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藤吉郎になりて候う 〜異説太閤紀~  作者: 巻神様の下僕
第十章 長島決戦

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第二百十九話 織田対武田 長島合戦

「撃て、撃て、お前ら。どんどん撃ち込め!」


 安宅水軍から借り受けたこの大船、通称『安宅船』

 図体がデカイわりには小回りが効く、それに安定してやがるからこの十匁種子島を存分に撃ち込める。


 藤吉の大将と伊賀で別れた俺達鈴木鉄砲隊はかつて知った土地に戻り今日の日に備えた。

 雑賀庄に戻り魚屋の大将に連絡を取ってこの船を用意して貰った。

 全ては大将の指示だ。


 安宅水軍秘蔵の船だけあって扱うのに苦労したが、何とか期日には間に合った。

 もう少し遅れていたら大変な事になっていただろう。

 しかし間に合った。

 目の前の邪魔な船を沈めて武田を追い払う。


 船戦も行けるのよ俺達はな!


「がははは。あんな小舟でこの船を止められるもんか!」


 この船にまとわり付く小早船に関船なんて目じゃねえ。

 十匁種子島の餌食だぜ。

 こんなに楽な戦はねえぜ。


「お前ら、佐治水軍が来る前に終わらせるぞ!」


「「「おおう!」」」



 長島近郊の海に志摩水軍の船が多数沈んでいく。

 船戦は木下家の大勝利となった。


 ※※※※※※


 津島からやって来た織田勢は立田から高須、揖斐川を越えて武田本陣の有る大鳥居に向かう。

 その手前で迎撃に現れた武田勢と勢いよくぶつかった。


「掛かれ、掛かれい!武田など何するものぞ!すわ、掛かれい!」


 織田市率いる織田勢と原虎胤と秋山虎繁率いる武田勢。


 織田勢一万二千 武田勢六千


 数に劣る武田勢は織田勢の猛攻を受けて一時混乱するも鬼美濃と言われる原虎胤の奮戦にて織田勢を押し返した。


「織田の弱兵などにこの鬼美濃が討ち取れるか! 押し返せい!押し返すのだ!」


 これを本陣で見ていた内藤昌豊は急ぎ増援を送る。

 その数三千。


「原殿と牛に増援を送る。急ぎ動けい。急げ、急げい。疾きこと風の如くぞ!」


 増援を受けた武田勢は織田勢とがっぷり四つに組み戦線は膠着した。


 そして増援を送り手薄になった武田本陣。

 そこに隠れ潜み近づく軍勢がいた。

 内藤昌豊はその軍勢に気づいていなかった。



 桑名から出て来た織田勢と武田本隊を率いた武田信虎は中江付近で睨み会う形になっていた。


「こちらから仕掛けてはなりません。期を待つのです」


 桑名織田勢を率いるのは滝川一益。

 その数七千。


「仕掛けてこんのか?ふむ。これは陽動か」


 武田信虎率いる武田勢一万は織田勢が動くのを待っていたが、掛かってこない織田勢を不信に思った信虎は一部兵を退こうとした。

 しかし、それを見ていた滝川は兵を前に進める。

 そしてこれを見た信虎は兵を退くのを止めて織田勢に襲い掛かろうとする。

 だが滝川は前に出てきた武田勢から再び距離を保つ。


「おのれ。ここに足止めする気か?」


「姫様の邪魔はさせません。付き合って貰いますよ」


 退くも進むも滝川の真骨頂であった。


 しかし信虎は織田勢の真の目的を察知する。


「我らを分断し、本陣を突くか!小癪な真似を。民部よ。ここは任せる」


「御屋形様。少数では危険です」


「二千を連れていく。残りで蹂躙せよ」


「は、お任せを」


 信虎は二千の兵を率いて本陣に向かう。


 そこには……


「そこに居ったか、羽柴筑前!いや、木下藤吉!」


 武田本陣に奇襲を仕掛けていた木下藤吉の部隊がいた。

 瓢箪を逆さにした馬印を使うのは羽柴筑前事木下藤吉しかいない。


「おっと、来やがったな。用はすんだ。退け、退けい!」


「逃がすな。追えい!」


 木下隊の数は五百弱。

 追うは信虎率いる武田家精鋭騎馬隊。


 木下隊は徒兵も含めているのでその足は遅い。

 見る見るその差を縮める武田勢。

 木下隊の向かう先は長良川。


「馬鹿め。袋の鼠よ。押し包みこれを殲滅せい!」


 長良川を背に木下隊は武田勢を迎え撃つ。


「よっしゃ、ここで迎え撃つぞ。気合い入れろ野郎共!」


「「「おう!」」」


 木下隊と武田信虎がここ長島でぶつかる。


「追い詰めたぞ木下藤吉。うん、貴様は?」



 戦線の膠着していた大鳥居本陣前では新たな動きがあった。

 織田勢の後方部隊から伝令がやって来た。


「申し上げます。後方から武田勢がやって来ます。その数約五千」


「五千だと!稲葉や氏家は何をしている」


 新たな武田の増援に狼狽える織田勢。

 しかしそんな状況でも織田市は笑っていた。


「ふふふ、たかが五千の援軍などに負けるものか。佐久間に伝令を!」


「は、ここに」


「三千を率いて足止めせよと伝えよ。よいな!」


「直ちに」


 伝令からの命を受けた佐久間信盛率いる三千の織田勢はすぐさま動き出す。


「我ら佐久間隊で止めるぞ!わしに続けい!」


「「「おおう!」」」


佐久間隊が動き出すのを見て織田市はさらに伝令を飛ばす。


「佐々、川尻、丹羽隊に伝令。我に続けと伝えよ!」


 伝令を受け取った佐々成政、川尻秀隆、丹羽長秀は各々の部隊に激を飛ばす。


「ここで大将首を上げるぞ!」


「我らの働きで勝ちを掴むぞ!」


「焦らず各々の働きに勤めなさい。さすれば勝てます」


 その激に兵も答える。


「「「おおう!」」」


 そして織田市自らは馬廻を率いて前線に向かう。


「行くぞ!狙うは武田信虎の首。ただ一つ!」


「「「おおう!」」」


「お待ちを姫様。なりませぬ!」


 池田恒興が止めるのを聞かず、織田市はただがむしゃらに前に突き進む。

 

 織田と武田の雌雄を決する戦い。


 長島合戦はまだ終わらない。


お読み頂きありがとうございます。


誤字、脱字、感想等有りましたらよろしくお願いいたします。


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