プロローグ そして夏休みが始まる
初投稿になります。とりあえず、こんなの出来ましたという感じですので
気軽に読んで頂けたら幸いです。更新スピードは遅いと思われます。
学生に許された特権の一つに『夏休み』というものがある。
約一月にも及ぶこの休暇で何をするかでその後の人生に多大な影響を与える。
勉学に励むもの、部活に励むもの、夏の成果を何かしら得るために奮闘するもの。
そして、長期休暇を脆弱に過ごすもの。
かく言う俺も、高校一年の最初の夏休み。
特に計画なども無く。学校に行かなくても良くなると言うだけの日々を過ごすと思っていたのだ。
そう、夏休みの初日に居間の机に置かれた親父の書置きを見るまでは・・・
◆
親愛なる我が息子へ
まずは、直接お前に伝えることなく手紙という手段でこの事を伝える非礼を詫びる。
私は、長年の夢を叶える為に行動を起こす事にした。
お前も知っていると思うが私は『正義の味方』が大好きだ!
私が物心ついた時には、それはすでに存在していた。
名称は様々だが、悪の組織と総称される者達が地球から、宇宙から、別次元から
ありとあらゆる場所から生まれ。また、それを倒すべく正義の組織も幾多も生まれてきた。
1つ1つの組織が対になって存在するように、悪が生まれれば正義が生まれ。
そして、悪を討ったとき、正義は姿を消していく。
私は、彼らが戦う様をいつもテレビやインターネットごしに見ては心躍らせてきた。
個人で集めれる情報はすべて集めつくしたと言っても過言ではない。
しかし、私はそれだけでは満たされなくなってきた。
正義の味方の戦う勇士をもっとまじかで見る方法が無いものかと。
そして気づいたのだ正義の味方を誰よりも身近で観察する方法を!
その方法に気づいたのはだいぶ前なのだが、先日ある研究会で同席した方の中に
私と志を同じにする同志を見つけた。
彼となら、私の長年の夢を現実にすることが出来ると確信した。
彼も同じに考えてくれたようで私たちはすぐにでも行動に移すことにした。
そんな訳で、申し訳ないが私は家にしばらく帰れない。
お前が不自由しないよう。お前の名義で新しい通帳を用意してある。
各種引き落としは、今まで通り私の通帳からだから、新しい通帳はお前のお小遣い+aだ。
お金は定期的に振り込むが無駄遣いしないようにな。
夢と息子を天秤に掛けて、夢を選んだ私が書くのも変な話だが
お前のことを世界で一番愛している。 父より
PS:一人暮らしだからといって無闇やたらに女性を連れ込まないような。
◆
「あっんの、バカ親父!!」
俺は、すぐに親父の携帯に電話を掛けるが聞こえてくるのは、電子音声でのアナウンスのみ。
軽く舌打ちをして家の中のを駆け回る。親父の書斎、寝室、風呂場、トイレ。
そして、玄関を開けて外に出る。そこには、親父が通勤に使っていた車は停まっていなかった。
居間に戻ってきた俺は、ため息を吐くと短く切りそろえた頭をガシガシと引っかく。
どうやら、本当に親父はこの家を出て行ったらしい。
普通に考えて保護者がこんな事するか。
自分の夢を追いかけるために高校に入ったばかりの息子一人置いて行くとか。
「夢っかぁ・・・」
親父が正義の味方に憧れているのは知っていた。
悪の組織に勇敢に立ち向かうヒーロー達。アニメやマンガの世界だけじゃない。
本当に存在する正義の味方。俺が幼少期の頃は、一緒になって夢中になったものんだ。
でも、俺はそれを自然と卒業していた。親父が語るヒーロー達の武勇伝に気の無い相槌を打つだけになった。
ここ一年ほど親父と俺の間に正義の味方に関する話題は上がらなくなっていた。
それを親父もついにヒーロー達から卒業したのだと思っていたのだが、どうも違ったらしい。
もうすぐ40歳になるというのに、まだ夢を追いかけていたのだ親父は
俺にはまだ、そこまでがむしゃらになってまで追いかけたい夢なんてないのに
何だが、すごく親父がうらやましいと思ってしまった。
「つうか、どうしよ。一人暮らしとか考えても無かったんだけど」
俺はソファに座ると、書置きと一緒に置かれていた通帳に目を通す。
なるほど高校生の俺には多すぎるくらいの0の数。つか、多すぎじゃねぇのコレ。
またもため息。俺はとりあえず、リモコンをテレビに向ける。
夏休みの初日のスタートがこんな感じで始まるとは夢にも思わなかった。
テレビに映し出されたのは、いつも通学前に見ている朝のニュース。
そこには、夏休みに入る直前で壊滅した悪の組織の事が取り上げられていた。
しかし、次の瞬間テレビがいきなり砂嵐になる。
「はっ?」間の抜けた声と共に、俺はうっかりリモコンに触れてしまったかなと
リモコンでチャンネルを変えていく。だが、どこのチャンネルに合わせてもすべて砂嵐。
そして、俺は「あぁ、またか・・・」とひとり愚痴った。
この世界ではよくあることなのだ。先ほど、悪の組織が一つ壊滅したとニュースでもしていた。
と言う事は、そう言う事なのだ。案の定、突然砂嵐が終わると仮面を付けた二人組みがテレビに映る。
そして、白衣を身に付けた方が演説を開始した。
『諸君、ご機嫌いかがかな。私はDr.KKという。以後お見知りおきを』
画面の中で男は熱弁を奮う。やれ、今のままではこの世界は終わってしまうとか
このままでは、いずれどこかの侵略者に世界が乗っ取られるとか
俺は、延々と熱く語る白衣の仮面の男の演説を聞き流しながら。それでも、画面を見るのを止めなかった。
やがて男はすべて語り尽したのか、画面側を指差すと高らかに宣言した。
『正義の味方よ! 我等を止めて見せよ! 我々は正々堂々戦おう!』
その言葉を最後に画面が切り替わる。テレビの画面にはしばらくお待ちくださいのテロップ。
先ほどの電波ジャックの対応にテレビ局の人たちは大慌てだろう。
かく言う俺も現在大慌て中である・・・
「あっんの、バカ親父!!」
演説をしていた白衣を着た仮面の男。それは間違いなく。
俺、京極 信也の親父 京極 恭太郎その人であった。
誤字脱字とうありましたら、報告くれるとうれしいです。




