表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
6/7

006 カオスの深まり

 後に第三次「ジーアス」大戦に発展する、南北沙羅樹国の統一戦争は、ラシア共和国と神華大陸の華党は最大級の警戒感を示していたが、実際に戦備態勢に入る事はしなかったが、北沙羅樹国から特使として両国に送り込まれた外交官は、文字通りあらゆる条件を示して、軍事的な支援を捻り出そうとしていた。

 華党の外交官は劉小功は、自分の元に訪れた外交官に対して、その危険性を示していた。

「我が国とて、貴国がイラストリラ合衆国による占領下に置かれた場合、イズク大陸の勢力図は大きく書き換えられる。しかし、ここで我が国が軍事的支援を行えば、我が国とイラストリラ合衆国との関係が悪化する。下手を打てば、第三次「ジーアス」戦争の始まりとなります。その戦火は、世界中を覆い尽くします」

 北沙羅樹国の外交官は、ここで取って置きの一言を告げる。

「もしそうなって、我々が勝利した結果、世界の盟主は誰になるでしょうか」

 劉小功は、鉄面皮の表情を緩ませる事無く、じぃっと北沙羅樹国の外交官の表情を窺う。これは単なるハッタリか、あるいは本気なのか。持ち帰って検討する。そう言いたいところも山々であるが、この言葉の持つ誘惑は、蛇が知恵の実を食べさせようとする光景に良く似ていた。

 まだまだ世界有数の、いや、トップクラスの経済力を持つとは言え、近年、その勢いは失われつつある。また勢いを取り戻す為に、そして、国内にて緩くなっている士気を取り戻す為に、座して死ぬより打って出るべしとして、本格的な軍事同盟を結ぶのは悪くは無い。

 兎に角、早く同盟関係の話を取り纏める必要があった。出来る事ならば、実際に最初から砲声、銃声が鳴り響く前に牽制となり、南北統一戦争を事前に阻止出来るかも知れないのだ。


 ラシア共和国への特使は、より難儀な交渉を余儀なくされていた。10年前、20年前であれば、二つ返事で引き受けられただろうが、今となってはかなり条件が厳しい。メルートリア大陸への地下資源の売買で、国庫の半分以上を稼いでいる同国が、イズク大陸の分断国の戦乱に参加して、国際関係を悪化させるのは、割が合わない。

 今回は、それを越える条件が必要であった。北沙羅樹国が示したのは、天然資源の買い取り金額であった。

「貴国がこちらに輸出する天然資源の値段に、我が国はこれまでの倍額をお支払いします」

 ラシア共和国の特使は、この条件を首都・ハスクアへと持ち帰ったが、とんでもない解答が返ってきていた。

「半値で売れ。軍隊も義勇軍として派遣する。最新鋭兵器も主力の魔女・魔戦機・魔人も投入する。絶対に交渉を成功させろ」

 ラシア共和国の特使の身体は、身震いする。武者震いなんてものじゃない。恐怖だ。どうやら、ハスクアの連中はこれから第三次「ジーアス」戦争が始まるのは阻止出来ないものとして事を考えて、予定を組んでいるに違いない。

 第二次「ジーアス」戦争が終結して80年、「冷戦」が終わったのは50年、今になって「社会主義」と「民主主義」の総力戦が始まる。


 南沙羅樹国の「総合幕僚本部ビル」は、蜂の巣を突いた騒ぎになっていた。同じ事は、イラストリラ合衆国の国防省も同じ状況であった。ラシア共和国も華党も、北沙羅樹国と共に、共産圏として自由圏と対立した仲であるが、それでもこれ以上の戦争は「無意味」「無謀」「無駄」であるとしている筈であったが、それが全面的に支援した上で戦え、と言うのだ。

 もう「戦争の世紀」は終わったとされるこの時代に、まさか世界大戦レベルの戦争が始まるとは。下々の民達は、この状況を「不安」と「混乱」でもってこれを報じていた。


特にあわを食っていたのは、南沙羅樹国の「総合幕僚本部ビル」に詰めていた作戦幕僚達である。下手をすれば、否、もうこの事実は確定している。第三次「ジーアス」戦争の始まりだ。であればこそ、超短期決戦にて計画を練る必要がある。ラシア共和国と華党の援軍や軍事介入、支援態勢が整うより先に、かの国を統一させてしまえば、世界大戦も起こらず、南北は統一される。

 しかし、それこそが希望的観測であった。ラシア共和国と華党の動きの方が早かった。矢張り、「開戦」は避けられない。今更、外交交渉にて事を有利に終わらせる事は出来ない。現に北沙羅樹国にはラシア共和国の基地航空隊や魔戦機・魔人・魔女部隊が続々と渡ってきており、神華大陸からは海軍が派遣されていた。

 しかし、この動きは全世界に波及していた。統一悠大からも、軍の派遣や武器・装備・燃料の支援を行う提案が出されていた。

 第三次「ジーアス」戦争は免れない。だが、戦場は沙羅樹列島に限る。そんな無情な態度が露骨に現れていた。これもある種の「限定戦争」の幻想を追いかける兆候であった。恐らく、戦火は世界中に波及する。そうなった時、一体何を条件に終わらせるのか。まさか、「無条件降伏」だとでも言うのだろうか。

 それはそれで、危険な状況だ。無条件降伏に至らせるのには、余程大きな勝利か、あるいは画になる攻撃が必要である。そんな戦力、南北の沙羅樹国には存在しない。

 世界中で、手酷く死ぬ。北沙羅樹国の沼田之ソウタロウ書記長も、南沙羅樹国の高松之カツタロウ総理大臣も、今のこの関係を構築するのに、先達達が80年、苦労を重ねてきた事を考えると、その苦労をこの1戦にて無に帰してしまう事に心が痛んでしまうが、仕方が無い、これも時代の流れだ。

 ここから先は、生きるか死ぬか、「DEAD OR ALIVE」の世界だ。しかし、それ以上に難儀な事実が、南北の首脳陣に立ち塞がっていた。新しい状況の変化に合わせて、また作戦・計画・政策を1から考え直さなければならない事態に陥っていた。

 特にあてにしていなかった軍事支援が充分に受けられる様になった北沙羅樹国は、より余裕のある作戦計画を立てざるを得ない状況にあった。

 事態は正に、カオスの中へと放り込まれそうになっていた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ