無駄な事は何一つない
王都の貴族に色々な意味で振り回された、魔王討伐の旅。
辺境のギルドでミーシャとテオドールに別れを告げ、ギルドの魔獣討伐団に紛れて村に戻ってから3か月がすぎた。
今日は神殿に行って軽業師に転職した帰り、アレクが子供たちの新人研修をしているところに遭遇した。
ひとりだけ大きな子供がいると思ったら、コングラに周囲を囲まれたルーシェがニコニコ笑いながら子供たちを見守っていた。
***
ギルドの新人研修も3か月目に入った。
この3か月間、鬼のアレク隊長の指導の元、子ども達と一緒に毎日訓練を受けている。
魔獣使いとして必要な事は、魔獣の事を知る事。
アレクと一緒に森の魔獣たちの生態を学ぶのだ。
魔獣を従わせる為には、魔獣に自分より強いと認めさせなければならない。
相手の弱点をつき、適度に強さを見せつける。
数をこなして魔獣使いのランクが上がれば、戦わなくても魔獣が従うようになる。
ピグシシという豚型の魔獣は実は鋭い爪と牙を持つ獰猛な性質がある。弱点は鼻先。鋭い爪や牙で刺されないように鼻先を叩く必要がある。
見た目の可愛さに反して瞬発力があり凶暴なラピッドラという兎型の魔物の弱点は大きな音と耳。おびえた瞬間に耳をつかめば抵抗できなくなる。
このあたりの魔獣使いが好んで用いるコングラ、身体が大きく森歩きの時には最強の盾となる。弱点は目つぶし。
「お姉ちゃん、すごーい」
子ども達が楽々と、魔獣の弱点を突いていく私を見て感嘆の声を上げる。
王都で自衛団に入っていた時は、剣を使わず、対象にけがをさせずに捕まえるお仕事の方がはるかに多かったのだ。
第一王女の結婚で、王都中がお祝いムードになった一昨年の春には、王都の全ての飲み屋のバケツの置き場所を覚えてしまった。勿論、バケツの水をかけて酔っ払いのけんかの仲裁をするためである。
自然に訓練は最初だけ、その後は子どもたちが危なくないように見守るようになった。
最近は、気付くとコングラが傍に立っていて守るような行動をとってくれるようになった。
今日は懐かしい人に森であった。
魔王討伐の旅の仲間だった、魔獣使いのレオ。
ギルドの仲間に紛れて、隣村に帰ってきている事は聞いていた。
軽業師に転職してきたらしい。
サービス精神旺盛なレオらしく、素早く木に登っては子どもたちをうまい具合にサポートしている。
久しぶりにレオに会い、楽しそうにふざけていたアレクがコングラに囲まれている私をみて首を傾げた。
「おかしいなあ、そこまでランクは上がってないはずなのに」
アレクの隣で、コングラの行動の理由に気付いたレオがニヤニヤ笑っている。
”帰ったらアレクに伝えるから黙っといて!”と目で訴えると、レオは目を細めて嬉しそうに笑った。
コングラは集団で生息する賢い魔獣で、妊娠したメスや子を抱えたメスを内側に入れて守る習性を持つのだ。




