冬の準備
風が冷たくなった。朝早く外に出ると、花壇に霜が降りている。
本格的な冬になると雪もかなり降るらしい。
レイラさんのお母さんの家で、レイラさんと一緒に教わりながら保存食を作る。
果物のシロップ煮、ピクルス、干し柿、干しキノコ、干し芋。
今日は村の男性陣は燻製小屋に集まり、腸詰を作ってるらしい。
完全に動けなくなるわけでは無いにしろ、雪が予想以上に降れば閉じ込められる可能性だってある。薪とか、乾燥豆とかは準備した方がいいだろう。
保存食を詰めた瓶を荷車に積んで、家に戻る。
レイラさんに手伝ってもらい保存庫に入れる。
村長がレイラさんの迎えのついでに分け前の燻製肉と腸詰を持ってきてくれた。
冬の間の薪の確認と補充の手配、ギルド経由で手に入れる決まりも教えてくれる。
その時に聞いた情報に愕然とする。なんと、薪の素材の木材集めは…ギルドに加入したばかりの子供たちの小遣い稼ぎらしい。
私、森に入るどころか、村を出る事すら出来ないのに…
「戦い方を知らないだけだ。それさえ学べば村の外に出て森に向かう事も出来るようになる」と村長が言う。
ギルドの新規加入は春、春になってから頑張れば良いと言われた。
冬に入る前にと、村には次々と商人が訪れるようになり、外の情報も入ってきた。
勇者一行は北の港から船に乗ったらしい。
随分遠くまで行ってしまったんだなあ…と思う。
船に乗るのは、ゲームでは中盤の終わりぐらいだった。
レイラさんは刺しゅう布を高値で買ってもらいホクホク顔だ。
私の作った刺しゅうは、家の家具を飾る事のみに使われている。
ベッドカバー、クッションカバー、テーブルクロス、あらゆる家具の上にかけられている。
家具を汚さないから良いのでは無いかと思う。
武骨な家が、なんだか家らしくなった。
家の持ち主が帰ってきて、この家を離れる時にはこの子たちもつれていくのだ。
と思うくらいには愛着がある。
最近は冬に向けて、レイラさんのお母さんに教えてもらいながら、編み物をしている。
ノルマは…マフラー、肩掛け、腹巻、帽子、毛糸のパンツ…大物のセーターにはまだ遠い。
お母さんは私の3倍の速度で編んでいる。帰りに編み上げた手袋をプレゼントしてくれた。