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親父が悪の組織を作りました。  作者: のいざ たつや
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第十五話 とんでもない勘違い

益田の歌声が聞こえなくなり、俺は目を開けると同時にパチパチと手を鳴らしていた。


「普段喋る時の声とは、また雰囲気違う声が出るんだな」

「あぅ、これでいいですか? あはは、顔が熱いです。」


俺の前で歌ったのがよほど恥ずかしかったのか、顔を赤らめた益田がパタパタと両手で顔に風を送る。

それに、これで良いも何も、益田がこれで気にする事が無くなるならこれでいい。

しかし、知らない歌だったがリラックス出来た。

落ち着いた曲調の歌だったが、脳にじんわりと染み込むようなそんな歌。

1/Fゆらぎと言う言葉がある。

音楽の世界では、規則正しい音とランダムで規則性がない音との中間の音をさすらしいのだが。

この周波数には、心を落ち着かせるといったヒーリング効果があるのではと言われている。

益田がはからずしもリラックス効果のある周波数で声を紡いだのかもしれない。

俺は、付けっぱなしになっているパソコンの画面に目を向ける。

そこには、音の壁を操るレーヴの姿が映っている。

それを見た俺の脳内にインスピレーションが湧き上がる。


「益田、親父達を無傷で拘束できるかもしれん」

「本当ですか!」


座って顔を仰いでいた益田が立ち上がり俺に近寄ってくる。

理論上は可能のはずの、いやもしかしたら今思い付いたこの方法こそ。

本来のマギレーヴの力なのかもしれない。

キーボードに指を走らせいろいろな画面を開いていく。

俺は、画面のすぐそばまで顔を寄せた益田に、ことの概要を説明していく。

益田に説明をしながら、俺自身もこれなら行けるという確信を掴むのだった。





時刻は夕刻、先ほどまでガレージにて作戦会議を行なっていた俺たち2人は。

先ほど明日結構予定の作戦の最終確認を終えて玄関先までと出て着ていた。


「京極君、明日はバッチリまかせて下さいね。」

「おう、親父たちが変な細工してこなかったらな。」

「ぐっ、そうですね・・・。」


一様、明日の計画には、2人で戦うものと、俺が1人で戦うハメになった時ようの2つを用意している。

まぁ、俺の中では十中八九。明日は、2人で戦えるだろうと思っている。

ちゃんとした根拠は無い。無いのだが、前回1人で戦うハメになった時の事を振り返ると

クソ親父がトラオムにあの数式データを渡すために仕組んだ事のように思えたのだ。

いや、本当に根拠はないんだけど。

そんな事を考えていると、益田のカバンの中から携帯の着信を知らせる音楽が鳴る。

俺に向かって「すいません」と言うとカバンから携帯を取り出した益田が目の前で話し始める。


「もしも、・・・えっ!? いや、違うんですよ蛍さん! 違うんですって!」


どうやら、電話の相手は熊寺みたいだが、何か変に焦ってないか?

俺は、「違うんです」「誤解なんです」と繰り返す益田のことを壁に背中を預けたままぼーと眺めていた。


「もう、だから何度も! だっ、だったら本人に聞いてみてください!!」

と大きく叫んだ益田は、携帯を持つ手を俺の前に突き出してきた。

「えっ?」と小さく声の漏れた俺に構うことなく益田は俺の手に携帯を握らせると

「蛍さんです。元々は、京極君が悪いので、ちゃんと説明してあげて下さい!」と

すごい剣幕でまくし立てられて、俺は握らされた携帯をおずおずと耳元に当てる。


『よ、よう、熊寺か? 何か益田がすげぇピリピリしてんだけど、何言ったのお前?」

『おぉー、信也君。美音ちゃんと付き合うことに成ったでしょ、おめでとうー」

『はっ? はぁぁあぁぁっ!?」


熊寺からの予想もしなかった発言に言語機能が破壊されて変な言葉が口から漏れる。


『なっ? おまっ、それっ、どういうっ、はぁあぁぁぁああぁ!?』

『もう信也君、うるさいよー。彼女が出来て嬉しいのはわかるけどさぁー』

『違うわっ! 何だ何でそんな話が出てきた! どこの誰だ、そんな事実無根な嘘を言いふらしてるのは!』

『むっ、信也君。理沙ちゃんはね、嘘は絶対言わない子なの。理沙ちゃんを嘘つき呼ばわりは許さないよー』

『って、甲田かよ発信源! 甲田はウソつかない。とか知った事か、どこのインディアンだ!』

『もう、さっき電話で聞いたんだけど、今日ファミレスで美音ちゃんと信也君に会ってその時聞いたって』


その言葉に、今日のファミレスでの出来事を思い出す。

しかし、いくら思い返しても俺と益田が一緒にいた事は事実だったが

付き合ってるなんて会話は甲田とは一切してない。詮索すらされなかった筈だ。

つまり甲田の勘違いだって事だと結論付けると俺は電話口にその事を伝える。


『いや、どう思い出してもそんな会話はしてない。甲田がウソを言わないなら、勘違いとかだろ』

『えぇー、でも理沙ちゃんが、信也君が今日の朝から付き合うことになった。って言ったーって』


その言葉に目を見開く。そのフレーズは何だろう。すごく、すごく頭に引っかかる。

俺と、甲田が交わした会話は2、3言の応酬だったはずだ。

そこで俺ははっとする。あの会話のやり取りってまさか。


(「もう、いいですか? ビューティーと二人ですー」

 「えっ? 益田と二人? あぁ、まぁ、ここに来るまで二人だったが?」

 「ですですー。それで、いつから(付き合ってる)ですかー?」

 「はっ? えっと、今日の早朝からだけど?」

 「イエー、おめでとうね。ビリーブ。」

 「はぁっ? 何で祝われたの俺?」)


冗談だろ!? 何時からって、二人が合流した時間聞いてたんじゃなくて。

いつから付き合いだしたのかって聞いてたのか。判る分けないだろう。

あぁ、そうか、だからあの時、益田は羞恥心で机にダウンしてたのか。

しかも、益田が誤解を解く前に英雄が来て甲田が店を出たから誤解も解けてない。

いや、でも待って欲しい。俺と益田なんて夏休みに入る前までほとんど接点がなかったんだ。

いくら甲田が、「俺が益田と付き合う」と言ったとしても、そうそう信じるだろうか。

そうだ、いくら何でもこれは可笑しい。何か決め手が合った筈だ。熊寺が納得した理由が!


『いやぁー、夏休みの最初の頃に偶然困ってる美音ちゃんに会って、そこから頻繁に会ってたんでしょ』


俺は、オイルの切れたブリキのおもちゃの様に、ギギギッと首を益田の方へと向ける。

そこには、「何ですか?」ときょとんとした益田の顔。

こいつ、俺と頻繁に会ってる事を熊寺に言ってやがったのか!

すべての点が線で繋がる。

お金を返しに来たあの時に、呼び止めてでも口止めしとくべきだったと後悔するももう遅い。

今すべき事は、誤解を解いてから、この事が広まる前に甲田に口止めする事だ。


『違う! 熊寺、良く聞け。俺と益田は確かに仲良くなってるかもしれんが、まだ付き合ってない!』

『ふぅーん。ほぉー「ま・だ」ねぇー。』


益田の方を目をやると、こっちから視線を外しているが頬がほんのり赤い気がする。

俺・は・何・を・言・っ・て・る・ん・だ。


その後も同じようなやり取りをいくらか繰り返し。

俺と益田との関係については誤解だと何とか理解してもらい。

その上で、甲田にこの件の事を伝えてもらえるように頼んだのだった。

その代わりに一つだけ夏の予定にスケジュールが完全に刻まれる事になってしまった。


『はいはい。じゃあ、理沙ちゃんには伝えとくよー』

『すまんがそうしてくれ。後、俺も勘違いさせて悪かったって伝えてくれ。』

『ふふっ、りょーかい。あっ、そうだ信也君。明後日ってバイト休み?』

『バイト? あっ、あぁ、休みだな。そのはずだ・・・』

『じゃあ、決定だねぃ。美音ちゃんに変わってよぉー』


俺は、ため息を吐いて益田に携帯を返す。

その場にズルズルと沈み更にもう一回ため息。

頭上では、益田が熊寺と短いやり取りをしている。

俺は、益田の電話が終わるまで抜け殻の様にして過ごすのであった。





その後も10分ほどだろうか、携帯で会話をしていた益田が「それじゃあ」と言って通話を切った。

それを確認してから立ち上がる。

もう、何か益田にも色々言おうと思っていたが、この暑さで胡散してしまった。

俺が何も言わないでいると乾いた笑い声と共に益田が口を開く。


「びっくりしましたね。」「まったくだ・・・」

「それと、明日で全部終わるといいですね。」「そうだな。」

「明後日は、海水浴場近くの駅に10:00集合らしいです。」「了解。」


んっ? 何か最後の一言が聞き捨てならない物だったような。


「えっ? 明後日、海?」

「はい? えっ、蛍さんが京極君の日程も大丈夫そうだからと言ってましたけど?」


やられた。それでバイトがうんぬん聞いてきたのか。

そういや、そういう約束を夏休みの最初にした記憶がある。

確か女子のメンバーは、益田に熊寺、甲田か。

休み明けにクラスの男子共にバレたら、嫉妬の嵐だなと完全に思考を彼方に飛ばす。



「海、楽しみですね。」

「そうだな。その前にする事あるけどな」


俺の言葉に頷いて、益田が突然顔を近づける。

俺は、驚いてのけぞろうとするも壁を背にしていて、その場を動けなかった。


「勘違いされてちょっと嬉しかったりしました。」


益田のその言葉に更に身体が硬直する。

その隙に益田はタッと駆け出して行ってしまった。

益田が見えなくなってもしばらくのまま動けなかった俺は、携帯の音でようやく動き始める。

ポケットから取り出した携帯にメールの着信を知らせる表示。

そこには先ほど駆けていった彼女の名前。



『からかわれた仕返しです!』


結論。

やっぱり、女の子をからかい過ぎるのは良くない事です。

必ずしっぺ返しがあるでしょう。

俺は、今度こそ二度と益田をからかい過ぎないと誓うのであった。



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