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藤吉郎になりて候う 〜異説太閤紀~  作者: 巻神様の下僕
第四章 群雄蠢き候う

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第七十五話 林美作外道なり

 朝から皆で食事を摂っている。


 俺の右側に長姫が左側に小六が居る。

 対面に犬千代と寧々がその隣に朝日と母様、とも姉さんに弥助さん。小一は小六の隣だ。


 つまり上座に長姫が座っている事になるのか?


 朝食は一分づきの米と味噌汁に母様の漬けた漬物だ。

 久しぶりの家族水入らずの食卓だ。

 昨日は木下一家だけで食べたからな。長姫達には遠慮してもらったのだ。

 いつもは城で一人寂しい食事で不味くも美味しくもないご飯を食べている。

 腹いっぱい食べる事の出来る現状は大変有り難いのだが、どうせなら食事は美味しく食べたい。

 今朝は美少女と美女と美女?に囲まれての食事だ。

 食が進むと言う物だ。


 しかし、この食事に皆の笑顔はない!


 俺を挟んで互いが互いを牽制している。

 迂闊に声を掛ける事も出来ない。

 食べ始めは良かったのだが、このプレッシャーは朝からきつい。

 という訳で先に食事を終えて要件を伝えてる。


「あー、長姫様?」


「はい!何ですか藤吉?」


 勢いよく返事をする長姫様。その顔は笑顔に溢れている。


「今日は私と供に城まで来てもらいます」


「何故ですの?」


 く、小首を傾げるその姿、アザと可愛い!

 この人は知っているのだ。自分のこの姿が絵になると!


「ごほん、私は連れてくるように言われただけですので」


 嘘です。知ってます。信光様からの厳命なのです。

 内容は今川方の内情の確認です。


「そうですか。では藤吉が一緒に居てくれるのですね」


「え、いえ。私はご一緒出来ませんです。はい」


「ならば、わたくしは参りません」


 えー、ちょっと止めてよ!


「あらあら、囚われの姫さんは藤吉の頼みも聞けないのかい」


「む!」


「そうですね。藤吉様のお願いも聞けないなんて、図々しい」


「あぁ!」


「え、その、小六姉さんも犬千代ちゃんも抑えて抑えて」


「分かりました。わたくし参ります。但し! 藤吉が一緒に居てくださいね」


「あ、えーはい、分かりました」


 とりあえず城まで連れて行って、後は勝三郎に丸投げしよう。

 俺は通常の仕事が有るしな。


「はい、はい。皆今日も一日働こうかね!」


 パンパンと手を叩く母様。それに対して皆は?


「「「「はい!」」」」


 息ピッタリだね皆。それに慣れてるな母様。



 城までは馬に乗って行くのだが長姫は俺と一緒の馬に乗って城に向かった。

 これには小六と犬千代の眉間がピクピクしていたが暴発はしなかった。後ろで母様が見ていたからな。

 しかし、この姫様は何で俺なんかに好意を寄せているのかいまいち分からない。

 しかし、まあ、美女に好意を寄せられていやな訳はしない訳で。

 鼻の下を伸ばしながら締まりのない顔をしていたと後に寧々が教えてくれた。


 締まりのない顔は元々だと思うんだが?



 城に着くと俺はいつもの部屋に向かった。

 長姫は最初は駄々をこねたが『あまり駄々をこねるとおっ母に言い付けますよ』と言うと大人しく犬千代達と供に奥屋敷に向かってくれた。

 屋敷を出る前に小六の助言を聞いていて良かった。

 今度帰ったらハグしてやろう!


 そして、部屋でいつもの様に書の山を一つ一つ処理していると聞いた事のある足音が聞こえて来た。


 さーと戸が開かれるとそこには平手のじい様がいた。

 相変わらず眉間に皺を寄せている。


「藤吉。戦になる。用意を頼む。五日後だ」


「は?」


「聞いてなかったのか。五日後だ!」


「いやいや、そうじゃなくて。戦ですか? 何処と?」


「む? 昨日話してなかったか?」


「聞いてませんよ?」


 何でいきなり戦になるんだよ!


 斎藤山城か? 義龍か? それとも伊勢の長野家か?


 もしかして三河の『松平 元康』か!



 俺がそんな事を考えていると平手のじい様が説明してくれた。


 平手のじい様の話によると拷問にかけていた『林 美作』が口を割ったそうだ。

 その中で討伐すべき相手が現れた。

 当初、林美作は強気な態度をとっていた。


『今に今川がやって来る。その時俺を生かしておいた方がお前らの為だ!』


 と牢屋で罵っていたそうだ。


 しかし、頼みの今川は俺達がいや、市姫様の軍勢が追い払った。

 そして待てど暮らせど今川がやって来ない事に気づいた林美作の威勢は段々と落ちていった。

 それからは信光様の主導で拷問が始まった。

 今までどうやって今川と通じていたのかを吐かせる為だ。

 それにまだ織田家に弓引く裏切り者がいないかの確認の為に。



 林美作の話は正直に言うと聞かなければ良かったと言う話が多い。

 林美作は自分が助からないと知って洗いざらいぶちまけた。


 その一つに主君『織田 三河守 信秀』を殺害した事を認めた!


 信秀は病死であったのだが、林美作は土田御前を使って信秀を殺害したのだ。

 殺害方法は信長と同じで毒だ。

 しかも、信長とは違い致死量の毒を酒に混ぜて飲ませての殺害だ。

 酒を飲んだ信秀は直ぐに死んでしまった。

 後始末は土田御前の侍女達がしてしまい、証拠が残らなかった。

 信長や親族が来た時には既に冷たくなった信秀が居て、土田御前の説明に誰も疑う者はいなかったそうだ。


 林美作は主君殺しを二度も殺っていた。


 こいつは本当に下衆野郎だ!


 それだけではない。三男の秀隆様より下の子は自分の子だと言っている。

 これが本当なのかどうかは死んだ土田御前しか知らないかもしれない。

 ちなみに土田御前付きの侍女は林美作との不義の情報が漏れない様に既に殺してしまった。

 確認の取りようがない。


 これは益々市姫様に話せない話だ。


 そして林美作が今川方との繋がりには『太原 雪斎』の名前が上がった。

 あの黒衣の宰相かよ! まだ生きていたのか?


 最悪だ! 蝮に黒衣の宰相の両方が生きてるなんて!


 しかし、どちらももういい歳をしているので後数年したら……


 希望的観測はいかん。現実を直視しないと!


 それから林美作の話は裏切り者の名前を吐いた。



 その人物は『水野 忠次』



 水野忠次? 酒井さんじゃないの?



お読み頂きありがとうございます。


誤字、脱字、感想等有りましたらよろしくお願いいたします。


応援よろしくお願いします。


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