王の独白
ぼくは空をわたろう
千夜の夢と 疲弊した現世を置き去りにして
あの城が歪なコトワリで支配されているのを
理解したのはいつのことか
宝珠を守り、王錫をかかげ、王の冠をいただき
いくら飾り立てようと
それらは耳に口を寄せ、素晴らしく不快な息を吐く
祝いの言葉も、賛辞の言葉も
中傷の言葉も、あざけりの言葉も
すべてが呪縛
すべてがぼく
呪いとなって定着していく
この脳をつくり変えていく
いつしかぼくは考えた
「ぼくはぼくでないなにか」
どこかさめた声色でつぶやかれた、いつかの言葉をかみしめる
「あなたはわたしの写し鏡」
希代の呪詛師とうたわれて、人の不幸の上に生き
それでもあの子は倒れない
ぼくは冠をぬぎ 空をわたる
つくり変えられてしまったものを、自らの手でつくり変えてみせようと
ぼくの言葉にあの子は返した
「わけのわからない謝罪なんかいうのいやでしょ」
と、笑うあの子が愛おしい
ぼくは この想いを編みこんでいく
ぼくはいつも考えている
生まれ落ち、周囲から吐き出されるは 呪いの言葉
脳に刻む、決して消えない 呪いの言葉
ならばぼくは
あの子のすべてを この身に刻もう