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10話 雪の天使の秘密・後編

 春の国の北側で国境を接する、雪の国。

 軍事国家の強国は、春の国の国家建設以前よりも、古い歴史を誇る。

 大陸の覇者として、現在も君臨し続けていた。


 雪の国の正統なる王家の血を持つ美少女に、ローエングリン王子は最上級の敬意を示す。春の国の王子として。

 立ち上がり、洗練された動作で右手を伸ばすと、改めて声をかける。


「アンジェリーク王女、お手をどうぞ。僭越(せんえつ)ながら、自分(ぼく)がエスコートさせていただきます」

「妹は……オデットは、ローエングリン様のエスコートの意味を知らなかったようですね。『ダンス以外でも、王子様はエスコートするの!』と、お見合いのあと、驚いておりました」

「……自分には、それが不思議でたまりません」

「妹の死んだ許嫁(いいなずけ)は、騎士になるはずでした。そして、私たちの父方は、新興貴族の騎士の家です。

妹の中では、エスコートするのは、騎士の役目だと理解していたのでしょう」

「そうですか。府に落ちました。

今後は、自分が一生エスコートをすると、覚え直してもらいましょう」


 ローエングリン王子に手を預けながら、責任感の強い長女は語る。

 アンジェリークは、現実主義だ。事実を事実として、語るのみ。

 青空色の瞳は、ローエングリン王子を冷静に観察していた。


 王家の微笑みで動揺を隠し通す王子に、心の中で、ひとまず合格点をあげる。感情的になって我を通す相手だったら、大切な妹を嫁にやれないから。


 ソファーにエスコートされたアンジェリークは、目の前に座った王子に向けて、本題とは別のことを話し始める。


「……あなたは、亡くなられた兄君が自慢していた通りの方ですね。

この一年近く、実際にそばで見ていて理解しました」

姉君(あねぎみ)は兄上を……あ、いや姫君(ひめぎみ)は、わが兄を知っているのですか?」

「姉君で構いません。あなたが『オデットを正室にするから、義理の姉になる私を姉君と呼ぶ』と宣言して実行したときは驚きましたけどね。

さすがに四か月も呼ばれ続けたら、私も、周囲の方々も、なれますよ」


 責任感の強い長女は、義理の弟になるローエングリン王子に雪の天使の微笑みを送る。

 その笑みは、オデットそっくりで、王子は改めて血筋を意識した。


「あなたの兄君の婚約者は、北の侯爵家の姫君でしたからね。雪の国、南の公爵家『北の雪の天使の血筋』から嫁いできた王女を母に持ちます。

そして、私の父方のおばは、先代当主の弟の所へ嫁ぎました。

だから、春の国の北の侯爵家は、父方、母方、どちらからたどっても、私の親戚なんですよ。ご存知でしたか?」

「……雪の天使を調べる過程で、知りました」

「正直ですね。まあ、嘘をついても見抜けますけど。うちの妹も、観察眼があるのでご注意ください。

『私とのお見合いは、初めから退屈そうでしたわ。お礼を告げたとたんに、なぜか口説かれてしまいましたけど。

情熱的な口づけと口説き文句に、心動かされてしまいました』と、言っていましたよ」

「き、気を付けます」


 ローエングリン王子は十八才で、アンジェリークは十六才。

 それなのに王子は、アンジェリークに敵わない。五人兄弟の一番上に、三人兄弟の末っ子は勝てない。


「まあ、いいでしょう。

親戚の侯爵家の人々は、隣の領地の我が家に、気軽に遊びにきました。雪花旅一座の役者だった母の歌を目当てにね。

あなたの兄君も、夏の避暑期間中、お見えになられましたよ。いつも弟であらせられるローエングリン様を、自慢していました」

「どんな風に?」

「……弟は勉強嫌いで困るけれど、人を思いやる気持ちに溢れている。

思いやりの気持ちが『誰かを助けたい』という願いに繋がれば、家業の医学を勉強してくれるだろう。

立派に成長して、医者伯爵家を一緒にもり立ててくれるのを、気長に待っている」

「……自分(ぼく)は……」

「ローエングリン様。その言葉を語る相手は、私ではなく、オデットです。

あなたが花嫁にしたいのは、オデットですよね?」

「はい」

「ならば、口を閉ざしてください。涙を見せて感情的になるようなら、妹の婚約者として認めることはできません。

今の私は雪の国の王女として、あなたは春の国の王子として、非公式の国家会談を行っているのです」


 ローエングリン王子の言葉を、将来の義理の姉はさえぎる。

 現実主義のアンジェリークは、淡々と事実を語るのみ。


「国の未来を左右する会談で、自分の感情を相手に見せるなど、王族としてあるまじき行為。あなたは、将来、分家王族の医者伯爵を継ぐ者としての自覚が足りません。

レオナール様は、その点を常々心配されております。

私は、雪の国の王族であると同時に、春の国の貴族ですから、今回は見逃しますけど。

これが、雪の国の本家王族相手ならば、容赦なく付け入りますよ」

「……忠告、ありがとうございます」


 ローエングリン王子は、王家の微笑みを浮かべた。必死で、感情を表に出さないようにする。


『姉君こわい! さすが、三年前に春の国の北地方の貴族代表として、雪の国の本家王族と公式会談しただけあるよ。体験談って、参考になるな』


 末っ子の王子様は、どこまでものんきだった。

 非公式とは言え、国家間の会談は、王子として初体験。

 初体験だからこそ、ビシバシと厳しく、将来の義理の弟を鍛えてくれているのだと、のんきに思った。


 アンジェリークは、自分が横に反らしてしまった話題を元に戻す。


「本題に入りましょう。白き宝の、もう一つの意味を答えてください」

「雪の国の正統なる王の血筋、雪の天使そのものです」

「そもそも、雪の天使とは?」

「雪の国の分家王族、南の公爵家出身のアンジェリーク王女を祖先に持つ者のこと。

アンジェリークは、雪の国の古き言葉で『天使のような』と言う意味を持つ名前です。

すなわち『雪の国から来た天使のような王女』を誉める言葉であったのが、時代を経るうちに『雪の天使』と省略されたと、自分(ぼく)は考えています」

「……たった四ヶ月で、そこまでたどり着きましたか。

ですが、足りません。雪の天使の血筋は、確かにアンジェリーク王女を祖先とします。

同時に、夫であった、春の国の三代目国王の末の息子も、祖先とします」


 春の国が建国されたときの本家王族の血筋と、雪の国の最も古き分家王族の血筋。

 二つの国の正統なる王位継承権が、白き宝の正体だった。


 北地方の新興伯爵家の女当主は、雪の天使の微笑みをくずさない。

 隠された感情が読み取れず、ローエングリン王子は少し居心地が悪くなる。

 

「雪の天使を、私を見つけた、きっかけは? やはり、王家の歴史を?」

「……いいえ。一つ目のヒントは、ラインハルトが会話の中でくれました。

本物の雪の天使が、王宮を闊歩(かっぽ)していると」

「ヒントどころか、答えそのものではありませんか!」

「おこらないで、姉君! それでも、自分は意味が分からなかったので。レオナールに、次なるヒントを求めました」

「……王太子のレオ様にもですか? 春の国の本家王族の王子たちからヒントを貰えば、たどり着けて当然ですよ!」

「ごめんなさい!」


 口達者な相手に怒られ、思わず謝る、ローエングリン王子。

 次の瞬間、一生続く力関係を悟り、王子は愕然となる。

 年下の姉に、頭が上がらないことが、確定したのだ。


「まったく、あの二人は! ……きっと、レオ様の作戦ですね。ご自分の理想の未来を実現させるために、策を張り巡らす腹黒王太子ですから!

ラインハルト様も、親友のローエングリン様を助けるために、レオ様の作戦に乗ったんでしょう。

やってしまったものは、仕方ありません。今回は、見抜けなかった私の作戦負けですね」


 はっきり言って、アンジェリークの買いかぶりである。

 春の国の王位継承権第一位のレオ少年と、第三位のライ少年は、この時点では、雪の天使の秘密を知らない。

 偶然の産物が重なって、ローエングリン王子が真実を知る手助けに繋がっただけ。


 冷たい声音になったアンジェリークは、冷たい雪の天使の微笑みを浮かべる。


『……姉君って、さすが軍事国家の王女だよ。非公式会談でも、手加減してくれない。心理的優位に立ってる』


 笑顔で怒られると、人間の頭は混乱して、恐怖を感じる。

 医学を勉強している王子も知ってはいたが、実際に体験して、将来の義理の姉への畏怖(いふ)を強めた。


「それで、レオ様のヒントは?」

「あなたの母君が、雪花旅一座出身で、二十年前の王都では『雪の天使』と呼ばれていた。

歌劇『雪の恋歌』に出てくる、『雪の天使アンジェリーク』を演じていたと」

「……そちらも、答えそのものですね。アンジェリーク王女にたどり着くには、一番分かりやすいと思います」


 歌劇「雪の恋歌」は、元々おとぎ話として、北地方に語り継がれていた恋物語。

 雪花旅一座の始祖である、アンジェリーク王女の実話なのである。


「姉君。自分が着目したのは、母君の容姿です。旅一座の娘である母君は、子供である姉君たちと容姿が瓜二つです。

しかも、雪花旅一座の舞台を見たことがありますが、座員たちは、全員が母君と似た容姿で、異国情緒にあふれていました」

「容姿に着目したのですか? やはり、目の付け所が、違いますね。

私が王宮に来てから半年たっても、王宮勤めの貴族は、誰も疑問に思わなかったのに。

北地方の貴族は、金髪碧眼、色白肌が多いと言う先入観があるようでね」

「自分が知る中で姉君や母君は、北国の王族と髪や瞳、肌の色が瓜二つでした。

北国の王家の特徴を、平民の旅一座が持つのは、おかしいと感じますね」

「なるほど。やはり、ローエングリン様は、医者の家系ですね。

雪花旅一座は、いとこ、はとこなど、親族結婚を繰り返しているので、容姿が固定化しやすいと言われております」

「自分は、雪花旅一座の血筋を遡り、アンジェリーク王女にたどり着きました。

あなたも、母君も、名前は、アンジェリーク。それどころか、雪花旅一座の座長の長女は、アンジェリークの名前が多いですね。

北国の南地方の公爵家から、わが王家に嫁がれた王女の正統なる子孫として、代々名前を継承していると、推測しています」

「正解です」


 会談慣れしている相手にやられっぱなしでは、たまらない。政治にうといローエングリン王子は、うといなりに、春の国の王族として意地を見せる。

 オデットの祖先を調べる上で知った、色々な情報を武器に。


「南の雪の天使の血筋、雪花旅一座の役目は、それだけでは無いですよね?

医学的に見れば、我が国よりも、北国の王家の血筋の比率が、格段に高いです。

長い歴史のうち、祖先を同じくする、北国の南の公爵家と、何度も血のやりとりをしています。 王子は養子縁組、王女は側室として」

「……この国の貴族とも、血のやり取りは、していますよ?

私の母方のひいおばあ様は、当時の北の侯爵当主の孫娘ですから」

「姉君。 雪の国は巧妙だと思いますよ。分家王族の雪花旅一座へ、合法的に我が国の塩の採掘権を獲得させたのだから」


 アンジェリークは、雪の天使の微笑みを消した。父親譲りの眼力を発揮して、無表情になると、ローエングリン王子を見てくる。

 雪の国の王女は、春の国の王子を見極めようとしていた。政治にうといローエングリン王子が、妹の婚約者として、ふさわしいかどうか。


「我が国の北の侯爵家は、山脈の岩塩の採掘権利を持っています。そして、当時の侯爵夫人は、もう一つの塩の産地、塩湖(えんこ)の領主の娘。

つまり、あなたの母方のひいおばあ様は、父方の祖父母の血筋を理由に、我が国の北地方にある、二つの塩の産地の採掘権を主張することができました。

もちろん子孫である、あなたも、あなたの母君も同じです」

「……あのですね。塩の採掘権を利用したのは、私たちではなく、あなたたち、春の国の王族でしょう?

三年前に、北国の正規軍が真っ先に占領したのは、二つの塩の採掘場でした。

そこから兵士を引かせるために、北地方の貴族代表として、私と母に国王陛下のお供をさせて、公式王家会談で塩の採掘権を主張させたのですから」

「自分も知っています。だからこそ、王太子のレオナールは、オデット王女を自分の花嫁にするように、仕向けたのでしょう。

将来、我が春の国の王族も、塩の採掘権を主張できるようにするため」

「……それに関しては、私も同じ意見ですね。雪の国が、我が家から花嫁を要求してきていますから。

子供が生まれた瞬間から、雪の国の王家は、陸地の塩の採掘権を主張できます。

春の国の王宮に北地方の貴族として、我が家の祖先の戸籍が保管されている以上、言い逃れはできません」

「簡単な対抗策は、春の国の未婚の王子の誰かに、同じように塩の採掘権を持つ花嫁を迎え、子供を得ること。

現状だと、自分とオデットになりそうですね」


 ローエングリン王子の発言を最後に、アンジェリークは沈黙する。

 頭の回転が早い、新興伯爵家の女当主にも、答えられないことはある。

 まだ、たった十六才の少女なのだから。


 勝ちを確信したローエングリン王子は、自分の考えを告げた。


「……おそらく、アンジェリーク王女。元々は、あなたを王太子のレオの花嫁にするつもりで、国王さまは王宮に迎えたのだと思いますよ」

「レオ様が、私の伴侶? あり得ません。あんなに細かくて、夢見がちな性格の親友を、夫として見れるわけありませんよ!」

「……嬉しそうに将来の夢を語る相手は、今を生きることに必死な姉君にとって、バカバカしいことを言ってると思うから?」

「当然です。……まあ、初めてお会いしたときと比べて、ずいぶんと国の将来のことを、具体的に考えられるようになったとは思いますよ。

雪の国の内乱で、故郷を捨てるしかなかった難民を、あの方は追い返しはしませんでした。王都に戻られた後、北地方に住めるように取り計らってくたそうですからね」

「……難民を追い返えそうとすれば、雪の国が、難民救助の名目で再び侵攻してくる。

今度侵攻してくれば、北地方の貴族は、春の国を見捨てて、雪の国の貴族になるだろう。

そして、我が国は塩の産地を二つとも失い、王都を南地方に移さなくてはなくなる。

追い返す派の貴族や西の公爵を、そんな風に説得していましたよ、姉君」

「……本当に、具体的に予想しましたね。レオ様が説得しなければ、今頃、現実になっていますよ。

春の国は、素晴らしい王太子を持って、命拾いしましたね。さすが六代目国王、善良王の子孫です。

私の母方の血筋を知らず、男爵令嬢と(あなど)り、(ののし)り、国外追放された、西の公爵令嬢とは大違い。五代目国王、残虐王の子孫は(おろ)かなままでしたね。

先祖と同じように、雪の天使を排除しようとしたのですから」


 アンジェリークは、目を細めて、コロコロと笑った。大人びた笑顔は、軍事国家の王女としての色合いが強い。

 ローエングリン王子や、国王の腹心の近衛兵たちは、本能的に警戒心を強める。 


 軍事国家の王女は、ひとしきり笑ったあと、ピタリと笑うのを止めた。

 ローエングリン王子に向き直り、真剣な表情を浮かべる。


「だからこそ、私は母方の雪の国の王女としてではなく、父方の春の国の貴族として、王宮で過ごすことを選びました。

去年の春に、国王陛下の召喚に応えて、王都に出てきたのですよ。

この命の続く限りは、『王太子の秘書官』、そして『将来の王妃の秘書官』として、レオ様にお仕えするつもりで。

あの方が思い描く未来を、そばで見てみたくなりましたからね」


 軍事国家の王女は、あどけない雪の天使の微笑みを浮かべた。

 太陽の光で溶けてしまう、雪のような(はかな)い雰囲気をまとう。


「……私に残されている時間が、どれほどかは、分かりませんけどね」


 ローエングリン王子と、近衛兵たちは、思い出した。

 体の弱い美少女は、去年の春に王宮に来て早々、二回も血を吐いたことを。

 雪の天使は、夏の暑さにやられ、ベッドで寝たきりに近い生活を送ったことを。


「ローエングリン様。春の国の王子に、お願いをしていいでしょうか?

妹の婚約者として、春の国の貴族に戻ってきた、雪の天使の血筋を守ってください。未来のために。

私の願いは、雪の国の王族としては、あるまじき行為です。雪の国の本家王族に反抗するものですからね。

だから、非公式会談でお願いしております。私にとっては、妹の幸せが大切ですから」

「分かっております、姉君。オデットも、そしてあなたの寿命も、守りますよ。

医学界を専門に支配する王族、医者伯爵の次期当主として、約束いたしましょう」

「ありがとうございます」


 ……アンジェリークは、旅一座の役者を母に持つ。幼い頃から演技を仕込まれた長女は、相手の心を揺さぶり、簡単に支配する方法を身に付けていた。

 ローエングリン王子も、近衛兵たちも、見事に手玉に取られてしまう。

 非公式会談で、王子は約束の言質をとられ、近衛兵たちが証人にされた。

 三年前に春の国の命運をかけて、北国の本家王族と会談したアンジェリークは、したたかである。


「ご両親に、オデットとローエングリン王子の婚約は、南の雪の天使代表として、新興伯爵家の女当主アンジェリークが認めたとお伝えください」

「はい、姉君。オデットを正室にして、絶対に幸せにしてみせます!」

「……ローエングリン様は、政治問題に弱い方だと忘れていました。

前提条件として、雪花旅一座は、王家の血筋が途絶えるような有事に備えて、隠された王族です。

本来ならば、私たちは政治の表舞台には、立たない存在。

三年前に、雪の国の南の公爵が内乱を起こして、一族すべてが処刑され、『北の雪の天使』は途絶えました。

だから、同じ祖先を持つ、『南の雪の天使』から花嫁を貰うことになり、我が家は注目を浴びることになっただけです」

「あ! だから、春の国の国では、雪花旅一座は平民として通っている?」

「はい。春の国の貴族としての我が家は、平民の農家が爵位を賜った新興貴族に過ぎません。

四か月前まで男爵令嬢だった妹を、王子の正室にするのは、春の国が揺れると思いますよ」

「一応、対策は考えてあります。姉君の手を(わずら)わせるつもりはありません」

「そうですか? ならば、将来の義理の姉として、ローエングリン様のお手並みを拝見させてもらいましょう」


 そこまで話すと、アンジェリークは雪の天使の微笑みを浮かべて、ソファーから立ち上がる。

 雪の国の王女としても、オデットの姉としても、ローエングリン王子と会話すべきことは無くなった合図。

 察したローエングリン王子は、手を差しのべ、アンジェリークを部屋までエスコートした。

・アンジェリーク

名前の元ネタは、オペラ「チェネレントラ」の主人公 チェネレントラ(=シンデレラ)の名前、アンジェリーナより。

いくつもあるオペラ版シンデレラのうち、「チェネレントラ」は、フランス語の台本を、イタリア語で台本化したもの。

「アンジェリーク」は、フランス語の女性名の一つ。

オペラ「チェネレントラ」は魔法が存在しない、シンデレラの世界。なので、この小説のアンジェリークは、現実主義に。


・レオナール

名前の元ネタは、イタリアの芸術家「レオナルド・ダ・ヴィンチ」より。

「万能人」レオナルド・ダ・ヴィンチは、イタリア出身だが、亡くなる三年前にフランス王 フランソワ1世に招かれて、フランスで生涯を終えた。

レオナールは、「レオナルド」をフランス語にした場合の呼び方。

芸術家からの連想で、この小説のレオナールは、ロマンチストに。


・ラインハルト

名前の元ネタは、ドイツのバロック音楽の作曲家「ラインハルト・カイザー」より。

ドイツ語オペラの巨匠で、約百曲のオペラを作曲している。

最高傑作は、オペラ「クロイソス」で、一度発表したものを約二十年後に大幅に書き直した作品。

ちなみに「カイザー (独・Kaiser)」は、ドイツ語で皇帝や帝王を意味する言葉。なので、この小説のラインハルトは、王子の父と王女の母を持つ。



ちなみに、この三人が登場する物語……


「王太子の秘書は胃痛持ち 〜ロマンチストの王太子は、運命の赤い糸を追い求める〜」


鋭いツッコミをする、アンジェリーク視点の一人称で公開中です。


こちらの小説では、悪の組織の役職がモチーフです。

ボス→レオナール

参謀→ラインハルト

女幹部→アンジェリーク

博士→ローエングリン

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