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親父が悪の組織を作りました。  作者: のいざ たつや
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第七話 サイフがない!?

益田ますだ 美音みおん。俺が通う高校のクラスメイトの一人だ。

熊寺を通じて何度か喋ったことがある。そこで、ふと熊寺が昨日言っていた美音ちゃんと言うのが

目の前の女の子であることに思い至る。何なんだいったい。

俺が何も言わないのに不安になったのか、益田がオロオロとしはじめる。


「少し、我慢してくれ」「えっ?」


俺の言葉にきょとんとした彼女の返事をまたずに、彼女を抱き上げて跳躍する。

校舎を乗り越え、自転車を置いてある学校の裏手へと着地した俺は、そこで彼女を地面に下ろす。

地面に下ろされた彼女は、しきりに「うぅ」とか「あぅぅ」とか、何やら呻いている。

まぁ、いきなりお姫様だっこで移動させられたらそりゃ、そうなるか。

しかし、彼女にはここからさらに驚いてもらうことになる。

俺は、『システム終了。装甲をパージ』と変身システムを停止させる。

俺を纏っていた機械装甲が光の粒子になって離れていく。

光の粒子がすべて消え、ヒーローのトラオムから、京極 信也の姿へと戻った俺を

目を見開いた彼女の視線が貫く。



「きょ、京極君。な、ななななな」

「落ち着け、てんぱるな、日本語を話せ」

手のひらを彼女に向けて、まずは落ち着くように彼女に言う。

彼女は胸に手をあて、大きく深呼吸をするといつもの感じで話始める。


「ふぅ、すみません。でも、驚きました。まさか、京極君がニューヒーローだなんて」

「そりゃ、俺もだ。益田が、魔女っ子してるとは思わなかった。」

「あぅ、いえ、あの格好は、私の趣味じゃないんですよ。本当ですよ。」

「あぁ、いや、うん。わかった、とりあえず、聞きたいことがある。」

「えっと、はい、何でしょう?」

「どうやってここに来た?」


その言葉に益田があたふたし始める。「えっ、あれっ?」と、きょろきょろと周りを見渡す。

俺は、その行動を見ながらガシガシと後頭部をかくとため息を一つ。


「益田、ここがどこだかわかるか?」

「あの、すいません。わかりません・・・」


存外めんどくさい事になったかも知れないと、俺はもう一度盛大にため息を吐くのだった。





「どうぞ。」「おっ、お邪魔します。」


自転車を走らせた道を益田を連れて家に戻った俺は、彼女を居間へと通す。

時刻14時を少し回った所だった。俺は、出しっぱなしになっている食器を流しへと運び。

彼女には、ソファへ座る様にすすめると、残量が残っているコーヒーメーカーに目を向ける。


「益田、お茶とコーヒーってどっちがいい?」

「い、いえ。お構いなく」


普段から大人しい彼女だが、今はいっそう縮こまっている。

俺は彼女に聞こえないようにため息を小さくすると、グラスに氷を入れてコーヒーを注ぐ。


ここに戻るまでに彼女がどういう経緯で、あの場所に現れたのかを聞ける範囲で聞き出した。

益田の家庭は、両親と益田の3人家族らしいのだが、父親は研究者で至る所に単身赴任しているらしい。

それで、今は母親と家に暮らしているのだが、昨日の放送を見て直感で仮面を付けた人物の1人が

自分の父親であると感じたそうだ。一様、それは当てになるのか聞いたが間違いないと返されてしまった。

それで、何とか父親を止める手立てがないかと色々考えてみたが結局何も思いつかず。

その日は、眠ったらしい。それで、今日になって父親の部屋を探せば何かあるかもしれないと

捜索したが、見つけたものは自分宛の包装がしてある箱で、その中身はマイクの形をしたストラップだった。

それ以外にめぼしい物が見つからなかった彼女は、リビングで昼食をとり。午後からどうしようかと

考えているタイミングで今日のあの放送に出くわした。

すると、ポケットに入れてあったストラップが突然光りだしたのだと。

そして、気づいた時には小学校の屋上に変身した状態でいた。

後は、俺と登場のタイミングが被ってしまって、今に至るって・・・

もしかしたら、益田は本当に世界に選ばれて正義の味方になったかも知れない。俺はそう考えていた。

俺の方は、自分で変身システムを作り、あの場所へは知っている場所だからたどり着けたのだ。

益田の様に、偶然変身するためのアイテムを見つけ、行った事もない場所に空間転移をしたわけじゃない。

正義の味方は、悪の居る場所へ必ず現れた。それが、どんな場所でもだ。

今回、『ドリーマードリーマー』は、自分達が行う行為と場所をあらかじめ教えて行動を起こしたが

仮にあれがまったくの勧告なしに行われた行動であったなら、俺があの場に姿を現すことが出来なかったろう。

だけど、益田ならそれが出来る。告知が無かろうと、知らない場所であろうと、あいつらが動けば

変身アイテムが察知して、強制転移を行い。益田はあいつらの前に立ち塞がるのだ。


「少し、羨ましいな・・・」「えっ?」

「なんでもねぇーよ。ほいっ。」


俺は、漏れてしまった言葉を誤魔化すように、益田の前にグラスとガムシロップやミルクを置いていく。

ちょうど2杯分残っていたコーヒーをアイスコーヒーにする事で消化した俺は、自分の方に口を付ける。

それを見た彼女も、「ありがとうございます。」と恐る恐るグラスを持って口を付ける。


「あっ、これブラックですよね? すっきりして飲みやすいです」

そう言って笑う彼女を見て、親父が見たら喜ぶだろうなと思いながら残りのコーヒーを飲み干すのだった。





一息ついた俺たちは、今後について話し合う。

益田も最初のときよりも幾分緊張が和らいだ様で、話し合いの途中に詰るような事もなかった。

現時点で、俺は益田にレギュラーヒーローである事は言っていない。

また、俺のほうから言うことはないだろう。彼女の中では、自分がレギュラーヒーローで

俺がニューヒーローだという風に思っているが、それを否定するのは、俺に利がない。

よって、彼女にはこのまま勘違いをしてらっとく事にした。

もし、彼女が途中でそれに気が付いたときは正直話そうとは思うが。

今、色々と話して見て。そんな事は、永劫訪れないのではと思っている。

今まで、クラスメイトとして、また熊寺が仲介者となって幾度か話す機会があった彼女だが。

どうも、彼女は人を疑うことをしないように思える。

良い意味で純情。悪い意味で騙されやすい。

休憩時間など、読書をしている所を頻繁に見ていたが、その時の集中した横顔は凛とした表情で

それに思わずドキリとする男子生徒もいたのではないかと思う。俺は違うぞ・・・

ただ、こうして話す時の表情や仕草を見ていると、

同級生というよりも背伸びしている年下を相手にしているような錯覚に陥る。

益田、お前このまま行くと絶対将来詐欺に会うぞと、益田が聞いたら怒り出しそうな事を思いながらも

会話はどんどん進んでいく。


「じゃあ、私が気がつかなかったら京極君が連絡をくれるんですね?」

「そうだな、その逆もしかりだ。」

「わかりました。じゃあ、私の携帯の番号とアドレスを・・・あれ?」


そう言って、ごそごそと動いたかと思うと、おもむろに立ち上がりスカートとブラウスを

ペタペタと触りだす。そして、目的のものが発見出来なかったのか彼女はソファに座り直すと

小さい身体を更に縮こませる。


「ケータイ、家にあるんでした・・・」


ずーんと、効果音が付きそうなほど落ち込む彼女を見てクスクス笑ってしまう。

俺は、机にあるメモに番号とアドレスを書いて彼女に渡す。


「ほい、帰るときに無くさないでくれよ。」

「うぅー、大丈夫です。」


メモを受け取った彼女は、笑った俺を少し睨みながら赤面する。

実際、強制転移で飛ばされて強制的に変身させられたのだ。

変身が解けたときに、サンダルがあっただけでもよかった方だろう。

裸足だったら、俺は彼女を背負うか何かしてここまで連れてこなければ成らなかったわけだし。

しかし、ケータイみたいな小物は持たせて貰えなかったみたいだな。

と、そこまで考えて俺はハッとする。


「おっ、おい、益田。お前、サイフって持ってるか?」


その言葉に彼女の顔が見る見る青くなる。

その反応だけで十分だよ益田。俺は、本日何度目になるか判らないため息を吐くのだった。





「京極君、重ね重ね本当にありがとうございます。」

深々と頭を下げる益田に俺は慌てる。ていうか、こんな所で頭を下げるなよ。目立つだろ。



サイフを持ってないことが判明した益田を連れて家を出た俺は、現在最寄の駅の切符売り場に来ていた。

住所を聞けば、俺たちが通っている高校の割と近くの場所だったが。生憎、俺は電車通学の身だ。

つまり、この駅から3駅上らないと帰れない。お金を持っていない同級生の女の子を歩かせるには

少々酷な距離だろう。熊寺なら、あるいは走って行けるかもしれないが・・・

そんな分けで、彼女をこの場まで案内して彼女にお金を貸したところなのだ。


「明日、必ずお返ししますので。」

「いや、いつでも良いよ。それに、これからは頻繁に会うだろうし」


そう言って、いつまでもペコペコとしている彼女の顔を上げさせると改札まで見送る。

改札を抜けて、もう一度大きく頭を下げる彼女に手をヒラヒラ振り。

彼女が階段を登って姿が見えなくなるまでその場に残っていた。

そして、彼女の姿が見えなくなるのを見届けると、踵を返して自宅への戻るのであった。




その日の夜、益田からの怒涛のメールラッシュでへとへとになるとは、この時の俺は思ってもいなかった。

メールで口調が変わる人って本当にいるんだと。まったく身にならない経験を積んだのだった。




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