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藤吉郎になりて候う 〜異説太閤紀~  作者: 巻神様の下僕
第五章 美濃征伐にて候う
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第百二話 伊勢長島の一向門徒

今回は説明会?

 小一と弥助さんが捕まった!


 捕らえたのは『服部 左京進 友貞』だ。


 友貞は津島の南にある河内一帯を支配する国人衆であり、尾張の国人衆の中で独立を貫いている最後の人物だ。

 なぜ彼が独立していられるのか?

 それは彼が長島の一向宗と繋がりが有るからだ。


 長島の一向宗。


 言わずと知れた浄土真宗の門徒達だ。

 彼らは伊勢長島一帯に勢力を持っており無主の地である長島の実質的な支配者でもある。

 その勢威はそこらの大名よりも強い。

 なにせ門徒すべてが死兵となって戦うからだ。

 女、子供、老人すべてが兵なのだ。


 彼らは南無阿弥陀仏と唱えながら戦う。

 その姿は異様だ。


 一向宗の敵と戦って亡くなれば極楽に行けると門徒は本気で信じているのだ。

 いや、信じたいのかもしれない。

 この戦国の世に疲れはてた者達の唯一の救いが宗教なのだから。


 そんな門徒を戦わせる坊主達の方が大名よりもよっぽど酷いと思うのだけれど。

 しかし、それを感じさせない何かが有るのだろう?

 それは門徒にしか分からないのかもしれない。


 俺は無神論者だ。


 彼らのように目に見えない何かに頼るなんて出来ないし、したくない。

 助けてくれるのか分からない物を信じる気にはなれない。

 かといってすべて否定する訳ではない。


 それはさておき。


 並の大名よりも強い力を持っている一向宗と繋がりがある友貞を攻めると言う事は、一向宗を敵に回す可能性がある。

 その為に友貞は今もって独立して要られるのだ。


 その服部友貞が小一と弥助さんを捕まえている。

 その理由は、俺が小一に頼んだ『長島一向宗』の調略が原因だ。


 俺が考えた一向宗の取り込み方法はわりと簡単だ。


『一向宗の門徒に土地と仕事を与える』これだけだ。


 長島に居る一向宗門徒はそのほとんどが難民だ。

 故郷の土地で食えなくなった者達だ。

 その境遇は様々だが共通しているのは食べる物が無いと言う事。

 尾張にやって来た難民を受け入れた時彼らの多くは農民であった。

 彼らは故郷で土地を耕しその収穫を納めて生活してきた。


 しかし、長引く戦乱と凶作による飢饉が彼らの生活を成り立てなくしてしまった。


 税を納める事が出来ず荒廃していく土地での収穫も見込めず、彼らは故郷を離れて難民となった。

 難民の多くは噂を頼りに各地をさまよう。


 そして、桶狭間合戦で今川を破った織田家の尾張に難民が殺到したのだ。

 強い大名の庇護を受ける事で安定した生活を送る。

 これが尾張に難民がやって来た理由だ。

 それに尾張は日ノ本でも有数な石高を誇っている。

 民を受け入れる土壌が有るのだ。


 そして、俺は気づいた。


 長島に居る一向門徒も元は農民だ。

 彼らをこちらに引き込めないだろうかと思った。

 長島の人々は数が多く溢れている。

 仕事に付けない者が多いのだ。

 その為に治安が悪く問題にも成っている。

 その問題を解決する為に土地や仕事を与える。

 上手くすれば長島の人口を減らして、その脅威を弱める事が出来るはずだ。


 しかし、これを行うのは中々難しい。


 長島の中に潜入して噂をばらまき、人々を勧誘するのは大変だ。

 潜入工作は蜂須賀党がやってくれるが門徒を説得する事は出来ない。

 門徒を説得するには門徒の気持ちが分かる者で無くてはならない。


 そこで適任者を見つけた!


 それが小一であり弥助さんでもある。


 小一と弥助さんは元農夫だ。

 彼らの心情が分かるはずだ。

 何より小一は犬山でその力を見せてくれた。

 俺は危険な役目と知っていたが敢えて小一に任せて見ようと思った。


「小一。頼みがある」


「なんだい? 兄者」


 俺と小一は二人きりで話していた。


「お前に任せたい仕事が有る。でも危険な仕事だ。話を聞くか?」


「おいらにしか出来ない仕事なのかい?」


「ああ、お前にしか出来ない」


「分かった。話を聞くよ」


「じゃあ話すぞ。話を聞いて断っても良いからな?」


「分かったよ。兄者」


 そして俺はこの危険な仕事を小一に話した。


「………」


 話を聞いて考え込む小一。

 やっぱり小一には無理かな?

 俺でもこの話を断るだろう。

 かなり危険な仕事なのだ。


「兄者。おいらやるよ!」


「小一」


「兄者が美濃で命懸けの仕事をやるだろう。おいらも兄者に負けない仕事をやるよ!」


「断っても良いんだぞ。危ないんだぞ。死ぬかもしれないんだぞ?」


「そうならないように気を付けるよ。大丈夫。任してくれよ」


「小一」 「兄者」


 俺は小一を抱き締めた。


「蜂須賀党の腕利きを護衛に付けるからな。長康ならお前を守ってくれる」


「護衛なんて連れて行ったら門徒達を説得出来ないよ?」


「お前の安全の為だ!」


「分かったよ」


 こうして小一に伊勢長島の一向門徒切り崩しを頼んだのだ。

 弥助さんは小一一人だと心細いのでとも姉が無理やり付いていくように説得(殴った)したのだ。


 そして、その小一が服部友貞に捕まってしまった。

 どういう経緯があって捕まったのか分からないが、長康の話だといつも通り長島に潜入した後、落ち合う場所で待っていたのだが小一と弥助さんが姿を見せない。

 辺りを探して見たのだが見つからない。

 そこで聞き込みをしてみると小一と弥助さんが服部の部下に連れて行かれたのを見た奴がいた。


 その後長康は急いで服部の居る市江島に向かった。

 そこで小一達を見つけたが取り返す事が出来なかったのだ。

 正確には手が出せなかったようだ。


 下手に手を出せば長島の一向門徒を敵に回してしまう。


 そこで一旦戻って俺と小六に報告しに来たのだ。



「直ぐに助けに向かうぞ!」


「でもよ大将。どうするんだ?」


「任せろ!堂々と正面から乗り込んでやる!」


 俺に秘策有りだ!


 拐ったのが一向門徒ならかなり厳しかったが、今回は服部友貞だ。

 彼らは海賊も営む連中だ。

 そして、同時に商人でもある。

 商人ならば話が出来る。


 それにもしも小一に何か有ったら、その時は……


 俺の身内に手を出した事を後悔させてやる。



 俺は服部友貞の居る市江島に向かうのだった。


どうしても必要な説明会で全然話が進みませんでした。

次話進みますよ。


誤字、脱字、感想等有りましたらよろしくお願いいたします。


応援よろしくお願いします。

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