新しい生活
村長の好意で村の空き家に住まわせてもらうことになった。
しかも管理人待遇。持ち主は仕事で王都に長期出張中。
綺麗に掃除して使えばタダで住める上にお給料も出るという破格の条件である。
白い壁に茶色の屋根の一軒家。中には武骨な印象の家具が最低限。
家具が少ないから、手入れは楽だと思う。
利き手はまだ使えないけど、時間と手間をかければ片手でもなんとかなる。
村の外に出ることはできない。外の魔物が強すぎる。
武器を持っている時ですら限界だったのだ。
よく村までたどり着いたものだと思う。
村の中は平和だ。危険な場所と思えないくらい平穏な日々。
はたきを使って家の埃を払う。家具を布で乾拭きする。
お肉と野菜を使ってシチューを作る。
こまめに温めなおせば、3日はもつはずだ。
味は、まあ美味しいと思う。空腹は最高のスパイス。
庭に花壇があったので、ハーブを何種類か植えてみた。
「ルーシェ、調子はどう?」
振り返ると、玄関にレイラさんが立っていた。
「髪伸びたね、最初に会った時は男の子みたいに短かったのに」
レイラさんが髪の毛をいじりながら言う。
前は、剣を振るときに邪魔になると髪を短くしていた。
利き手が使えないから髪を切る作業が怖くて、放置していた髪の毛は鎖骨の下まで伸びている。
持ってきたリボンで髪の毛を結んでくれた。
生成に赤い糸で繊細な刺しゅうがされていて、可愛らしい。
「これ私が作ったのよ、大事に使ってね、今度ルーシェにも作り方教えてあげる。」
レイラさんがにっこり笑った。