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藤吉郎になりて候う 〜異説太閤紀~  作者: 巻神様の下僕
第五章 美濃征伐にて候う

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第百四話 次なる一手にて候う

 無事に小一と弥助さんを救出した?俺達は一旦清洲に戻る事にした。服部友貞も同行している。


 彼には俺の策を聞いてもらって実行してもらわないといけない。


 屋敷に着くと母様達が出迎えてくれた。


「おっ母。帰ったよ。小一も一緒だ!」


「小一!」「おっ母!」


 母様は小一を抱き締めて無事を確かめていた。


 なんか俺の時とは違うよな? 何でだ?


「とも~」


「弥助!」


 弥助さんがとも姉に抱き付こうと迫る。

 しかし、ドゴっと言う音と共に弥助さんは地面に倒れている。


「あんだけ危ないとこには行くなって言ったでしょ!聞いてなかったのかい。この唐変木!」


「そんな~」


 あ、なんかデジャブだな。


「おい、旦那?」


「なんだ左京進?」


「止めてくれ、その呼び名は。それよりいつもああなのか?」


「うん、まあ。いつも通りだな」


「おお、おっかねぇ~」


 どうやらうちの家の事を分かって貰えたようだ。

 大丈夫だ。母様達に突き出したりはしない。

 後で教えておくけどな?


 こうして家族の再会は無事に終わった。

 次は家の中で作戦会議だ。



 少し広めの部屋に集まる。

 部屋には俺と小一、小六と長姫、長康と友貞の六人が居る。

 ちょっと前は小六と小一の三人だったのに今は倍の六人か?

 そのうちもっと増えるんだろうな。


 六人で車座に座っている。

 俺の左から小六、長康、友貞、小一、長姫と座っている。

 そして長姫と友貞は面識があった。

 友貞が長姫を見た瞬間、元康と同じ反応をしていた。

 すなわち直立不動になって直ぐに土下座したのだ。


「じ、治部様。ご無事でしたか?」


「久しぶりね。左京進。元気だった?」


「は、この通りです。はい」


「そう。これからは藤吉の役に立ってね?」


「は、必ずや!」


 なんだろね、このやり取り?

 あ、小一が笑ってる。小一は何か知ってるのか?


 まあ、そんな事が有っての作戦会議だ。

 ちなみに友貞は長姫に戦々恐々なようで目を合わせようとはしていない。

 昔何か有ったんだろうな。

 何かは分からないけど。


 とりあえず地図を広げて現在の状況を確認する。

 進行は俺が担当する。慣れてるからな。


「まずは美濃の成果だ」


 美濃では西美濃国人衆の調略を行い。


『氏家直元』『不破光治』『坪内利定』を味方に付けた。

 これに『稲葉良通』が加わる予定だ。

 美濃の西南はほぼ織田家の物と言っていい。


「そして、伊勢長島」


 長島一向門徒の調略はほとんど進んでいない。

 しかし、俺の権限で既に土地は確保している。

 知多半島を支配していた水野家の土地だ。

 あそこは直轄地となって日が浅いし土地が余っている。

 幾らでも人を押し込める。


 そして、小一のファインプレイで目の前の『服部友貞』を味方に付けた。


 これは大きい。


 俺は早速友貞に長島で職に溢れている者や食うに困っている者を知多半島に送るよう指示する。


「その中に一向門徒が混じっても構わないのか?」


「ああ、構わない。むしろ好都合だ!」


 友貞の問いに自信満々で答える俺。

 一向宗の巣窟から離れる門徒なら歓迎出来る。

 ただし、僧侶は別だ。彼奴らは駄目、絶対駄目!


「左京進。藤吉の言う通りにすれば良いのよ。出来るでしょう?」


「は、お任せあれ」


 長姫の後押しに平服する友貞。


「引き続き長島に関しては小一と長康、それに友貞に任せる。指示は小一が出せ。いいな?」


「分かったよ。兄者」


「任された」「大船に乗ったつもりでいろよ。旦那」


 頼もしい返事をくれる三人。

 頼むぞ三人供。


「俺と小六、長姫は稲葉の説得だ」


「分かったよ」「わたくしに任せなさい」


 こっちもやる事は変わらない。

 けど、気になる事も有る。


「武田が動こうとしているらしい。三人は何か聞いてないか?武田以外でも何か知っていたら報告してくれ」


 道三は武田が攻め寄せると予測している。

 長姫も同意見だった。

 いつ頃動くのか、はっきりした情報がなくても構わない。

 とにかく何か見落としていないか調べないといけない。


「おいらからは何もないよ」


「大将。俺も無いな」


 小一と長康が答えた。

 後は友貞。

 そして、友貞は思案にくれた顔をした後にポツリと呟く。


「六角が確か……」


「六角、六角がどうした?」


 六角? この頃の六角は朝倉と浅井の対策と京の将軍の事で手一杯の筈だ。 ……筈だよな?


「六角が浅井の嫡男に嫁を出す話があった。そうだ。確かにそんな話が有った!」


「本当か? 小六。知っているか?」


「あたしは知らないよ」


 小六の知らない情報か?


「左京進。それは確かなの?」


「間違い有りません。確かな筋の情報です!」


 これだけはっきり言っているのだから本当なのだろう。

 しかし、六角と浅井が結びついても織田と斎藤の戦いには関係ないよな?


「そう、六角と浅井が結ぶのね」


 長姫が何かぶつぶつ言っている。

 何か引っ掛かるのか?


「他には無いのか?」


「松平が南三河を制圧しそうだ。これも確かだ」


 そうか。元康は順調に勢力を伸ばしているのか。

 今川は動かないのか?それとも動けないのか?


「それからこれは友野の旦那から聞いた話しなんだが……」


 友野? ああ、今川の御用聞き商人か?

 さっきから友貞が話してばっかりだな。

 認められようと必死なのかな?


「駿河から東は今年も凶作になるかもしれないと」


 また、凶作か!


 昨年と今年、連続して凶作なのか。

 しかし、まだ七月に入る前なのによく分かるな?


「するとまた米の値が上がるね。兄者」


「そうなるとまた東は戦が起きるな。大将」


 それならそれで良いかもしれない。

 向こうで潰し在ってくれるのなら好都合だ。


 もう意見は出尽くしたと思ったら長姫が持っていた扇子である地点を指した。


 朝倉?


 長姫の扇子は朝倉を指していた。


「朝倉と浅井は六角とぶつかるかもね?」


「それは六角と浅井が結ぶからか?」


 長姫は朝倉から浅井に扇子を動かす。


「浅井は元々独立志向が高いのよ。和尚が言っていたから間違いないわ。それを六角が押さえようとしているのよ。嫁を出すのはその為よ。」


 もしかして、あの戦いが一年早くなるのか?


「そして、その嫁を返せば合戦の口実になるわ。今なら斎藤家は六角を支援出来ない。朝倉はこれを見逃さないでしょうね?」


 やっぱりそうか!


「これは好機よ。六角と浅井と朝倉が争っている内に斎藤を叩くのよ!」


 あの『野良田の戦い』を利用するのか?


お読み頂きありがとうございます。


誤字、脱字、感想等有りましたらよろしくお願いいたします。


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