右腕の運動
季節が夏から秋に変わろうとしている、
骨折が完治した。副え木を外して、右手を動かしても痛くない。
両手が使える事で楽になった。健康って素晴らしい!
今日は村長の家でレイラさんとケーキ作り中。
右手に持つのは剣では無く…泡だて器だ。
「結構大変なのよね。いい運動になるでしょ、頑張って」
レイラさんがニカっといい笑顔をしている。
数か月、大事に大事に動かさなかった右腕で、泡だて器をふるい続けるのは結構きつい。
休憩をはさみつつ卵を泡立てていく。砂糖を加えるとどんどん重くなる。
焼き上げたケーキを持って向かうのはレイラさんの実家。
今日はお母さんの誕生日らしい。
「ひとりで行くと子供はまだか~子供はまだか~と煩いのよね」レイラさんがぼやく。
隣で村長さんも苦笑いだ。
「お兄ちゃんもまだ結婚しそうに無いし、期待がすべて掛かってくるのよ。どう思う?」とレイラさんに詰め寄られる。
どう思うも何も、コメントしようがない。
頑張って~と軽く言ったら、据わった眼で見返され、わき腹を執拗につつかれた。
レイラさんのお母さんは、レイラさんによく似た美人で豪快な人でした。
大家族が住めそうな家にお母さん1人で住んでるから、あまり聞いちゃいけない事情があるのかと思ったら、お父さんはギルドの仕事で旅に出ているという。
「お父さんが居ないから、止める人が居なくて大変なのよ」とレイラさんが耳許で囁いた。
料理とケーキでお祝いした後は、ひたすら酒盛りでした。
途中で酔っ払ったレイラさんを抱えて村長が家に帰り、私も帰ろうとしたけどあえなくお母さんにつかまり断念。
お酒を酌み交わして、どんどん注いで、注がれているうちに潰されてしまったらしい。
目が覚めたら、レイラさんの実家に寝かされていた。
二日酔いでガンガンする頭を抱えて起きたら、お母さんが元気に朝ごはんを作ってた。
レイラさんのお母さんが強すぎる事だけは理解した。