「追放されたので楽しくスローライフを始めようと思ったのに、なぜか国王直々にスカウトされました。今では可愛いツンデレ彼女もいて最高に幸せです。」
俺の名はレオン。アルセリア王国に四人いる勇者の一人だ。
剣の達人アレン、防御力に突出したドルガン、そして強力な魔法を操るカイル。
対して俺のスキルは【鑑定】――。戦闘で直接役立つわけでもない、正直“外れスキル”と呼ばれる部類だろう。
だが俺は卑下しなかった。弱点を見抜き、薬を調合し、仲間を支えることができるのだから。
ある日の討伐後、いつものように弱点を見抜いてサポートしていた俺に、アレンが冷たく吐き捨てる。
「お前は鑑定しか能がない。勇者の名が泣くな。」
「そうだな。気分が悪い。」とカイルも同調する。
「お前はパーティから出て行け。不要だ。」
――なるほど、俺は不要らしい。
「そこまで言うなら出て行ってやろう。後悔しても知らんぞ。」
そう言い残し、俺は勇者パーティを離れた。
失意はあったが、田舎の村で畑を耕し、動物と戯れる生活は意外にも心地よかった。
「これも悪くないな」――そう思い始めた矢先、運命が転がり込む。
俺の畑に、傷だらけの少女が飛び込んできたのだ。
「な、何してるのよ! 早く逃げなさいよ、このバカっ!」
その背後には、炎を吐く巨大なモンスター。少女は吹き飛ばされ、俺は反射的に抱きかかえる。
「ちょ、ちょっと! 離しなさいよ! 勘違いしないでよね、別に助けてほしかったわけじゃ……!」
「下がっていろ。俺が倒す。」
鑑定が告げる弱点は尻尾。そこを狙って剣を振るい、一撃でモンスターを爆散させた。
気を失った少女を鑑定し、即席の薬を調合する。彼女は目を覚ますと、顔を真っ赤にして言った。
「……べ、別にあんたに助けられたからって感謝するわけじゃないんだからね。ただ……お礼くらいはしてあげてもいいわ。ついてきなさい!」
たどり着いたのは王城。彼女は自らを名乗った。
「私はオスファルト殿下の娘、ミアよ。そ、その……勘違いしないでよね! さっきのは偶然助けられただけなんだから!」
――王女!?
俺は国王に謁見し、食事を共にしたのち、側近として召し抱えられることになった。
そして数年後、ミアと結婚し、俺は王家の一員として幸せを手に入れる。
「ほ、本当に仕方ないんだから……私があんたを好きになっちゃったのは……責任取ってよね!」
そう言って頬を染めるミアの姿を見て、俺は心の底から思う。
――あの時追放されてよかった、と。
一方その頃――。
アレンたち元パーティは、俺の鑑定によるサポートを失ったせいで討伐に失敗し、次々と窮地に陥っていた。
「くそっ、弱点が分からない……!」
「レオンがいれば……!」
だがもう遅い。俺は彼らのことなど思い出す暇もないほど、幸せな日々を送っているのだから。