表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
親父が悪の組織を作りました。  作者: のいざ たつや
24/28

第二十三話 墓参り

みんなで海に行った日の次の日。つまりは決戦の前日である。

俺は、昨日の疲れが多少は残る体でバスに揺られていた。

今日は、どうしても行っておきたい場所があったのだ。


バスに揺られる事1時間余り。俺は目的地近くのバス停で降りると

手に明るい色の花束を持ち俺は目的地までゆっくりと歩いていく。

もう何回と通った道だった。最初の頃はここに通う意味もわからず。

ただ親父に手を引かれて付いていっていた。

いつ頃からか、ここに通う意味を知り。

俺は、気が向けば一人でもこの場所に通うようになっていた。

バス停から歩いて10分ほどで、木造作りの立派な門を構えたお寺が見える。

そこには、俺の母親『京極 叶希かのん』の眠る墓地がある。



境内を通ってお寺の裏側へと足を進める。

石畳の上を歩いて行くと、ちょっとした空間にでる。

右手側に行けば墓地群があるのだが、まずは左側にある水汲み場へと足を向ける。

そこで口と手を洗い。常備してあるバケツに水を汲む。

バケツに水を八部目まで入れた俺は、ひしゃくを取ってバケツと一緒にする。

右手に花束。左手にはバケツとひしゃく。肩にはショルダーバック。

もう何も持てないぜと心の中で呟くと俺は、墓地の方へと移動する。

墓地群の方へ着くと、そこには何十という墓石が鎮座している。

俺はその中から迷うことなくまっすぐに母親の墓石の前へ。

と、墓石の前まで来て俺は身体を硬直させる。供えてある花が綺麗過ぎるのだ。

良く見れば炎天下にも関わらず墓石には水をかけた後がまだ残っているし、

供えてある線香からは煙が上がっている。


「さっきまで居たな、くそ親父・・・」


俺は、その場でため息をしてバケツと花を置くと供えてある花を一旦下ろす。

下ろした花と俺が持ってきた花とを混ぜ合わせ、色採りに気を使い挿しなおしていく。

挿し終わった花を眺めて、バランスが悪くないかをチェックすしてから供え直す。

続いて汲んで来た水を花と墓石へとかけて行く。

バケツの水が無くなるまで続けた俺は、バックから線香とライターを取り出す。

まず、ライターで二本立ててあるロウソクの一本に火を点ける。

俺はライターを納めると、火のついたロウソクを取りもう一本へと火を移す。

ロウソクを元の位置に戻したら、線香をかざして線香にも火を移す。

線香に移った火を二、三度振って消した俺は、煙が上がっている線香の横のにそれを置いた。

最後に手を合わせて黙祷する。


目を瞑って色々な事を報告する。

高校に入って友人と呼べる人物が出来た事。

夏休みに入って親父がバカな事を始めた事

それは明日で決着がつく事。

久々に多人数で海へと行った事。

そして、気になる人がいる事。

すいません。最後のは忘れてください。



数分ほど黙祷した俺は、花の包みを纏める。水汲み場の近くにゴミ箱があるのでそこへ捨てるのだ。

俺は、ゴミを纏めて最後に墓の周りを確認する。

綺麗なものだった。まぁ、親父が墓参りに来て綺麗にしない訳がないのだが。

俺は、バックを肩にかけ直すとゴミとバケツを持って踵を返す。

そこで、目の前の燈篭に便箋サイズの紙が置いてあるのを見つける。

俺はまさかと思い。ゴミとバケツを一旦置くと、紙に手を伸ばす。

そこにはご丁寧に『最愛の息子へ』という言葉が書かれていた。

俺は、その場で読む事はせずに、バックへとそれをしまう。

手にバケツとゴミを再度持った俺は、後ろを振り返る。

「今度は、二人で来ます。」とだけ声に出して言うと。

今度こそ、母親の墓地を後にするのだった。





母親の墓参りから戻って昼食を軽く取った俺は、燈篭に置いてあった手紙をガレージの方で読んでいた。

手紙に書かれてあるのはシンプルな事だけ。

時間と場所の指定。俺は、それを机に放り出すとイスに深く座り直す。

視線を横に向けるとパソコンの中のトラオムと目が合った気がした。

たぶん、明日でお前ともお別れなのだろうと漠然と考える。何故かそんな気がした。

母親の考案した動くはずのないシステムが、動くという奇跡を起こしたのだ。

聞く人が聞けば、神秘的なエピソードに聞こえるかもしれないが。

俺の視線で物を語れば、天才ばか親父を一発殴って懲らしめて来いと母親が仕向けたように考えられた。

俺は、昨日自分で言った言葉をふと思い出す。


「親子喧嘩か・・」


俺は記憶をゆっくり辿って行く。

中学三年、中学二年、中学一年、小学六年、小学五年、小学四年、小学三年、小学二年、小学一年。


「あれ?」俺は呟きと共に愕然とする。少なくとも俺の遡れる記憶の中に

親父に歯向かってケンカになったような出来事がないのだ。

俺どんだけ従順だったんだよ。

いや、違うか。俺が従順だったのもあるかもしれないが親父も甘すぎるのだ俺に対して。

普通の家庭ってどうなんだろうと考える。親父と息子の親子喧嘩、それを止める母親。

何だか、今の俺達みたいだと可笑しくなる。

そして、よくよく思い出せば親父から殴られたのだって。

トラオムの旧バージョンが負けた時が、始めてのような気がして来た。


「あぁ、だから俺は恐怖したのか。」


あの時、生まれて初めて親父に殴られたのだ。そりゃあ、今までにない恐怖だったろうな。

何せなんだかんだ言って、俺は親父を尊敬しているし、親父は俺に激甘だ。そんな親父に殴られたのだ。

下手したらトラウマになっていてもおかしくない。

それが無いのは、お互いの正体は知っていても、お互いが役を演じていたからだろう。

正義の味方と悪の組織。

とんだ組合わせも合ったものだ、息子が正義の味方で親父が悪の組織。

あれだな、安っぽい小説が一本駆けそうだ。

タイトルは、そうだな。


「『親父が悪の組織を作りました』だな。」


まったく、今回のこの騒動が俺にとってどんな価値をもたらすのか、

今の俺には判断出来ないが、明日決着を付けたら答えがしっかりと出るような気がした。





『これが世界の選択だ。すまんな、息子よ。』

その言葉を最後にアルプトラオムの胸元にある宝石がいっそう輝きを増していく。

『親父っ!?』

次の瞬間、アルプトラオムの装甲がその胸元から爆発した。




「親父っ!?」

跳ね起きた俺は周りを見渡し、そこが自分の部屋であることを確認すると大きく息を吐く。

「なんつう夢を見てんだ俺は・・・」

時刻を見れば眠ってから一時間ほどしか経っていない。

俺は暴れる心臓を押さえてベッドに腰掛ける。

夢ってのは人が眠っている時に記憶を整理する過程で見るものだろ。

何であんな映像が脳裏を過ぎったんだ。

それに、アルプトラオムの胸元には、あんな宝石は無かったろ。


俺は、ベッドから立ち上がると机に置いてあるファイルを手に取る。

それは、俺が変身システムを組み上げるときに使った母親のファイルだ。

俺は最初、ここに書かれているスーツデザインの改良から入った。

理由は、親父にすぐに俺だとばれない為の小細工だった。

結局、デザインを変えても親父はすぐに見抜いてしまったが。

そして、ここにある変身システムの初期デザイン。

これこそまさに、アルプトラオムと名乗った親父の変身スーツそのものだった。

俺は、デザイン画の胸元に目を落とす。

やはりそこには、夢で見た白い装甲に赤々と輝く宝石は存在しない。

俺は更に目を瞑り、あの日ワイヤーをいとも容易く引きちぎった親父の映像を思い出す。

そして、やはりその時にも胸に宝石など無かったはずだと結論付けた。


「じゃあ、あの夢は何だ」


妙な胸騒ぎがした。このまま放って置くと、夢が現実になるようなそんな感じ。

どうする、何かした方がいいのか。日付はもう変わっている。

指定された時間まで残りは12時間もない。

それに、するにしても何をどうする。

俺が自問自答している間も、時は刻一刻と刻まれていく。

その時、思考に集中しすぎて俺は持っていたファイルを落してしまう。

そしてその拍子に、ファイリングされたプリントが盛大に床に散らばってしまった。

俺は舌打ちをして、散らばったプリントを拾い集めようとしてデジャブに襲われる。

前にも似たような事が、しかもその時俺はあの赤々しい宝石の原型を見た気がした。


「思い出せっ! 俺はあれを見たことがある!」


いつ? どこで? 高速で思考を巡らせる。そして、それに思い当たった。

それと同時に俺は部屋を飛び出して、親父の書斎に飛び込む。

いつ? 夏休みの初日だ。 どこで? 親父の書斎でだ!

俺は、手短なファイルから掴み取ると次々と捲って行く。

違うっ、違うっ、これじゃない。違うっ、次っ!

何冊ものファイルを開いては投げ飛ばして行く。

しかし、何十冊とめくったファイルにそれは載っていない。


「くそっ、どこだ。ここで見たはずだ。」


更に数冊のファイルを投げ飛ばす。

やはり俺の勘違いだったかと、探すのを止めようとした最後のファイル。

その最終ページにそれはあった。

夢で見た赤々と光る宝石。これはその原点。


超磁気断熱圧縮ちょうじきだんねつあっしゅくによる原子融合について・・・」


俺は、そこに書かれてある事を読み解いていく。

そしてこれが何なのかを理解した時、すぐに行動に移していた。

ファイル片手に部屋に戻ると、携帯をひっつかみ最近登録したばかりの番号へかける。

俺は携帯を耳に当てながら、ドタドタと階段を下りると、まっすぐに玄関に向かう。

ちょうど、玄関を飛び出した所で通話が繋がる。


「こんな時間にすみません。どうしても協力して欲しい事があるんです!」


電話口に叫びながら、俺はガレージのロックを外して中へと入る。

すぐさまパソコンの電源を立ち上げてから、電話口の相手に懇願する。


「俺一人じゃ、助けられない。俺に力を貸してください誠さん!」


電話の相手は、俺の知る限りでもう一人の天才科学者である益田誠さん。

そして元ドリーマードリーマーDr.MMその人だ。

昨日の敵は今日の友。親父を倒すのでは無く救うために、俺はその人に助けを求めたのだった。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ