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親父が悪の組織を作りました。  作者: のいざ たつや
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第二十一話 これぞ青春

「京極君、もしかして寝てます?」


目を瞑って昨日の事を思い出していたら頭上から声を掛けられる。

すでに声で誰だがわかるくらいには仲良くなってしまった少女に返事をする。


「寝てねぇよ。こんな場所で寝てたら焼け死んじまう。」

「ふふっ、そうですね。」


目を開けて身体を起こすと目の前にジュースの入ったコップが差し出される。

俺はそれを受け取ると一気に飲み干す。汗で水分を失った身体に一気に染み渡るような気がした。

そこで、益田に向き直ると口を開く。


「熊寺はどうした? 一緒に居ただろう?」

「蛍さんと私では体力が違いすぎますので先に一旦上がってきたんですよ。」


そういう彼女の髪は、確かに水に濡れていた。ひと泳ぎしてきたのは本当だろう。

俺は、ゆっくりと視線を海の方へと戻す。

現在、益田はパーカー等は羽織っておらず。青いホルターネックのビキニとその健康的な肌を隠すものはない。

まぁ、水着って隠す物じゃないんだけどね。でもね、だからと言って堂々と見つめるのも気が引ける。

俺としては、不自然にならないようにしたつもりだったが、彼女はそれに目ざとく気付く。


「ふふっ、見せるために着て来てるんですよ? 見て頂かないと困るんですけど。」

「ぐっ、お前、そんなキャラじゃなかっただろ。」

「はい、海は女の子を大胆にするらしいので乗ってみる事にしました。」

「あれだろ、どうせ熊寺辺りの差し金だろ。」

「むぅ、京極君って、結構、蛍さんの名前出しますよね。」

「・・・気のせいだろ」


最後の言葉に呆れ顔を作って返す。

まぁ、今までの生活で会話する女子が熊寺が断トツで多いっていうのはあるが

夏休みに入ってからを考えれば、それこそぶっちぎりで、益田の名前を出すことの方が多い。

って、俺は何を考えてるんだとガシガシと頭をかく。

暫らく無言で居ると、ごそごそと何かを着る音と共に少々近い位置に益田が座る。


「おいっ、近いって」

「むぅ、いいじゃないですか。私も日陰に入れてくださいよ。」


そう言われたら何も言い返すことも出来ずまた無言になる。

この海水浴場は例年人でごった返すと聞いていたのだが、今日は運がいいのか

それほど混雑はしていない。俺はそれなりの喧騒と海の音に耳を傾ける。

すると、隣の益田がポツリと呟いた。


「明後日の京極博士との決闘の事、考えてます?」


考えていないと言えば嘘になる。

むしろいつも頭の片隅にはその事が鎮座していた。

親父がトラオムが俺だと見抜いた謎の事もある。

俺が組み上げた変身システムは実は親父じゃなくて母親の手によって作られた物だと言う。

しかも、あのまま作ったらガラクタが生まれるだけとかどうなってるって話だ。

考え出したらきりが無い。でも、考えてしまう。

『考えるって事は、人に許された特権』

親父がよく口する言葉だ。

何時如何なる時でも思考を止めなければ、必ず道は開ける。

よく言うぜ、現在考えすぎで迷路の中に迷い込んでしまった。

また一つ、親父に文句を言ってやらねば。

それにしても。


「決闘とは物騒だな。おい。」

「でも決闘ですよね? ヒーロー物で言う悪の首領との一騎打ちですよ。」


まぁ、例えは間違っていないが、やはり物騒だ。

それにそんなカッコイイ物でもないだろう。

そう思っていると、ぴったりの言葉が頭に浮かんだ。


「いや、やっぱ決闘だと物騒だ。しいて言うなら、そうだな。」


俺は一度言葉を切って言葉を口にする。


親父ばか息子ばかの親子喧嘩だな。」


そう言って、益田の方へと顔を向ける。

そこには、きょとんとして、次の瞬間大笑いする益田の笑顔。

それにつられるように俺も笑い出すのだった。





「もどったよー」


その声の方へと視線を向けると、残りの3人が一緒に戻ってきた。

約一名死に掛けてるけどな。


「信也君、僕はもうダメだ。」「ヒーロー体力がなさすぎですよぉ」


何が合ったかは判らないが、英雄は完全にグロッキーだった。

何があったんだと、熊寺に視線を向けると乾いた笑いしか返って来なかった。

知らない方がいいと言う事か。

俺は、砂浜に両手両膝を付けて息も絶え絶えな友人に歩み寄ると笑顔を向ける。


「英雄、そこの日陰で横になってしっかり休むといい。」

「信也君、君ってやつは。」


俺の言葉に感動したのか顔を上げてこちらを見上げる英雄。

俺は大きく頷く。


「んじゃ、荷物番よろしく。俺も泳いでくるわ。」


そう言ってTシャツを脱ぎ捨てると海へと向かって猛然とダッシュしてく俺。

後方から、「あっ、私も行きます。」という益田の声と

「いや、うん判ってたけどね。」と言う英雄の声が聞こえていたが、立ち止まる理由にもならず。

俺は、パシャパシャと脛まで海水に浸れる所まで来ると、一気に前方へとダイブした。

全身を包む海水が気持ちいい。

ひんやりとした心地よさにしばし身体を預けてから、ゆっくり浮上する。


「ぷはっ、やべぇな。これは気持ちいいわ。」

「ちょっと、置いて行かないで下さいよ。」


益田の声に振り向くと大きな浮き輪から上半身を出した彼女がいた。

あれ、もしかして泳げない子なんだろうか。

ちゃぷちゃぷとバタ足で推進力を得てこちらに向かって来る益田を見ながら。

ふむっと思案顔を作る。先ほど、からかわれた仕返しをするのも悪くないかと。

スイーと彼女の方へと泳いで行く。


「なぁ、益田。お前泳げなかったりする?」

「浮き輪を揺らしたりしたら、後で地獄を見せますよ。」


先手を取られてしまった。俺は、仕方なく海の中で浮き輪を持ち上げようと待機していた腕を下ろす。

昨日の誠さんの惨状を見るに、一線を越えるジョークはジョークにならないので気を付けなければと

俺は彼女の傍でゆらゆらと波に揺られる。


「なぁ、益田。楽しいな。」

「えっ?どうしたんですか急に?」


不意に出た言葉に益田の顔が疑問の表情を作る。

俺は、それが少し可笑しくて先ほど大笑いしていたにも関わらず。またも、クスクスと笑う。

対して益田は、バカにされたとでも思ったのか、表情がどんどん険しくなる。


「もう、何なんですか。ちゃんと理由を教えてください。」


俺はこれ以上は、まずいかなと思って彼女の持つ浮き輪へと腕を乗せる。

大きい浮き輪だったので益田が掴んでいる所とは反対側を掴むとそれなりに距離が出来る。

ちょうど、彼女はこちらを強引に振り向くような形になり、こちらを完全に視界には納めれないだろう。

先ほど彼女が言っていた言葉を心の中で反芻する。

『海は女の子を大胆にするらしいですよ』それなら、男だって一緒だろう。

いつもと違う刺激に脳が高揚してるだけだ。と思いながらも、俺は彼女の背中に言葉をかける。


「美音。今年の夏休みは、今日まで本当に楽しかった。それから、これからもよろしく。」


俺の言葉にこちらを見ようともがいていた益田の動きが止まる。

今度は、逆にこちらに顔を見られないように浮き輪に顔を埋める。

俺は益田のそんな行動に微笑むと、別の熱さで真っ赤になっているであろう顔を冷やすために。

一度盛大に海へと潜るのだった。



その後、終始無言で波に揺られ続けた俺達は、どちらともなしにみんなの所へと戻る為に泳ぎだしたのだった。





パラソルの所に戻ると、あら不思議そこには日陰に寝そべっている英雄しかいなかった。


「二人はどうした英雄?」

「無粋だよ、信也君」


その言葉に後ろを付いて来ていた益田は、ぽんと手を叩くと「私も少し離れます。」と言って

浮き輪をパラソルの下に置くとそそくさと離れていった。


「女子連中の秘密の密会か何かか?」

「それこそ無粋だよ、信也君」


同じ言葉を吐いた友人に怪訝な顔をしながら、俺は隣に腰を下ろす。

まぁ、三人とも居ないなら丁度いいと、着た時には話せなかった事を語るために俺は口を開く。


「益田のやつには話したよ。高校に入るまでの事。」

「そうかい。あぁ、それでか益田さんにだけ妙に距離感が近いのは」


英雄の返しに顔が引きつったのがわかる。

えっ、俺そんなに益田とくっついてる?ウソだよね?

俺の顔を見て考えてる事を見抜いたのかクスクス笑うと英雄が続ける。


「まぁ、いいんじゃないかな。益田さんも満更でもなさそうだったし。」


せっかく引いた顔の熱が戻ってきたみたいだった。

俺は右手で顔を覆うようにするとため息を吐く。

英雄にそう言われると、変に意識してしまう。

俺と英雄はお互い秘密を打ち明けた仲だ。俺は高校に入るまでの真実を。

英雄は、自身の持つ変な力とその代償を。

俺は、英雄の持つ力の事を知っている。

だから、英雄の口から益田は嫌がってないと聞かされた事が

たぶん、きっと、ちょっとだけ。うれ・・・嫌じゃなかった。


「君も大概、素直じゃないよね。」

「うるせぇよ。つか、そんな事までわかるのお前?」


その言葉に、「色が一瞬変わったよ」と告げられた。

まじで隠し事出来ないなこれ。俺はこのまま英雄に話しさせ続けるのは得策じゃないとふみ。

こちらから、英雄に質問を投げかける。出来れば少しは慌てる友人を見たいと思って。


「ところで、英雄は甲田とは付き合ってないのか?」

「残念ながら、まだ友人として過ごしてるよ」

「それこそ距離が近くねぇか? 友人って言っても男と女だろ?」


俺はそう言いつつ今日水着に着替えた彼女達が、この場所に来た時の事を思い出していた。

一目散に走ってきて、英雄に抱きついた甲田。

あれで、『友人』止まりは如何なものなのか。


「彼女は仲良くなった人に対するパーソナルスペースが大きいんだよ。」


不思議系ちみっこ女子は、懐けば懐いた分だけ近寄ってくる犬みたいなヤツだったらしい。

しかし、益田がこの前「あの二人はそんな関係じゃないと思う」と言っていたが。

確かにその通りのようだ。現在、明らかに甲田は英雄に対して男女のそれを持ってない。

つまり、甲田がそういう風に行動するか、何かしら想っている事があれば。

益田もあんなセリフは言わなかっただろう。男心がわからん女共め。


「んで、告白する予定は?」

「いや、実はもう好きだとは言ってあるんだよね」

「ぶっ!!」


友人の衝撃的な告白に思わず噴出す。


「おまっ!? えっ、それで付き合ってないって、まさか。」

「あぁ、いや、うん。 彼女らしい返答だったよ。」

「そ、そうか、まぁ、しかたないな。」

「うん。彼女も好きだって言ってくれたよ」


時間が止まる。

英雄は甲田が好き。甲田は英雄が好き。しかも想いは伝えてある。

なのに二人は付き合っていない。ホワイ?


「はっ!?どういう事だ。分けが判らんぞ!?」


俺は、英雄の肩を掴むと前後に激しく揺さぶる。


「ちょっ、信也君。落ち着いて、落ち着いて。」


しばらく問答を繰り返し。英雄の肩から俺がようやく手を離すとコホコホと咳をして此方を睨む友人。

俺は作り笑顔でぺこぺこと謝罪をすると、事の顛末を英雄から聞きだす。


「んで、どういうこった?」

「早い話が、僕の告白は告白だと思われなった。」

「逆にえぐいな、それ。」

「まったくだよ。」


今度は「愛してる」って言おうと思うと力説している友人をすごいなと思っていると。

益田の笑顔がちらりと脳裏を横切った事にはっとして。俺は顔をぶんぶん振ると。

英雄の言葉に耳を傾けメンズトークで盛り上がるのだった。




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