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藤吉郎になりて候う 〜異説太閤紀~  作者: 巻神様の下僕
第一章 尾張統一にて候う
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第二十六話 蜂須賀 小六

皆さんの応援のおかげを持ちまして、日刊ランキング二位になりました。

ありがとうございます。

そして、十万PVを越えました。

これほど早く到達するとは思っていませんでした。

本当にありがとうございます。


『蜂須賀 小六 正勝』


 豊臣秀吉の宿将の中の宿将。

 秀吉の活躍を影日向となって支え続けた男。

 秀長よりも先に亡くなったのだが、彼の死は秀吉にとってとても辛いものだったろう。

 彼が生きていれば秀吉の暴走を止める事が出来たかも知れない。

 秀吉にとって大きな存在だった人物だ。


 そして俺の目の前に居る蜂須賀小六は一言で言えば、色っぽい姉ちゃんだ。


 金の掛かるホステスを思い出させる。

 男が物を貢ぐホステスだ。

 会った当初は色気を振り撒いていたが、今は襟を正して(襟なんて無いけど)座っている。


「ふぅ、せっかちさんだねぇ。少しは話をしても良いと思うんだけど」


 右手に持ったキセルに火を付けて煙を吹かせる。

 足を組み素足を見せる。

 前言撤回。

 色気全開じゃないか!


「こっちも忙しい身なんでね。話は早い方が良いだろう」


 机に置いて有る水の入った瓶を持ち杯に注ぐ。

 それをグッと飲み干す。


 色気に負けるもんか。

 こっちのペースで話すんだ。


「そうだろうねぇ、急ぐよねぇ。戦が近いしねえ。そうだろう?」


 こいつ俺達の素性を知ってるのか?

 いや、知ってるだろうな。

 結構名前を言い合ってたからな。

 ここは誤魔化す必要もないか?

 小六を味方に付けたいが今じゃなくても良い。

 悪い印象を持たれるよりも良い印象で別れる方が良いだろう。


 焦ってチャンスを逃すより良いか。


「そうだとしたらどうなんだ。小六さん」


「うふ、隠さないんだねぇ。正直者はバカを見るよ?」


「隠す相手くらい選ぶさ。あんたは隠す必要の無い相手だと思ってる。あんな大金を賭け合った仲なんだ。そうだろう?」


「ふふふ、そうだね。確かにそうだねぇ」


 小六は笑みを浮かべキセルを吹かせる。

 そして、俺に詰め寄る。


「あんた達と組みたい」


「お、おう。 じゃない。小六は俺達の事をどこまで知ってる。それにどうして俺達と手を組みたがる」


 小六が詰め寄った時にその豊満な胸が机に乗せられた。

 思わず目が奪われ即座に返事をしてしまった。


「どこまで? そうだねぇ。あんたは名前しか知らないが、そこに寝ている男はちょっとした名の有る男さ。それにそこの嬢ちゃんも噂くらいは耳にしたことがある」


 マジか、利久の奴有名人だったのか?

 それに犬千代の事も知ったるのか。

 俺はまだここに来て日が浅いからしょうがないか。


「ここに来たのは軍資金集めだろ。堀田家から話が漏れてたよ。ククク」


 なんと? 情報源は堀田家からか。

 確かに情報統制なんて出来ないもんな。

 と言う事は、信行にも情報が?


「他に知ってるのは誰だ?」


「それを素直に教えると思う」


 思わない。

「思わない」


 また、声に出ていた。


「ふふふ。私(私達蜂須賀党)を買ってくれたら、教えてあげるよ」


 そんな事出来ない。

 そんな事してもし犬千代にバレたら………


 死ぬ。


「それは出来ない」


「それじゃ、しょうがないねぇ。あんた達(尾張の連中)と組めば商売の幅が広がると思ったんだけどねぇ」


 商売の幅?


「あんたら(美濃の連中)はどこでも商売が出来るんだろ? 俺達と組む必要なんて無いじゃないか?」


 小六はまたキセルを口元に持っていき煙を出す。


 なんだろねー。

 一つ一つの動作がさ、エロいんだよ。

 体に悪い。

 早く話を終わらせたい。


「こっちで商売するのも限界なのさ。あたしら目をつけられててね」


「目をつけられる。国主の斎藤山城か?」


「まぁ、あのじいさんもだけど」


 天下の蝮をじいさん呼ばわりかよ!


「ふぅ、私が原因なんだけどねぇ」


「あんたが原因?」


 そこで小六はぽつりぽつりと話出す。


 蜂須賀党の先代から党首の座を受け継いだまだ若い小六。

 うら若い彼女を狙って様々な男達が言い寄って来た。

 正確には小六を狙ってではなく蜂須賀党首の座を狙ってである。

 当時の彼女は二十歳前。

 しかし、彼女は言い寄って来る男どもをあしらい続けた。

 そればかりか蜂須賀党を西美濃有数の土豪にして見せた。


 だが、却ってそれが行けなかった。


 小六は勢力を伸ばす為に多少強引な手を使っていた。

 自身を使った誘惑である。

 自らを餌に相手を罠に嵌めてのし上がる。

 その方法は敵を作り続けた。


「直ぐに止めれば良かったんだけどねえ。簡単に引っ掛かった連中を見たらね。止められないのさ」


 そして遂には斎藤山城守が出てきた。


「仲裁だよ。私を妾(義龍の)にしてやるからと」


 実は今夜、斎藤山城守と合うはずだったと。


 何、斎藤山城守とニアミスする所だったのか?

 じゃあ、あの時光秀が現れたのは。


「でも、その前にあんた達の話を聞いたのさ」


 斎藤山城守と合う前に俺達と一勝負。


 勝つにしろ、負けるにしろ、時間を稼げる。


「大名と合う約束をすっぽかしたのか?」


「向こうとは顔を会わせるだけだから心配ない。お忍びだしね」


 お忍びでもヤバいだろう。


 そして俺達と勝負した。

 尾張のしかも堀田家とのパイプを持つ俺達と繋がりが出来れば尾張で商売が出来る。

 そう踏んだのだ。


「この歳で妾なんて冗談じゃない! それに私が居なくなったらこいつらがどうなるか?」


 小六は周りで寝ている男どもを見る。

 その目は優しさに満ちていた。

 我が子を見守る母の目に見えた。


「でも、斎藤山城守は仲裁してくれるんだろ。安全を保証してくれるはずだ」


「あんたは、あの蝮を信用出来るのかい」


 うーん、それを言われるとちょっと。


「蝮を信用出来ないなら、俺達も信用出来ないだろう?」


「あんたは信用出来るね。だってあんたは自分自身を賭けるほどのバカなんだから。あたしはあんたみたいなバカは見たこと無いよ」


 バカバカ言うな。


「だから、あんたにあたしを賭けたいのさ」


 身を乗り出して訴える小六。

 目は真っ直ぐに俺を見ている。


「なら、小六はバカなんだな? バカな俺に賭けるんだから」


 バカバカ言われたお返しだ。


 でも、返事は最初から決まっている。


「ああ、バカで良いよ。だから頼む」


 頭を机につける小六。


 ここまでされては受けない訳には行かない。

 返事も決まっているしな。


「ああ、分かった。お前(と蜂須賀党)は俺のもんだ」


「は、私があんたの物になるのかい?」


「ああ、そうだ。お前(と蜂須賀党)が欲しい」


「本当に、欲しいのかい?」


「何度も言わせるのか。なら、何度でも言ってやる。お前(と蜂須賀党)が欲しい!」


「あ、ああ、分かった。あ、あんたのもんで、い、良いよ」


 なぜか顔を赤らめる小六。

 そして小六は俺の顔を見ずにキセルをくわえる。


「け、契約、する。しょ、証文にか、書くかい」


「いや、今日はまだいい。尾張に帰ってから改めて迎えに行く」


「そ、そう。分かった。………待ってる」



 よし、軍資金に加えて蜂須賀党を手に入れた!


 しかし、斎藤山城守。

 ずいぶん嫌われてるな?

 小六個人に嫌われてるのか。


 それともその他大勢か?


 その辺はおいおい情報を集めるか。

 それは帰ってからだな。

 これでやっと尾張に帰れる。


 次はいよいよ、岩倉織田家と決戦だ!






 この後から、木下 藤吉は『人たらし』と呼ばれるようになる。


 有る筋からは『女たらし』とも呼ばれるようになる。


チョロイン一号誕生!


誤字、脱字、感想等有りましたらよろしくお願いいたします。


応援よろしくお願いします。


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[一言] チョロイン1号って事は、2号、3号と…w
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