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第二百十話 藤吉郎亡くなりて候う?

第十章スタートです。

 ※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※

 現在、2chRead 対策で本作品「藤吉郎になりて候う」においては、

 部分的に本文と後書きを入れ替えると言う対策を実施しております。

 読者の方々には、大変ご迷惑をおかけいたしますが、ご理解の程よろしくお願いします。


 Copyright © 2017 巻神様の下僕 All Rights Reserved. 

 ※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※


永禄四年 九月某日 将軍義輝死す。


 その報は当時の日本全国に広がった。


 将軍殺しの犯人は尾張織田家の筆頭家老『木下 藤吉郎』


 当時、織田家は武田家と同盟関係に有った。

 そして武田家上洛の際に武田家より織田家に協力が求められ、木下藤吉郎は織田家を代表してこれに参加する。

 京に入った『武田 晴信』と木下藤吉郎は武衛屋敷を囲み将軍義輝を殺害。

 その際に木下藤吉郎は武田晴信をも殺害。


 その後、木下藤吉郎は武田家家臣『馬場 民部少輔 信春』の軍勢に襲われ、瀬田に遁走。

 そこで合戦に相成り、武田家は比叡山の協力の下、木下藤吉郎を追い詰めこの戦に勝利する。


 その際、木下藤吉郎の行方は分からず。


 ただ、なぜ木下藤吉郎は将軍義輝を殺害したのか?

 また、藤吉郎が武田晴信を殺害した明確な理由が分かっていない。

 一説には晴信が将軍義輝を殺害したのを憤った藤吉郎が晴信を殺害したとか。

 他には藤吉郎が織田家の密命により将軍義輝と晴信を殺害したとか。

 はたまた藤吉郎が天下を狙う野心家で二人を殺害したのか?


 諸説入り乱れるも真相は当時の人達には分かっていない。


 だが、事実として将軍義輝と武田晴信は永禄四年に死んでいる。


『木下藤吉郎研究家 木下正武『藤吉郎を語る』より抜粋』


 ※※※※※※


「正武さんの話はデタラメですよ」


「デタラメですか?」


「そう、デタラメです」


「ですが、将軍殺しの犯人は当時『木下藤吉郎』となってますよ?」


「それは正武さんが藤吉郎が嫌いだからで、あれの著者は全部藤吉郎下げの話ばかりじゃないですか。歴史的事実を述べれば、将軍殺しの犯人は藤吉郎じゃないんですよ。当時だって将軍殺しの犯人は藤吉郎じゃないのは皆知ってますよ。それが証拠に当時京に居た『近衛 前久』は将軍殺しの犯人は『武田 信虎』だって記録に残してるじゃないですか?」


「では藤吉郎は将軍殺しの犯人ではないと?」


「当然です。それはその後の歴史が証明してるじゃないですか」


「そうですか。では次の質問ですが、当時の木下藤吉郎の女性関係について……」


『木下藤吉郎研究家 織田信治 『藤吉郎の真実』インタビューより抜粋』


 ※※※※※※


 後の歴史にも色々な諸説を残した『将軍殺し事件』の真実は……


「叔父上。藤吉からはまだ連絡は有りませんか?」


「いや、まだ無いな。それより。なぁ、市よ。私にも石松丸を抱かせてくれぬか?」


「駄目です。叔父上が抱くと石松丸が泣いてしまいます」


「そ、そうなのか?石松丸」


 信光は恐る恐る石松丸に触れようとするが、市がそれを拒む。

 尾張はこの時、まだ平和であった。

 そしてその平和は一つの報で終わりを告げる。


 ドタドタと音を発てて誰かがやって来る。

 戸の前でその音が止むと、市と信光に声を掛ける。


「勝三郎です。至急の知らせを御持ちしました」


「何か有ったか?入るがよい勝三郎」


「は」


 勝三郎は静かに戸を開けると中に入る。


「失礼致します。藤吉郎より知らせが参りました」


「まぁ、どんな知らせですか?」


「あぶ」


 市は藤吉郎の知らせと聞き喜び。

 石松丸は母の喜びを感じているようだ。


「藤吉郎からは、援軍を乞う要請が来ております」


「援軍? 穏やかでは無いな。何が有ったのだ?」


「将軍が死に、武田大膳が亡くなったそうです。藤吉は京を追われて、こちらに向かっております」


 勝三郎の話で部屋の中に緊張が走った。


「将軍が死んだ。それに大膳も死んだのか?」


「は、そう聞いております」


「信じられぬ。藤吉は無事なのか?」


「『急ぎ兵を纏め、不破の関にて武田と合戦に及ぶべし』と」


 市は立ち上がった。


「勝三郎。直ぐに兵を集めよ。藤吉を助ける」


「は、直ぐに」


 勝三郎は部屋を立ち去り、部屋には市と石松丸、信光が残った。


「市」


「叔父上。私が行きます。叔父上は留守を」


「いや、それは…… 分かった」


 信光は反対しようとしたが、市の視線がそれを制した。


「あぶぶ。ばぁぶ」


「大丈夫よ。石松丸。藤吉は私が連れて帰るからね。おとなしく待ってなさいね」


「うぶぶ」


「おお、よしよし」


 しかし、織田家が兵を出す事は、無かった。


 織田家が兵を集める最中にも、京から新たな情報が流れてくる。

 その中に……


「藤吉が、死んだ?」


「それは真か?」


「京、瀬田において。武田と比叡山、それに近江国人衆に挟まれて戦死との報が……」


 瀬田での合戦の話が流れてきたのだ。

 市は呆然となっていた。

 信光は立ち上がり拳を握り混んでいた。


「うそ、嘘でしょ。勝三郎。嘘を申すな。藤吉が、藤吉が死ぬはず、ない。あの藤吉なのよ。死なないわよ。死ぬはずないのよ。笑って帰ってくるって。あの人は、絶対帰ってくるって。そう、言ったのよ。ねえ、勝三郎。冗談は止めて。嘘なんでしょ。ねえ、そうよね?」


「少なくとも、瀬田にて合戦に。そこで木下隊は、敗走したと、聞いております」


 勝三郎は片膝を付いて報告している。

 手は床につき、握り拳を作っている。

 そこからは血が見えた。

 そして、体は震えていた。


「ああ、あああ。いやあぁぁぁー!」


 市は頭を抱えて空に向けて絶叫した。


「落ち着け。落ち着け、市。まだ死んだと決まっていない。落ち着くのだ」


 信光は市を落ち着かせようと市を抱き締めるが市の慟哭は止まなかった。


 その日はどしゃ降りの雨が降っていた。


___________________


お読み頂きありがとうございます


誤字、脱字、感想等有りましたらよろしくお願いいたします。


応援よろしくお願いします。

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