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親父が悪の組織を作りました。  作者: のいざ たつや
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第二話  彼女の訪問

帰宅した俺は、書斎から例のファイルを持つと玄関を出て家の裏手に回る。

そこには、親父が自宅でもいろいろと出来るようにと建てた研究室兼作業場のガレージが存在する。

俺は、入り口にあるタッチパネルを起動させるとパスコードを打ち込み指紋認証を行なう。

この中には、人によって喉から手が出るほどほしいであろう物がゴロゴロしているのだ。

セキリティは万全である。つまり、今から俺が行なう作業も人知れず行なえる。

それに、ここには作業に必要な道具もあらかたそろっている。

まさに、理想の場所である。なんというか、正義の味方の秘密基地みたいでいいなと思ってしまった。

不覚である・・・


「さてと、やりますか」


そうして俺は、変身アイテムを作る作業に取り掛かった。

買って来た部品とファイルを交互に見やり、一つ一つの工程を片付けていく。

たまに、親父の助手としてこの場所で製品作成を手伝っていたので手をほぼ止めること無く動かしていく。

俺は、製作自体には結構時間がかかると思っていたが、この分だと思いのほか早く終わりそうだと

内心気が軽くなっていた。正義の味方が出現するのは、基本的に悪の組織が最初に行動を起こしたときだ。

つまり、俺が正義の味方となって行動するためには、親父が行動を起こした直後でないと行けない。

そのために、親父が行動を起こすより前に全ての準備を終わらせていないと行けなかった。

その最初の準備である変身システムの製作が、早く終われば早く終われるだけいい。

俺は、これが済んだら一つくらい武器も作っておかないといけないなと

変身アイテムを製作しながら次に製作しなければならない物を頭の中でリストアップしていった。





「出来たっ!」


俺は作業台の上に置かれたそれを見て、ガッツポーズをする。

時計に目をやると短針は6の数字を通過したところだった。

休憩も取らずに、約7時間ほどの作業だったわけか。

俺は、作業台に置いていたそれを持ち上げる。

俺が朝まで使っていた携帯は、親父の設計図と俺の手により新しく生まれ変わったのだ。


「へっ、へへへっ」


やばい、変な笑いが出る。つうか、本当に作っちゃったよ。

俺は、空いてる手で自分の頬を軽くマッサージする。

かなり作業に集中してたから、顔の筋肉も硬直してしまっているみたいだ。

「よしっ」小さく呟やいて、俺は鏡の前に移動する。

これから最終チェックを行なうのだ。

変身アイテムなのだから、変身できなければ失敗ということだ。

変身後の姿は、親父の設計図にあった物からは変更してある。

そりゃ、そうだろう。流石にそのままデザインを流用したら俺だと一発でバレてしまう。

それは俺の計画に支障をきたす事になるので、変身後の姿は俺のオリジナルだ。

世間の評価が気になるところだが、この際しかたがない。

もし、世間のセンスとずれていたら、その時は潔くダサイヒーローを演じよう。

なるべくやりたくないけど・・・



「では、やりま『ピピピッピピピッピピピッ』えー」

いざ携帯のギミックをいじろうとしたその時。携帯が着信音を壮大に鳴らす。

いや、まぁ、携帯の機能はそのまま残したからこういう事もあるよな。

俺は携帯のディスプレイに表示された名前を確認するとため息を吐いて通話ボタンを押す。


「何の用だ『ちょっとー、連絡するって言ったんだから何かしら反応しなさいよ!』

携帯からは、大音量の声。今日ホームセンターから帰るときに出くわした同級生のものだ。


『電話は繋がらないし、メールしてもメッセしても反応ないし。あの後、事故にでもあったのかと

思ったでしょ! それで心配になって、別れた十字路から信也君が曲がった方に進んで

あっちこっちウロウロして、たまたま歩いてたスーパーの袋持ったおばさんに「あっ、すいません

ここの近くに京極さんのお宅はありませんか?」なんて聞いて。しかも、すんなり教えて貰えたから

意気揚々とたどり着けば、信也君の自転車はあるのにチャイム押しても誰も出ないし。

これは、本当に何かあったんじゃと思って、次で電話に出なかったら110番に連絡にするって

決めた最後の電話で繋がるし、どうせだったら110番させなさいよ!』


えっ、何この子。怖いんだけど。いや、どちらかというとよくしゃべるイメージではあるけど。

言葉のキャッチボールがちゃんと出来る子だと思ってたからちょっと意外だな。

いや、まて、今の言葉の中に突っ込むべき所がなかったか・・・


「おい、ちょっと待て。今、おれん家に来てるのか?」

『だから、そうだって言ってんじゃーん。表札に京極って書いてあるし、信也君の自転車が置いてあるよ。

二階建ての一軒家で屋根にはソーラーパネルが付いてるね。』

「あぁ、間違いない。俺の家だ・・・」


電話口に待ってろと言って、通話を切るとのろのろと作業場を後にするのだった。





「いや、マジで何してんだよ・・・」


玄関のほうに回るとそこには軒下に座り込む女の子が一人。

いや、これご近所の噂の種になったりしないかな。何か哀愁漂ってんだけど。


「さっき、電話でもいったじゃない。心配したのよ私」


座ったままの状態からこちらを見上げてくる彼女の視線から顔を逃がしながら手を差し出す。

立ち位置の関係上、ノースリーブを着ている彼女を直視するのははばかれたためだ。

意図を汲み取った彼女は俺の手を握ると立ち上がる。


「もう、何で急に連絡取れなくなるかなぁ。結構、本気で心配したんだけど」


先ほどの電話での勢いが嘘みたいにトーンダウンした彼女の言葉にどう反応するべきだろうか

彼女、熊寺くまでら ほたるは、活発で明るく一度会えば友達を地で行く少女だ。

一度、お互いに面識を持った同級生は必ず下の名前で呼ぶようにしているらしく。

俺のクラスは全員例に漏れず彼女から苗字で呼ばれるやつはいない。

最初、その態度で男子生徒が何人か特攻を仕掛けて自爆したが、まぁ仕方ないことだろう。

高校生になって期待が膨らんだ所に同級生の中でもそれなりの美少女が

ニコニコ笑いながら名前呼びしてくれるのだ。勘違いする男のほうが多かったことだろう。

かく言う俺も最初の出会いが出会いであったなら特攻組の一人になっていた可能性もある。

それくらい、彼女は誰にでもやさしいのだ。だから、心配したと言うのは本当なのだろう。

なら、彼女視点で友人に映っている俺はまず謝るべきだろう。


「お~い、また人間の特権に浸ってる。ほんとに止めてよー」

「いや、すまん。それと、重ねて悪かった。宿題するのに集中したくて携帯の電源落としてたんだ」

「えっ、信也君って夏休みの宿題を初日に全部終わらせるって言うあの都市伝説の生徒なの!!」


おい待てや。そんな都市伝説ねぇよ。つうか、謝れ。義務教育の過程で9回あった夏休み

そのすべてで宿題をほぼ1日で終わらせてきた俺に謝れ。


「都市伝説かどうかは置いておいて、最初の内に片付けて残りの日数だらだらしたいだけだ」


その言葉に、「おぉー、本当にいるんだ。そんな人」とキラキラした目を向けられた。

何だろう、今なら殴っても許される気がしてきた・・・

と、そこで『くぅぅ』と奇妙な音が鳴る。発信源は目の前の彼女からだ。


「あっ、あはははっ。ゴメン、信也君この辺りでごはん食べれる所無い?」


彼女の言葉に、ふむと思案する。俺も、昼を抜いた状態で作業していた分けで

当然、腹が空いている。しかも、食事を作る気力が沸かないから外食するしかない。

そして、ここの近所で外食となると自然と最寄の駅前にあるファミレスになる。

それが、何を意味するかと言うと・・・


「なぁ、熊寺。俺は今から飯を食いにファミレスに行こうと思う」

「おっ、ちょうどいいじゃない。一緒に行こうよ」


まぁ、そうなるな。

俺は、少しばかり彼女に待ってもらって出かける準備をするために家の中に戻って行った。

そして、ふと気づく。

俺は、ガレージの方から家の前に行った。つまり玄関を通っていない。

家の中から出てこなかった俺を、彼女は不審に思わなかったのか・・・


「まぁ、熊寺だしな・・・」

俺は、その一言で済ますと財布と汗でべたべたするシャツだけ着替えて彼女の所に戻るのであった。






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