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藤吉郎になりて候う 〜異説太閤紀~  作者: 巻神様の下僕
第四章 群雄蠢き候う

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第八十四話 蝮の本気

遅くなりました。

 美濃の内乱が終わった。


 美濃の内乱が終わっても俺の仕事終わらない。

 いや、これから始まるのだ。

 俺の犬山での仕事はすでに始まっている。


 犬山城占領と同時に領民からの苦情処理に追われていた。

 どうやら蝮の奴はこの犬山城周辺の村から一切合切持ち出したようだ。

 その為に今の俺は城に有った備蓄を吐き出している。


 せっかく得た貴重な物資の山が!


 俺の心が悲嘆にくれても物資は残る事はない。

 小六達に命じて領民に物資を配っている。

 この地味な作業を弟の小一は嫌がる事なくこなしている。

 時には笑顔で、時には領民に同情して涙を流している。

 そんな小一に犬山の人々は信頼を寄せているようだ。

 何か有ると『小一様、小一様』と頼りにされている。


 なんか小一の方が秀吉みたいだな?


 そんな嫉妬を感じるほど小一は良くやっている。

 まぁ、後で誉めておこう。

 そして俺達が犬山で領民に食料やら衣類やらを配っていると第二次墨俣合戦の詳細と続報が次々とやって来た。


 蜂須賀党は本当に良くやっているよ。

 役に立つなんてもんじゃない。

 俺にとって無くてはならない物になっている。

 あ、物なんて失礼な物言いだな。訂正、訂正。


 俺にとって無くてはならない人達だ!


 そんな蜂須賀党からの報告を俺と小一、小六と長康が聞いていた。

 その内容は……


 まずは自分の死亡を仄めかす情報を流して義龍を誘い出した蝮こと道三。

 墨俣川近くに陣を張る両軍。

 しかし、前の戦と同様ににらみ合いを続ける。

 前回はここで義龍側が井ノ口城を奇襲で攻めとった。そしてそのまま両軍は兵を退いた。


 では、今回は?


 義龍側にある報告が届く。『六角が兵を起こし大垣に攻め寄せている』と。

 義龍と六角氏の中は悪くない。

 義龍が大垣に居を構えて直ぐに六角氏に使者を送って友好関係を築いている。

 しかし、義龍と六角氏は同盟を結んではいない。

 あくまで友好関係を築いているに過ぎない。

 なぜ、義龍は六角氏と同盟を結ばなかったのか?

 それは俺には分からないが、今回はそれが致命的であった!


 報告を受けた義龍は当初慌てる事なく、兵を退くことにしたらしい。

 その義龍の初動が遅かった事も災いした。

 いざ、兵を退こうとした時すでに大垣は落ちていた。

『大垣、落ちる』

 その報告が成されると義龍陣営は慌てて兵を退いた。


 その様子を眺めていた道三が義龍を見逃すはずもなく。

 激しい追撃を受けた義龍側はこれに抵抗しきれずに惨敗。

 義龍は逃げる事も出来ずに討ち取られた。


 これが第二次墨俣合戦の内容だ。


 そして義龍が討ち取られた後に井ノ口の『安藤 守就』は降伏した。

 安藤が降伏した事で義龍に味方していた国人衆はその後次々に道三に降伏していった。

 この降伏してきた国人衆を道三は受け入れて美濃内乱は終息した。


 俺としてはもうちょっと美濃がゴタゴタしてくれれば良かったのにと思ったが案外すんなりと終わったので拍子抜けしていた。


 それにしても不思議な事は井ノ口にいた安藤だ。

 彼はなぜ動かなかったのだろうか?

 彼が道三の背後、もしくは加納城に攻め込めば、今頃道三と義龍の立場は逆になっていただろうに?

 おそらくは道三が安藤に何らかの働きかけをしたのだろう。

 その為に安藤は動かず、そして戦が終わって直ぐに道三に降伏した。

 結果を見れば道三と安藤が繋がっていたと言われれば納得する。

 いや、納得せざるを得ない。


 そして大垣城を攻め落としたのは六角氏ではなかった。

 攻め落としたのは『明智 十兵衛 光秀』の手勢であった。

 光秀はどうやったのかは知らないが密かに六角氏の所に行き、六角氏に兵を出させた。

 その兵力は決して多くはなかったが大垣に籠る人々は味方と思っていた六角が攻めて来た衝撃は大きかったのだろう。

 光秀率いる僅かな手勢に何ら抵抗する事も出来ずに城を落とされた。

 この時に城に残っていた義龍の嫡男である『斎藤 龍興』は討ち取られている。


 龍興が死に、義龍も死んでしまっては義龍に味方した国人衆が抵抗する意味もない。

 旗頭を失っては抵抗出来る訳ない。


 これで美濃は蝮の手に戻ったと言う事だ。


 やれやれ、厄介な御仁が残ってしまった。

 それに大垣を僅かな手勢で落とした光秀の名前も近隣諸国に鳴り響いていた。

 これで光秀君は有名人だな。


 決して羨ましい訳ではない。決してない!


 しかし、今回は蝮の本気を感じたな。


 織田家に兵を出させるために領地を差し出し、決して仲が良かった訳ではない六角氏を動かし、更には敵の有力者を味方につけるその手腕は大いに勉強になった。


 これが蝮の本気か?


 この蝮と俺達織田家はどう向き合って行けばいいのだろう?


 しかし、俺は織田家の一臣下でしかない。

 織田家の行く末を決めるのは市姫様だ

 そして俺は市姫様の決定に従うだけだ。


 決して思考停止している訳ではない。


「これからどうなるんだろうね? 兄者」


「さあな」


「さあなって大将。いつもの大将らしくないな?」


「そうか?」


「そうだよ。兄者は何時だって先を見ていたじゃないか?」


「そうだったかな?」


「どうしたんだい藤吉。あんたらくしないよ?」


 俺らしくない?


 それは多分。


 俺が恐怖しているからだ。


 俺はどこかで安心していたんだと思う。

 今までは何だかんだと上手くやっていたし、上手くいっていた。

 全ては俺の思う通りに物事が進む。

 そう思っていた。


 しかし、今回は違う。


 今回の出来事は俺の想像を越えていた。


 俺はこんなに早く美濃が纏まるなんて思ってなかった。

 この混乱はもっと長引くと思っていたのだ。

 だが、結果は違った。

 俺の思う以上の結果だった。


 俺は怖い。


 何故なら蝮の次の目標は、間違いなく尾張だ!


 果たして俺は本気の蝮を相手に戦えるのだろうか?



 俺は大きすぎる敵に恐怖していた。


お読み頂きありがとうございます。


誤字、脱字、感想等有りましたらよろしくお願いいたします。


応援よろしくお願いします。


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