第十八話 決着!?
テレパシーで会話するのを忘れ大声で叫ぶレーヴに何事だと言わんばかりに仮面の二人もレーヴを見る。
『おい、変に勘ぐられるだろ。』
『すいません。いやいや、歌うんですか? この状況で!?』
『それもお約束だと思うが、まぁ聞け。』
俺は、先ほど組みあがった勝利の方程式を益田に話していく。
その間、彼女は口を挟むことなく俺の言葉を聴いてくれた。
そしてをすべて話し終わった俺は再度益田に言うのだった。
『だから歌え。お前なら出来る。』
『うまく行くでしょうか? 話された理論の原理も何かよくわかっていないのですけど。』
実はそこについては心配していない。
何故なら、益田の歌を聞いて思い付いたからなマギインパクトは。
つまり、俺たちがこれから行なう攻撃は、レーヴによる極低周の超音波攻撃だ。
レーヴの音を操る力ならきっと出来る。
それは昨日立てた作戦をプログラム上で検証した際に可能だった事からも明白。
だから、後は益田の想像力しだいだ。
『どうせ、他にやる事が無いんだ。腹括れ。』
『うっ、わかりました。私、歌います!』
『よし、うまくいったら。明日の海水浴で何か奢ってやるよ!』
それでテレパシーでのやり取りを一旦止めて。
こちらに振り下ろされる巨大マネキンからの攻撃を跳躍して避ける。
その巨体よりも高く飛び上がった俺は、今度は急降下してマネキンの頭部を狙う。
高く飛び上がった俺を合図にしたかのようにレーヴの方から歌声があたりに響く。
それは奇しくも昨日聞かせてくれた歌だった。
『歌いながら聞け! 砂をさらう風をイメージすればいい!』
<スラスター点火>
空気を切り裂いてマネキンへと向かう。
そして勢いを付けたままのタックルをマネキンの頭部に炸裂させる。
グラッとその巨体が揺れる。すべての衝撃を吸収仕切れなかったマネキンがたたらを踏む。
だが、すぐさまマネキンの両腕が俺を捕まえる為に動き出す。
その瞬間にちらりを彼女の方を見れば彼女の周りを覆っていた音の壁は消失していた。
やはり歌を響かせるために壁をとっぱらったか。
俺はそれらを視界に納めると戦闘システムを切り替えた。
<システムをセミオートからオートモードへ。レーヴの方へは行かせるな!>
瞬時にバイザーにOKの表示が出ると、迫りくる両腕の到達時間のカウントと
その方向などがバイザーにどんどん表示されていく。
頭部を蹴り飛ばして宙に舞う。直後、俺を捕まえるために伸ばされたマネキンの腕が空を切る。
空中にいる俺を捕まえようと、もう片方の腕が伸びる。
バイザーにはスラスター点火の表示。しかも、発射口は上で。
グンッと体が急加速して地面に落ちる。しかし、体全体を使って衝撃を逃がした俺はすぐに立ち上がる。
うまい事避けてるように見えるが、ジャケットの中の俺の気分は最悪だ。
戦闘行為をすべてシステムに一任してトラオムのスーツを動かしているのだが。
いかんせん、これが中々に無茶な動きを強要してくる。
一様すべての動きは計算上可能な事しかしない。
そして最悪な気分に浸かれる一番の理由は、その自由の無さである。
俺が攻撃を視認して右に避けようとしても、「そっちじゃねぇよ」と言わんばかりに
システムに強制的に左側に避けさせられる。
舌打ちしつつもバイザーには様々な数字の羅列が表示されて順次計算されていく。
踏み出される巨大な足による踏みつけ攻撃を前方に飛んで回避。マネキンの背面を取るとすぐさま跳躍。
背中を蹴飛ばしその場で宙返り。その眼下をマネキンの裏拳が通過する。
良い様に例えれば人に纏わり付く蝶の様に。
悪く言えば、うっとうしく人様の周りを飛び交うハエのように。
付かず離れず巨大なマネキンの周りを飛び交う。
どれくらいでマネキンの分子分解が起こるかわからない以上。
こっからは、我慢比べだ。
◆
そしてついに待ちわびたその時がやってくる。
宙に跳び上がった俺に向けて放たれたマネキンの腕を身体を捻る事でかわし。
置き土産とばかりに拳を叩きつけて地面に着地する。
着地した俺はすぐさま右手を見る。感触が変わっていたのだ。
続いて上を見上げれば。そこには毛細状の亀裂が体中に走り始めたマネキンの姿。
『いいぞ、益田。もう一息だ頑張れ!』
俺の言葉に呼応するように、レーヴの歌がいっそう力強く歌い上げられる。
巨大マネキンがそれを止めようとレーベに向かって腕を持ち上げる。
「させるか!」
<システムをセミオートへ切り替え。続けてアンカー射出!>
マネキンの行動を見て、すぐさまモードを切り替えた俺は、振り上げられたその腕へとアンカーを巻きつける。
俺とマネキンの力比べも長くは持たず。
次の瞬間マネキンの左足が、ついに限界を迎える。
その巨体を支えきれなくなったのか、砂の固まりへとその姿を変えた。
そこからは一気だった。
バランスを崩したマネキンをレーヴの方へ倒れないように、力一杯逆方向へと引っ張ると、
その巨体の重心が傾いたところで、ワイヤーに拘束されていた腕がボロボロと崩れ落ちる。
重心を崩し、もはや体勢を立て直せないまま。
地面に激突した巨大マネキンは、その姿を巨大な砂の塊にへと変えていったのだった。
「けほっ、けほっ、やりましたよ。」
歌い終わった彼女は咳き込み喉を擦りながらこちらに満面の笑みを向ける。
俺はそんな彼女の元へと走り言葉をかける。
「あぁ、大成功だ。喉は大丈夫か? この後、もうひと頑張りあるが?」
「はい、大丈夫ですよ」
彼女の言葉に頷く。そう、彼女にはこの後、もうひと頑張りしてもらわないといけない。
親父達を無傷で拘束するための作戦の要は彼女なのだから。
俺たちは親父達に向き直りその準備をする。
「ねっ、ねっ、いい歌声でしょ!」
「うむ。素晴らしい歌声だった。」
MMとKKが頷きあっている。
というか、MMこと益田の親父さんはもう完全に素に戻ってるだろあれ。
自分の娘を自慢する父親のそれだぞ。今の発言。
盛り上がっていた二人は、こちらの視線に気付いたのか軽く咳払いをする。
「おほんっ、うむ良い物を聞かせてもらった。」
「それでは我々は、満足したので帰らせてもらうよ!」
二人が各々そう喋ると、空中に浮かんでいたカーテン発生装置が効力を失い落ちてくる。
そして、いつもの様に去ろうとする二人に俺は叫ぶ。
「そうは問屋が降ろさないぜ!」
瞬間俺の足元が爆発。
スラスターを使って一気に親父達との距離を縮めるべく飛び出す。
しかし、それでも間に合わないと踏んだのか親父達は手をヒラヒラ振り焦る様子もない。
俺は、その態度にバイザー越しの表情がほくそ笑むのが判った。
「--------!」
刹那、後方のレーヴから甲高い声が放たれる。
それは高速で移動する俺を追い越し、音速をもって親父達の元へ。
「ぐっ」「ぬおっ」
突然頭を抑えながらその場に崩れ落ちる親父達。
成功だ。俺達はレーヴの音に指向性を持たせると言う能力を使い。
親父たちの三半規管に直接微量の音波をぶつけたのだ。
三半規管の中にある液体を音波の振動で強制的に動かされたら。
流石にまともに立っていられないだろう。
俺は、バランスを崩した親父達二人に接近すると
即座にアンカーで二人を拘束する。
「年貢の納め時だぜ。クソ親父。」
二人の背後に立った俺は、静かに勝利宣言をするのだった。
◆
「むぅっ」「ふむっ」
あぐらを掻いて座るオヤジーズ。そこへレーヴがしゃがみ込み、KKとMMの仮面を取り外す。
出たきた顔は、一人は良く知っている顔で、もう一人は始めましてだった。
俺は、バイザーを押し上げてKK。もとい、京極恭太郎の目前に立つ。
「好き勝手やってくれたなクソ親父」
「わははっ、どうだ楽しかったか!?」
盛大に笑う親父にカチンときて、右手を握り込むと振りかぶる。
「だっ、ダメですよ。京極君!」
しかし、振りかぶったところでレーヴに止められる。
「放せレーヴ! こいつはやっぱり一発殴らないとダメだ!」
しばらく俺と益田の問答が続いたが、時間を無駄に浪費するわけにも行かず。
結局、俺のほうが折れることで話を進める。まぁ、家に連れて帰ってからでも殴れるしな。
そんな俺の思考を読み取ったのかレーヴ姿の益田から鋭い視線が突き刺さる。
俺は手をヒラヒラさせると親父達に向かい合った。
色々と聞きたいことが山済みなのだ。全部、しゃべってもらわなければ。
「でっ、何でクソ親父はこんな事してんだよ。」
「それを言うなら、お前じゃろ信也。何で変身スーツ何か作った。と言うより、どうやって作った。」
「お前を止める為に決まってんだろうが! 製作自体は簡単だった。親父の設計図があったからな。」
「むっ、私のじゃと?」
そう言って考え込むように眉間にしわをよせる親父。
となりでは、益田が親父さんに似たような事を聞いていた。
「もう、お父さん。何でこんな事してるんですか!」
「ゴメンねぇ、美音ちゃん。でもね、僕は思ったんだよ娘の夢を叶えれずして何が父親かと!」
「バカげてます! 他の人も巻き込んで!」
「本当にゴメンねぇ。でもね、お父さんまったく後悔してないよ!娘の魔法少女姿と綺麗な歌声が聴けたしね。」
「もうっ! お父さん! 反省して下さい。」
やはりと言うか何んというか。益田の親父さんは益田の予想通り。
益田を悪と戦うヒロインにしてあげたかったらしい。
それと益田から聞いていた通り、相当な親ばかみたいだ。
そのやり取りを微笑ましく見守っているとふいに親父が声をかけてくる。
「信也、お前に言わないといけない事がある。」
「あん? 何だよ謝罪ならいくらでも聞いてやるぞ」
「すまんな。まだ、終われそうにないわい。」
真剣な表情でそう言い切った親父はおもむろに立ち上がる。
その行動に少し離れた場所にいた益田と益田の親父さんも驚く。
「えっ、京極博士!?」「京極君のお父さん!?」
親父は二人ににこっと笑うと俺に向き直り神妙な顔を作る。
「本当にすまんな信也。 まさかここまで巻き込むことになるとは思わなかった。」
「おいっ、表情と行動と言動がまるっきりバラバラじゃねぇか。」
俺の悪態に親父がため息を吐き。「違いないな」と一言もらす。
その瞬間、後ろ手に拘束されていた親父の腕から光が迸る。
正確には、腕に付けているリングからだ。
この光の奔流は何度も見た記憶がある。
そう、それは俺がトラオムに変身する際に見に纏う光とまったく同じだった。
やがて、光が収束しそこから現れた親父の姿に愕然とする。
白をメインカラーに据えた機械装甲。
現状のトラオムよりもがっしりしたボディ。
顔全体を覆うメットには一本角。
この姿を俺は知っている。いや、正確には良く似ている存在を知っている。
拘束をいとも簡単に取り払ったそれはこちらを指差す。
「ドリーマードリーマーのDr.KK。またの名を悪のヒーロー『アルプトラオム』ここに参上!!」
高らかに『悪夢』と名乗った機械装甲戦士がポーズを決める。
もう、まじでこの親父をぶん殴る許可を下さい。




