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親父が悪の組織を作りました。  作者: のいざ たつや
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第五話 イレギュラーヒーロー

赤と黒を折々混ぜたサマードレス型のコスチュームを着たその女性は、

手に持つステッキを仮面の男達に向けながら。

しかし、驚愕の視線をこちらに向けて固まっていた。

そりゃ、そうだろう。俺自身、鏡を見れば彼女のように驚愕の表情を浮かべていたはずだ。

1つの悪の組織に対して、1つの正義の味方。この法則は、今まで崩れたことは無いはずだ。

もちろん、正義の味方が複数人だったことは今までに何度もあるが

それは、チームやコンビとして1つの纏まりを持っていた。

だが、今回のこのブッキングは非常にまずい。

何故なら、俺の方は機械装甲戦士メタルジャケットソルジャー。彼女の方は、魔法少女。

お互い正義の味方でスーパーヒーロー&スーパーヒロインである事に変わりは無いが

どう考えても1つのチームとして考えるのは不可能だろう。

つまり、第三者から見ればどちらかがイレギュラーであると言う事が決定した瞬間だった。


どうする、俺は頭をフル回転させながらどう出るのが得策か考える。

俺の目的を理解してもらって一緒に戦ってもらうのが一番理想だが

本物の正義の味方から見た、偽者イレギュラー正義ヒーローがどう映るかが問題だ。

正義を語る悪と断罪されてもしかたないのでは・・・

ゴクリッと生唾を飲み込む。ここの対応をミスれば一気にゲームオーバーになる。

バクバクと相手にも音が聞こえているのではというほどに、早く刻む鼓動。

俺は、とりあえず交渉の余地があるかだけでも確認しなければとその口を開く。

いや、開こうとしたタイミングで前方から空をつんざく大絶叫がこだました。


「すっばらしぃぃぃーーーーーー!!!」

突然叫んだのは仮面を被った白衣の男こと、俺の親父だった。


「見たまえ同志! 我等に宛がわれた正義の味方を! 何んという事だ!

機械装甲戦士メタルジャケットソルジャーと魔法少女のコンビだと!滾る! これは滾るぞぉぉぉぉ!」


親父と視線を交差させたもう一人の仮面の男もしきりに頷き手の親指を上げて親父に答えていた。

いやいやいや、どうしてそうなった。どうしてそうなった!

機械装甲戦士メタルジャケットソルジャーと魔法少女だぞ。

どう考えても接点なんかないだろ。何で親父達は勘違いをしたんだ。

俺は、前方に向けていた視線を再び隣の魔法少女へと戻す。

彼女と視線が交わる。瞬間、バイザーに一瞬ノイズが走る。

表示された文字は、認識障害。なるほど、これが話しに聞いた魔法少女が身バレしない理由か。



例外はあるものの、多くの魔法少女が変身前と変身後で変わらない身体の部位がある。

顔である。それは、本人を用意に特定出来る部位であるにも関わらず。

魔法少女は素顔のまま戦い。しかし、決して身元が特定されることがない。

それに一役かっているのが、今起きている現象だ。

魔法少女が常時発動させている魔法により、魔法少女を見た人物の脳への記録を阻害するのだ。



認識障害の表示が出てすぐにまたノイズが走る。今度は、何だといぶかしむ俺に突然女性の声が届く。

『お願いです。聞こえたら大きく頷いて下さい。それで、繋がるはずなんです。』

俺は、ハッとしてすぐに大きく頷く。

同時に、『よかった、ちゃんと届いてた』と、そして彼女は続けて喋る。

『頭の中に電話を思い浮かべて下さい。その電話で喋るイメージで会話が出来るはずです』

彼女の言葉に従い、脳内で会話するイメージを作り今度は此方から言葉を送る。


『すみません。反応が遅れました。あっちに気を取られてまして』

意思疎通をするための魔法だろう。彼女が魔法を使ってこちらにコンタクトを取ってくれて助かった。

話を聞いてくれる態度を取ってくれたのだ。俺の事情を話せば協力してもらえるはず。

俺は、すぐに事の次第を彼女に伝えるべく。先ほどと同じ要領で言葉を送ろうとした。

しかし、先に声を届けたのは彼女の方だった。

そして、彼女のその言葉で俺は言おうとした言葉を飲み込む事になる。


『お仕事の邪魔をしてすいません。でも私、あの人を止めなくちゃいけないんです。』


(冗談だろ・・・、この子もイレギュラーヒーローだってのか・・・)


本物だと思った彼女がイレギュラーな存在とわかってもう俺の頭は混乱状態だ。

親父達は、何故か俺たちをコンビだと勘違いして勝手に盛り上がってるし。

悪役を止めに来たのはイレギュラーヒーローの俺と彼女のみ。

どうすんだよ、何だよこれ。本物は来ないのか。いや、計画的には来ない方がいいのか。

俺がそんな事を考えていると続けて彼女から言葉が届く。


『でも、よかったです。カラーリングが同じ傾向で、お父さんも勘違いしてるみたいですし。』


それでかぁ! 彼女の言葉で疑問の一つが氷解する。

彼女のコスチュームは赤と黒を基調にしたサマードレス型で、俺のジャケットも赤黒メインだ。

3人以上のチームを組んでいたヒーロー達はそれぞれカラーが異なる同じ衣装を纏う事が多いが

コンビで活躍したヒーロー達の中には、カラーリングが同じで違う衣装を纏う者達も確かに存在した。

だから、方向性が一見かみ合っていない俺と彼女を同じカラーの衣装を纏ったコンビだと勘違いしたのだ。


ちょっと待て。彼女は今何て言った。


『すみません。確認しますが、先ほどお父さんと仰いましたか?』

『はい。お恥ずかしながら、先ほど叫ばれた方の後ろに立たれているのが私の父になります』


おい。じゃあ、俺の親父が同志と呼び。

悪の組織立ち上げ計画に巻き込んだ人物ってのはこの子の親父さんって事かよ。

バカ親父が、この子の親父さんを巻き込みさえしなければ。

彼女は魔法少女なんてしなくてよかったって事じゃないか。

やばい、むしろこっちがお恥ずかしいってレベルじゃない。

つまり、彼女と俺は同じ境遇なのだ。

親父達がバカやってるから、息子と娘が止めに来た。

その規模がちょっと大きくなってるだけ。

俺は、この構図がおかしくてたまらない。

さっきまで、混乱していたのが嘘みたいに思考が回る。

とりあえず、彼女は俺がイレギュラーだとは思っていない。

なら、悪いがここはこのまま騙されてもらおう。

考え方がとても正義の味方のそれじゃないが、俺イレギュラーだし。


『その言葉で大方あなたの事情は察しました。わかりました、一緒に戦いましょう。』

『あっ、ありがとうございます。』


あっ、これ結構心にグサっとくるわ。俺絶対、詐欺師とか無理だわ。なる気なんて無いけど。


『では、口上を挙げましょう。私が名乗りますので続けてヒーロー名をお願いします。』

『は、はい。わかりました。』


彼女の返事に頷くことで返し、未だ二人で盛り上がっている親父達に向き直る。

あの日、親父の書置きとに黒田さんが言っていた言葉で、俺は口上を決めていた。

そして、一歩足を踏み出して高らかに声を上げる。



「正義のヒーロー! 名を『トラオム』」

「お、同じく! 正義のヒロイン! 名を『マギレーヴ』」

「あんたらの夢を叶えに来たぜ! 悪の組織『ドリーマードリーマー』!」



正義のヒーロー、正義のヒロイン、悪の組織

それぞれの名前に『夢』を名乗らせてみました。

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