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親父が悪の組織を作りました。  作者: のいざ たつや
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第四話 ヒーローダブルブッキング?

体に纏わり付く不愉快な感触に思わず瞑っていたまぶたを開ける。

寝る前に風が入るようにとカーテンと窓を開けて寝たのがどうも失敗だったらしい。

すでに太陽は高々と上がっており。しかも、外の木々を見る限りほぼ無風。

枕元の時計を見れば午前11時を少し回ったところであった。

夏休みに入る前より4時間以上も遅い起床だったが、これも長期休みならではだろう。

ベッドから降りてから、グッと体を伸ばして少しでも体を目覚めさせる。

まずは、この不愉快な汗を流すことにして、俺は風呂場へと足を向けた。





シャワーを浴びたことで不愉快な汗と引き換えに頭もハッキリしたので

現在は居間で朝飯とも昼飯ともとれる食事を取っていた。本日は、焼いたトーストと目玉焼きである。

昨日、完成した変身システムの起動に成功させた俺は、その場で測定できる範囲の性能テストも

同時に実行していた。ファイルにあったデータよりも幾分パワーダウンしていたが

概ね問題ない範囲だったので特に弄る事もなくそのままにすることにした。

下手にプログラムを弄って余計にパワーダウンしたり、ましてや装着不可になる方が問題だからだ。

トーストにマーガリンを塗って口に運ぶ。トーストのもっちりとした食感を堪能しながらテレビの方へと

視線を向ける。正午になったのを知らせるように画面に長身と短針が12の上で交わる映像から

ニュース番組が始まる。男女のキャスターの挨拶で番組が始まるとその日の番組内のスケジュールが発表される。

その中に『特集!今年の海水浴場はここで決まり!』という文言を見つけて、ふと昨日食事をした

同級生の女の子との約束を思い出す。まぁ、約束を守る気は微塵も無いのだけど。

今年の夏は基本的に自宅待機になる。親父が作った組織の動向を追わないといけないので

気軽に外出が出来ないのが現状だからだ。

そんな事を考えながら用意した食事を完食して、準備しておいたコーヒーメーカーに溜まったコーヒーを

マグカップに注いでいく。『朝は一杯のうまいコーヒーから』と無類のコーヒー好きの親父が

いつも欠かさず飲んでいたいたために、俺にもその習慣が根付いてしまった。

俺は、少し薄めに入れたそれを口に運び次の瞬間。盛大にむせた。


『こんにちはだー諸君! お昼の時間をいかがお過ごしかな』


原因は、テレビ画面に突然ドアップで映った仮面の男のせいである。

コイツ、絶対一発ぶん殴ってやる。と心に誓いながら、俺はテレビに集中する。

昨日の今日で電波ジャックと言う事は、本格的に何か始める気なのだろう。


『さっそくだが、こんな物を用意した。じゃじゃん! 擬似ブラックホール爆弾でーす』


画面の親父がそういって手に持っているのはサッカーボールサイズの球状の物体。

その物体の中央にはデジタル時計のような物が付いており現在1:00という表示を出している。

いや、待て。コイツなんて言った。ブラックホールだと。


『この子は、起動をしてやるとカウントが進んで、ここの表示がゼロになると

擬似的なブラックホールをを生み出します。あっ、ブラックホールの原理を知らない方も

いると思うので簡単に説明すると。この爆弾が作動すると、この子を中心に内側へ

すっごい力で引っ張られます。引っ張り込まれた物はミンチになります。

あっ、宇宙に存在するって言われてるブラックホールが実際飲み込んだ物をミンチにするかは不明だよ

飲み込まれたら戻ってこれないからね。とまぁ、ブラックホールの話はどうでもいいや。

あと、効果の範囲は作動させたことがないのでわかりません。で、良いかな我が同志。』


画面にドアップで映っていた親父が身を引くと、その後ろに似たような仮面を付けた人物が立っていた。

昨日の放送で親父の後ろに居た人物である。そいつは、親父の言葉に頷いているようだった。


『それでは、起動させまーす』


そう言って親父は白衣の下から、手のひらサイズの機械を取り出すと爆弾に向ける。

その瞬間、爆弾に付いていたデジタル時計はチカチカと点滅を開始した。


『制限時間は1時間or60分or3600秒! 

コレを壊せばこの子は作動せずにガラクタになる様にしておいた。

それじゃ、待っているよ! 正義の味方!』 


バカ親父が、物騒なもの作りやがって。そんなものがお前の夢を実現させる為に本当に必要な物なのかよ。

俺は、食べ終わったままの食器もそのままに急いで自室に戻ると、携帯を握り締めて玄関を飛び出す。

自転車に跨り、猛然と走り出した俺は、目的地までの最短ルートを頭に浮かべる。

先ほど、親父の後ろに映っていた建物。パステルグリーンの外壁と屋上にひし形の給水タンク。

その建物は、4年前まで俺が通っていた第四小学校の校舎そのものだった。





自転車を駆って住宅街を走り抜ける。俺は、ふと妙な事に気が付いた。

すれ違う通行人や、洗濯物を干す主婦。その他、目に付くいろいろな人々。

みんな普通に過ごしている。先ほどの放送を見ていないのかと一瞬考えたが、すぐに違うことに気が付いた。

(何を考えてんだ。『当たり前』のことじゃないか。)

すぐそばで、悪の組織が大量殺戮兵器を使うと予告したから何だと言うのだ。

そんな事は、『正義の味方』がどうとでもしてくれる。

今まで、そうだったのだからこれからもそうなのだ。この世界には正義の味方が存在するのだから。

俺も、二日前までなら同じ境遇にあっても普通に家で宿題でもしていただろう。

その事に気づくと、何だかこの世界がすごく歪な物に思えて少しだけ寒気がした。




俺は、第四小学校を囲うフェンスの南側に自転車を置くとフェンスをよじ登って校舎裏へと足を進める。

この学校はグランドを中心に西南にL字方の校舎、北側に体育館があり。東側が正門というように建っている。

俺は、南側の校舎からの端からグランドを覗き見る。そこには二人組の仮面の男達が確認できた。

到着するまで約15分ほど使っただろうか、残り時間は45分を切っている。

深呼吸をして気分を落ち着かせる。ここまで来たのだ。全力でやってやろうではないか。

最後の心配は、ここに本物の正義の味方が来ることだが、現状まだ現れていないようだし。

このまま、二人の前に登場してさっさと決着をつけてしまおう。

俺は、携帯をポケットから取り出しシステムを起動させ、続けざまにキーワードを発して変身を完了させる。

無事変身出来たことを確認した俺は、最後にヘッドギアに付いているバイザーを目元に下ろす。


「システム起動。以降、すべての演算をオートへ」


俺の言葉に反応して下ろしたバイザー部分にOKの文字が浮かぶ。

俺は校舎から少し離れて上を見上げる。これくらいなら、行けるだろう。


「よし、正義の味方デビュー。派手に行きますか!」


俺は脚に力を込めて跳躍する。

十数メートルはあるであろう校舎を軽々と飛び越えて、眼下に仮面の二人組を捕らえると着地ポイントを見定める。

バイザーに、文字と数字の羅列が走り着地ポイントまでの到達時間をカウント。

カウントがゼロになる瞬間に膝と両手を使い落下の衝撃をすべて逃がす。

親父達が向いている正門側へ着地した俺は、ゆっくりと立ち上がり親父を指差す。


「待たせたな!」「待たせたわね!」




「「えっ?」」




俺の横、1メーター弱の距離に、マイク型のステッキを持った。

明らかに、戦うヒロインこと。魔法少女と思われる人物が立っていた。

あぁ、これは。やっちまった。

俺は、変身スーツの中で背中に冷や汗が流れるのを感じるのだった・・・


(本物の正義の味方きちゃったーーーーー!!!!)



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