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ある腹黒娘のお話

手の震えが止まらない。ガチガチとうるさい音がずっと聞こえている、自分の歯の音だった。

丘の上でキャンプをしていた時に大きな猿の魔物の集団に襲われた。

魔物除けの結界をきちんとかけて寝たはずなのに。

襲撃で、仲間が行方不明になってしまった。

ルーシェ…仲間に弱みを見せようとしない意地っ張りの女の子。


アレクがルーシェを探しに行くと出て行ってからどのぐらいたつのだろう。

何日も過ぎた気がするのにまだ夜が明けないのだ。

休んだ方が良いと寝袋に押し込まれ、テオドールが眠りの呪文を唱え、無理やり眠らされた。その日は何度も同じ悪夢を見た。


目が覚めた時には、日が高く上がっていた。

外で話し声がするので出ていくと、ルーシェの剣とボロボロに破壊された兜が土の上に転がされていた。

「ルーシェは死んだ、遺体は激しく損傷していた為その場に埋めてきた」

無表情に告げるアレクを見て、私は何度も見た悪夢…いや前世を思い出した。


私の前世は身体が弱くて、子どもの頃から入退院を繰り返し、高校入学を前に亡くなってしまった。可愛い制服だけが取り柄のおバカ高校だったけど、制服着たかったな。

そんな私の趣味は、当然インドア系。暇つぶしのゲームばかりしていた。

ゲーム三昧だったからといって、ゲームの世界に転生したいわけじゃ無い!


私はミーシャ、レブラン伯爵家の三女。生まれつきの高い魔力と母親譲りの美貌を誇り、調子乗ってました。

でも私の未来は勇者をかばって死ぬ一択なんです。


日本のネット上ではミーシャの死は「嫁が死んだ。つらたん」「嫁が死んだので辛くて仕事出来ない。早退します」と話題になりましたが…そんな奴らに嫁扱いされても嫌だ。

前の人生では二次元で終わった恋の一つもしたい。

どーせなら乙女ゲームの主人公に生まれたかった。


呆然としている間に馬車に格納され旅は続く。

テオドールが道士に転職し、アレクはいつの間にか勇者の剣を手に入れていた。

その飾りの宝石、ルーシェの使ってた剣にとても似てるんですけど。


それに賢者という職業、とてもストレスなんです。

守護呪文を延々と唱えるだけ!

これって本当に効いてるんですか~!!


気付いたら、船に乗せられていた。

船に乗るって事は…もうすぐ旅の終盤がやってくる。

船から降りようにも陸ははるか彼方。

「ああ、せめて恋がしたい」「俺じゃダメか!?」

水平線で輝く夕陽に向かってぼやいていたら背後から声をかけられた。

振り返ると、テオドールが真っ赤な顔をして立っていた。


私の心の中の腹黒い悪魔が囁く

”3人の中では1番イケメンで、性格も良い。しかも夕陽の中での告白なんて素敵だわ。いっちゃえいっちゃえ”

テオドールと付き合うようになり、気付いたらどっぷりはまっていた。

時間に限りがある、自重という言葉は私の辞書から消した。


ある朝、浄化魔法を使おうとしたら、魔法が使えなくなっていた。

隣のテオドールに確認すると、テオドールも同じだった。


慌ててアレクに報告すると「時間の問題だと思ってたよ」と言いニヤリと笑った。

アレクがこの笑い方をするとろくな事を言わない。

「お前らさ、冒険者が賢者や道士になりたがらない理由って知ってる?」

「能力を持つ人が稀少だからじゃないの?」

「いや魔力があればだれでも目指せるけど、誰もやりたがらないんだ」

「賢者と道士は結婚した途端にジョブが消えますから」とレオが決定的な一言を言った。

何?その恥ずかしい仕様!

ショックを受ける私とテオドールに向かってアレクがニヤリと笑って続ける。

「いつ交渉しようか迷ってたんだけど、今決めてしまおう」


私達は魔王の正体、自分たちではかなう相手ではない事、裏でギルドによる討伐隊が動いている事を知らされた。

そして今後の生き方の選択についても…王都に戻り貴族として生きるか、それとも戦いで死んだと報告してここで平民として生きていくか。


私はテオドールと一緒にこの地に残る事にした。

魔王の目前で大量の魔物に襲撃された事にして…私たちを魔獣使いレオの操る大量の魔獣に襲撃させた

モフモフも悪くないわ!

魔獣に安全な場所に運ばれている最中、私は魔獣使いになる事を決心した。

辺境の町で、私とテオドールは冒険者としての道を歩き始めた。

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