきましょう」


 分家王族、医者伯爵家の当主は、変装をといて、くつろぐ国王兄弟にうながす。

 忘れられていたようだが、ここはローエングリン王子の部屋だ。

 非公式会談を聞くため、わざわざ国王たちは、近衛兵に変装して壁際に立っていた次第。

 アンジェリークをエスコートして、部屋に送っていった王子が戻ってきて、扉が開くのを待っているだろう。


 三人しか居ない部屋の扉のカギを、医者伯爵の当主は外した。

 国王の腹心、本物の近衛兵は、窓の外や廊下で控えている。

 廊下で控えている中に、緊張した面持ちのローエングリン王子が混ざっていた。

 父親を見つけると、緊張した声を投げ掛ける。


「父上! 自分(ぼく)とオデットの正式婚約の件はどうなりました?

国王さまたちは、認めてくださるのですか?

それとも、認めてくださらないのでしょうか? 相談が、ずいぶんと長引いたようなので……」


 最後の方は、不安がにじみ出ていた。

 父親は息子に手招きして、部屋の中に入れる。再び、扉のカギを閉めた。


 医者伯爵の当主は、考える。

 ……なんと答えたものか。政治にうとい、末っ子の後継ぎへ。


「新しい人柱の花嫁を誰にするか、もめた。

一の姫である、アンジェリーク王女が順当だろうが、体が弱い。

血を吐くような王女を北国に送れば、かの地でも、同様なことを起こして倒れるだろう。

そうなれば、雪の国が黙っていない。最悪、健康な雪の天使たちを保護しようと、武力行使してくる可能性も考えられる」

「ならば、レオの言うとおり、末の姫を人柱の花嫁に?」

「……王太子の見解は、末の姫か。さすがに、外れると思う。

末の姫は、まだ六つ。国王の花嫁にするには、幼すぎる。

もう十五才を過ぎ、すぐにでも結婚できる、一の姫を求めるだろう。

もしも、北の王家が分家王族として、南の公爵を再興する意志があるならば、末の姫を花嫁にする可能性はあるが……。

あれほど内乱で荒れた土地を、王家自ら治めるとは思えぬ」

「でも、父上。オデットたちは、荒れた土地で暮らしているんでしょう? 南の公爵の領民だった、難民たちと共に。

南の雪の天使は、雪の国の王族として民を捨てていないから、四年前の暴動が起こったときも、あの男爵領地にとどまっていたんだと思います」


 末っ子の王子は、のんきだ。変に前向きな意見を述べる。

 変に前向きな思考を持つ、現実主義の美少女か、とにかく理想の未来を述べまくる、ロマンチストなレオ少年に感化されたとしか思えない。


「……ローエングリン。もう少し、世の中を広く見よ。

四年前、西の公爵は選択を誤り、北地方の貴族の身分剥奪を主張した。当時のわれらも、愚かで、塩の産地を守るために、北地方の貴族を切り捨て、新たな領主をたてようとする。

その結果、医者伯爵家は、大ケガをしていた北地方の貴族を満足に診ることができず、全員を死なせてしまったのだ。

ローエングリンは、医者伯爵家の汚点を忘れたか?」

「いいえ。あのとき、『父上たちの判断は間違っている』と、自分(ぼく)やラインハルトは主張しました。

けれども、父上は『 もう少し、世の中を広く見よ』と言って、相手にしてくれませんでした。

そのことは、お忘れですか?」


 医者伯爵の当主は、息子から同じ言葉を返され、言葉につまる。

 子供はいつまでも、小さなままでは無いのだ。少しずつでも、ゆっくり成長している。


「……北地方の貴族の切り捨ては、失策だった。それは認める。

軍事同盟を結んでいたから安心して、雪の国の脅威を考えていなかった。

新たな領主をたてようとした我らに先んじて、雪の国が南下して侵攻してきたのだから」

「軍事同盟は、六年前に、北の侯爵へ嫁いでいた北の雪の天使の病死によって、亀裂が入っていたんですよね?」


 ローエングリン王子の兄は、北の侯爵家の娘と婚約していた。

 北の雪の天使を母親に持つ、侯爵令嬢を花嫁にして、雪の国の王家と親戚になり、分家王族の医師伯爵家の権力を上げようと。


「そして、四年前に北地方の貴族が身分を取り上げられ、全員が王都で死んだことによって、完全に瓦解したはず」

「男爵家に嫁いでいた南の雪の天使も、春の国の王都で死んだ。内乱で情報の混乱していた雪の国は、そう(とら)えていた」

「でも、南の雪の天使は……オデットたちは、領地にとどまり、生き残っていました!

そして、春の国の味方をしてくれたから、雪の国と軍事同盟を結び直せています」

「……次は、ないだろうな。選択を誤れば、雪の天使は春の国を見捨てる」

「見捨てる……だからこそ、人柱の花嫁に悩むのですね?」

「そうだ。まさか、ローエングリンが、二の姫を選ぶとは思わなかった。いつものように断ると思っていたからな」

「……うむ。オデット王女を断ったあとは、アンジェリーク王女と見合いさせ、すぐに婚礼を挙げさせるつもりであった。

我が国の貴族としては、伯爵階級で王族の正室になれる資格を持つ、最後の年頃の娘としてな。

理由は、先ほどそなたが述べた通り、塩の採掘権だ。それから、雪の国の王家との軍事同盟を強固にするため」


 父親と国王の言葉を聞いた、ローエングリン王子は、うつむい


 オデットを助けるために、花嫁にしたいと願った。

 自分勝手な願いはオデットを幸せにはできるが、オデットの姉妹を不幸にして、春の国を不幸にしてしまう。

 背徳の恋の結末。ローエングリン王子には、責任がとれない。


「末の姫を人柱の花嫁にか……レオナールの見立ては、あたるやもしれぬな。

あれは父上のように、変な見通しを立てて、実現させるのが得意だからな」


 国王が、ぽつりとつぶやく。

 レオ少年は、祖父の先代国王に似て、仲人王子だったから。


「ラインハルトも協力するから、本当に実現させるかもしれないですね、兄上。

ローエングリンの花嫁がかかっているとなると、二人とも、やる気が違うでしょう」


 宰相は、浮き名を流してばかりの息子に頭を痛めているが、手腕は評価している。

 将来、宰相になってレオ少年を助けると自覚している一人っ子は、政治や外交問題などを勉強しては、父と討論するような一面を持っていた。


 四年前、北地方の貴族の爵位を取り上げることに、ライ少年は一番に反対した。

 植民地になった国の王女を母に持つためか、他の王族とは感性が違うことがある。

 その感性が告げたのだろう。雪の国の脅威を。

 子供の理論を、鼻で笑い飛ばして説き伏せたのは、副宰相の西の公爵当主だった。


 昔、西国との戦争で役に立たなくなった貴族を見捨てて、新たな領主を立てた。そのときは、上手くいったのだ。

 だから、本家王族も、北地方の貴族を切り捨てることを、変に思わなかった。


 切り捨てた結果、雪の国の軍事侵攻を許してしまい、ようやく失策と悟る。

 言い出しっぺの西の公爵家は、国王派の東と南の侯爵家に、散々叩かれ、政治に対する発言権を低下させた。


 国王は、息子に命じた。藍染めの産地である、内陸の男爵領地を目指すように。

 表向きは、二つの塩の採掘権を持つ、貴族の血筋が残っている可能性があると。

 本当は、雪の国の王族が生き残っている、わずかな可能性にかけて。


 そして、国王は勝った。レオ少年は出会えたのだ。

 春の国の貴族として領民を治め、雪の国の王族として難民たちを従えた、南の雪の天使たちに。


 半分、春の国の貴族の血を持つ、アンジェリークは、春の国の味方をしてくれた。

 ようやく春の国は、雪の国に征服される危機を免れる。


 偶然は、続かないだろう。

 だからこそ、国王たちは秘密の対策を進める。


「陛下、いかがなさいますか? 先ほどのくちぶりでは、一の姫は、自分が人柱の花嫁になるつもりのようです」

「……アンジェリーク王女は、絶対に手放せぬ。あれほど弁論に優れる者が、雪の国の外交を担えば、我が国は戦わずして負ける」

「ならば、やはり二の姫を? しかし、一の姫は、二の姫とローエングリンの婚約を認めました」

「……人柱の花嫁、第一候補は末のエル王女。第二候補をオデット王女とする。

アンジェリーク王女は除外。一応、王太子妃候補に名を連ね、王妃教育を受ける貴族令嬢の一人にしておるから、雪の国にも言い訳できよう」


 オデットの人柱の花嫁候補は、撤回されない。

 バッと顔をあげた、ローエングリン王子。意義を唱えようとする。

 将来の義理の姉と約束したのだ。オデットを幸せにすると。


 が、国王は視線で制する。政治にうとい、分家王族の王子を。


「ローエングリンは、アンジェリーク王女に勝てるか?

最後は情に流され、吟味もせずにオデット王女との婚約と、アンジェリーク王女の身体の治療を約束させられてしまった、そなたが」

「吟味ですか?」

「そなたは、春の国の代表として、国王の代わりに話している自覚を持っていたか? 持っておるまい。

そなたが最後に軽はずみで約束したことは、春の国と雪の国が、国を掲げて約束したことになる。

そして、言い逃れようとも、この部屋にいた近衛兵が証人だから出せと言われたら終わりだ。

国王が証人を出すことを拒否すれば、雪の国は騙されたとして、軍事力で報復できる口実を与えることになる。

アンジェリーク王女が、短命に終わっても同じこと。暗殺されたと口実を与えてしまう。

外交とは、それほど難しいのだ!」


 指摘を受けたローエングリン王子は、青ざめていく。


 本家王族の国王は、甘ったれた分家王族の王子に活を入れた。

 国王として、国を守る必要がある。

 大勢の国民を守るために、少数の国民を犠牲にする。


 ローエングリン王子が国王の器で無いのは、この判断を下せないから。

 たった一人の少女を守るために、春の国そのものを犠牲にしようとしたから。


「ローエングリン。アンジェリーク王女は、そなたを義理の弟として認めたから、譲歩してくれた。

これが公式会談であれば、婚約を認める代わりに、雪の国が我が国で塩を採掘することを認めさせたであろうな。

雪の国は、堂々と我が国に入ってこれる上、塩の採掘権を持つのは、雪の天使たち。

我が国は、戦わずして北地方を、雪の国に取られることになるのだ!」


 のんきなローエングリン王子は、さっきから国王の言葉を、どこか大袈裟(おおげさ)だと思っていた。

 さすがに外交戦だけで、武力で戦わずして、負けるなど無いと思っていた。


 けれども、具体的に指摘されて、ようやく理解する。

 アンジェリークは、外交戦だけで、国家に勝利をもたらせる存在。

 春の国が生き残るためには、春の国の貴族として、王家に取り込むのが得策だと。


「……だから、レオは人生相談してたんだ。姉君が外交問題に強いから」

「人生相談?」

「なんでもない! なんでもないよ、父上!」


 ポロリともらした王子の独り言は、医者伯爵当主の耳に止まる。

 

「ローエングリン、話しなさい。王太子であるレオナール王子の問題は、我が国の未来に直結する!」

「……偶然、聞こえたんです。レオが『側室を持つことは変か?』って、聞いてて。

『持ちたいなら持てばいいけど、女の子を侍らして見える』って、姉君が指摘してたのを」

「……それが人生相談?」

「えっとね、国王様のように『花嫁は一人だけで良い』っていうのが、レオの本音。

でも、子供が自分のように一人っ子じゃ、もしも亡くなったときに、後継ぎ問題が大きくなるから、『子供を増やすために側室を持つことが必要』って、レオは王太子として考えてるみたい」


 ローエングリン王子は、そこで言葉を切る。将来の国王になる、親友の心理を推理しながら、言葉を発した。

 国王を前にしてるのに敬語を忘れて、いつも父親に話すときの言葉づかいになる。


「レオは姉君を『性別を超えた親友』って、思ってるから、本音を言ってるんだと思う。

他の女の子に話せば、レオの花嫁になれると勘違いされるから、聞くことができないって」

「……国としても、難しい問題だな。アンジェリーク王女は現実主義だから、王太子は客観的な意見を求めたのだろう」

「レオの焦る気持ちも、分からなくもないけどさ。

うちも、兄上が亡くなって、弟の自分(ぼく)が後継ぎになったわけだしね。分家王族になったもの、偶然だし。

兄弟の居ないレオには、分家王族が作れないからね。子供の代で作る必要があると、感じているんだと思うよ」


 昔、西国との戦いで、王位継承権を持つ分家王族は、西の公爵家しか残らなかった。

 そこで、先代国王の姉の嫁ぎ先を、新興分家王族にする案が、国王派の貴族から浮上する。

 

 問題は、春の国では、母方の血筋は重視されない伝統があること。いかに王家と言えども、影響は免れなかった。

 特に西地方の世襲貴族は猛反発して、西の公爵が先頭に立ち反対する。

 北と東の侯爵家は、西の公爵の思い通りにさせないと、散々抵抗した。


 現国王が南の侯爵令嬢を王妃として迎え、医者伯爵を分家王族にする案を、中立だった南の侯爵が支持することで天秤が傾く。

 西の公爵は最後の抵抗として、西地方の伯爵領地を王家に返還することで、王位継承権を有することを認めた。

 現在、良質な麻と、貴重な痛み止めの薬草が採れる領地は、西の公爵派の貴族が治めている。


 医者伯爵家のローエングリン王子は、生まれる前のゴタゴタを聞いて育ってきた。

 政治にうとくても、分家王族の成立の難しさや、血筋を絶やさない重要性は理解している。

 だから、医者伯爵家は国王派でもなく、西の公爵派でもなく、中立の王族を貫いていたのだ。王族として生き残るために。


「……レオが、オデットとの見合いを推し進めてくれたのは、西の公爵よりも古い王家の血筋を、雪の天使を通じて医師伯爵家に取り込む為だよね?

でも、雪の国は、母方の血筋も重視する。雪の国の王族であるオデットを、春の国の決まりに当てはめることは、できない。

姉君も、それをわかっているから、オデットを自分(ぼく)に預けようとしてくれたんだよね」


 ローエングリンは、目を閉じて沈黙した。政治にうとい王子は、懸命に考える。

 色々なことが一気にやって来て、頭が混乱してしまう。

 

 それでも、父親や本家王族たちが、ここまで回りくどいことをしたのには、意味があるはずだから。


 目を開けたローエングリン王子は、見守ってくれていた父親の顔を見る。


「……やっと、分かったよ、父上。

父上や国王様は、オデット王女じゃなくて、アンジェリーク王女と婚約して欲しいんだね」


 医者伯爵は、王位継承権保持者として、ようやく自覚を持ってくれた息子に期待の視線を向けた。


 ローエングリン王子は、一人の男として、覚悟を告げる。


「ごめんなさい、無理!」

「ローエングリン! お前は、何を聞いていた!」

「あの王太子のレオに、平気で言い返せる女の子を花嫁にするなんて、絶対に無理!

患者や姉としても見れても、花嫁なんて、あり得ない!

自分は、控え目で献身的なオデットが良いの! あの子を正室にしてくれないと、一生結婚しない!」


 父親の怒鳴り声に構わず、自己主張する、末っ子の王子様。

 諦めきれない。諦めるくらいなら、国と花嫁を天秤にかける背徳の恋なんてしない!

 それに、きちんと主張しないと、アンジェリークに一生頭が上がらず、不幸になる未来が見えている。


「……やはり、ローエングリンも、拒否したか」


 心の中で予想していた国王は、天井を見上げながらつぶやく。

 息子や(おい)っ子と同じく、全力で拒否した未婚の王子を、責める気にはなれなかった。

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