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藤吉郎になりて候う 〜異説太閤紀~  作者: 巻神様の下僕
第五章 美濃征伐にて候う
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第九十五話 西美濃四人衆

 松倉城の城主『坪内 利定』を味方に引き入れる事が出来た。


 だがこれはチュートリアルに過ぎない。


 本番はこれからだ!


 先ずは西美濃国人衆の切り崩しだ。

 西美濃国人衆は先の内乱で義龍側に付いて敗れている。

 その後は龍重に従っているのだが心服しているとは言えない。

 この西美濃国人衆を味方に引き入れる事が出来れば形勢は織田家に有利になる。


 西美濃国人衆で有力な者が四人居る。


『稲葉良通』『安藤守就』『氏家直元』『不破光治』である。


 この内良通は曽根城にて謹慎している。

 最も義龍に味方していたのが良通だからだ。

 それに西美濃国人衆に対して最も影響力が強い人物だ。


 そしてその監視をしているのが守就だ。

 守就は先の内乱で道三と通じていたのは間違いない。

 その証拠に本拠の北方城の他に三つの城を与えられている。

 中々の曲者だ。


 直元は居城で在る大垣城に居る。

 本拠の大垣城は義龍の拠点に使われた。

 彼は西美濃国人衆最大の勢力を持っている。

 彼が味方に付けば大変心強い。


 そして光治は不破郡西保城に居る。

 浅井と一番近い場所に居る。美濃の国境を守っているのだ。

 先の内乱では義龍に付いているが兵を出していない。

 中立寄りだと見られる。


 この四人の重要度は究めて高い。

 しかし、先の内乱でこの四人の勢力は弱まっている。

 あ、一人だけ別だった。


 小六が言うには良通が味方に成れば直元と光治も仲間に成るだろうとの考えだ。

 ただ一人守就だけは別だ。

 守就は野心家で策謀好き。

 どうやら先の内乱では自分の価値を高く買った道三に味方しただけで心服などしていないそうだ。


 今までは爪を隠していたと言う訳だ。


 これは説得よりも潰した方が良いかもしれない。

 でも、そうすると『竹中 半兵衛』が仲間に出来ないかもしれない。

 史実では半兵衛の奥さんが守就の娘なのだ。

 これはどうしたものかな?


「あの~、お茶が入りました」


「あ、ああ。そこに置いてくれ」


「はい。分かりました」


 利定がお茶を置いて待機している。


「ああ、用があれば呼ぶから。もういいよ」


「はい。失礼します!」


 一礼して帰っていく利定。

 どうやら小六の教育が行き届いているようだ。

 けっこう、けっこう。

 俺に実害さえ無ければある程度は放っておこう。


「それで、これからどうするだい。藤吉?」


 俺が茶を飲んで一服していると小六が尋ねた。


「稲葉に接触したいけど。出来るか?」


 手っ取り早く良通を口説き落として西美濃国人衆を味方に引き入れる。なるべく時間を掛けたくない。

 時間が経てば経つほど道三は体制を整えるだろう。

 今、内乱が終わってゴタゴタしている時が一番動き易いのだ!

 小六は腕を組んで考えている。

 これは無理そうだな?


「藤吉。稲葉よりもここから近い氏家家を説き伏せたらどう?」


 長姫は男装姿で足を崩して座っていた。

 その長姫が扇子で地図を指し示す。

 この地図は俺が書いた物で中々の出来だと自負している。

 なんせ未来の地図を元にして書いてるからな。

 埋め立て後が有る尾張よりも内陸の美濃の方が誤差が少ない。

 もちろんこっちの世界の地図とも見比べて書いてある。

 この地図を見た小六と長姫の驚く顔を俺は忘れないだろう。


 この地図を見せたのは小六と長姫と小一だけだ。

 この地図の作成は俺一人では難しいので小一にも手伝わせた。

 むろん、小一には未来の地図は見せていない。

 あの地図は俺の大事なチートアイテムだからな。大事に使わないと。


 話を戻そう。


 長姫は氏家直元を説く利点を俺に説明してくれた。


 まず、氏家家が西美濃国人衆で最大の勢力を誇っている事。

 そして大垣の場所がここから近い事。

 といっても曽根城と北方城の距離も対して違いが有るわけではない。

 それを小六が指摘すると?


「井ノ口から遠い方が良いのよ」


 なるほど。道三の本拠地から遠い方が色々とやり易いものな。


「それに今の直元は決して安泰ではないわ」


 これは氏家の勢力が大きすぎるのが原因だ。

 道三にとって国人衆の力が大きすぎるのは問題だ。

 また、大規模な内乱を起こされると大変だ。

 そうなる前に何らか理由を付けて領地を削りたいはず。

 現に守就に与えられた三つの城は元は氏家家の物だ。


「それに道三は西美濃国人衆の仲を裂きたいようね」


 守就は西美濃国人衆にとっては裏切り者だ。

 その裏切り者に自分の領地を取られる。

 確かに仲良くなんて出来ない。


 もしかして、道三は西美濃国人衆の間で内乱が起きるのを期待しているのか?

 そして、それに介入して支配力を高める。

 国人衆の力を弱めて中央集権体制を固めるのが狙いか?

 案外、跡取りの龍重は頼りないのかもな。

 道三なら国人衆を上手く使えるだろうが、龍重はそうじゃないのか?


「ふぅ、姫さんの考えは正しいかもしれないねえ」


 長姫の推理に小六が捕捉してくれる。


  守就が拝領した元氏家家の領地で問題が起きているらしい。

 内乱が終わってからすぐに領主が代わった事でトラブル続出のようだ。

 これを聞くと他人事とは思えないな。

 まさに俺がやっていた事だからだ。


 大変だろうけど担当者は体を壊さないようにな?


「なら、稲葉よりも氏家に接触した方がいいか?」


「そうだね。稲葉よりも氏家との方が連絡が取れるよ」


「よし。なら氏家に先に会おう」


「分かった。すぐに渡りを付けるよ」


 そう言うと小六がパン、パンと手を打つ。

 すると小走りしてくる音がして戸の前に人影が出来る。

 静かに戸が開かれると利定が姿を見せる。

 利定は小六に耳打ちされると直ぐに戸を閉めて居なくなった。


 なんか、可哀想に思えてきたな。

 あいつこの城の城主なのに小六に小間使いとして使われてるもんな。

 そして俺達に見えない所で文句言ってるんだぜ。多分。



 氏家家との連絡はわりかし早く取れた。

 何でも向こうも俺に会いたいらしい。

 これって罠じゃないだろうな?


「大丈夫だよ。私は直元殿とも面識があるから、いきなり捕らえられる事なんてないよ」


 本当かよ?


「大丈夫ですわ。藤吉。その時はわたくしが助けて見せますわ!」


 そんな胸張ってもね? まあ、中々のお手前ですけど。

 それに囲まれた時は一緒に捕まるよね?


「我ら坪内家が護衛致します!」


 利定が土下座して宣言する。


「いや、君ら必要ないから」


 ガーンと言う文字が顔に現れる利定。

 大人数で会える訳ないじゃないか?

 それに坪内家と一緒に行動してたら色々と不味いだろうが、少しは察しろよ。


「坪内家の面々には後々動いて貰うから」


「分かりました!」


 うん、うん。分かって貰えたみたいだ。


 氏家直元に対しての口説き文句を考えながら俺達は大垣城に向かった。

 大垣城は先の内乱で戦場になっていたが城は綺麗な物だった。

 確か光秀が少数の兵で落としたんだったっけ?

 どうやって落としたんだろう?

 今度会う機会が有ったら聞いてみようかな。

 でも光秀は敵になったんだ。


 厄介な奴が敵に成ったかもな?


 大垣城までの手引きは当然蜂須賀党がやってくれた。

 すげえな、蜂須賀党。何でも有りかよ?


 単に商人に化けているだけだが。


 そして直ぐに直元と会う事が出来た。

 俺達と対面する氏家直元。

 ちょっと疲れてるおじさんだな。覇気を感じない。

 内乱で色々有ったんだろうな。

 ごめんな。

 こんな疲れてる時にやって来て。


 俺が通り一辺倒の挨拶した後に直元は直ぐに本題を口にした。


「我が家が織田家に味方する条件はただ一つ」


「条件が一つだけですか?」


「そうだ。その条件は……」


「その条件は……」


 やけに溜めるな?


「安藤 伊賀守 守就の首だ!」


 そ、それは、ちょっと。


 安藤守就の首を取ったら『竹中 半兵衛』を仲間に出来ないじゃないか!


お読み頂きありがとうございます。


誤字、脱字、感想等有りましたらよろしくお願いいたします。


応援よろしくお願いします。

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