【序章】 土俵に咲く、女神たちの祈り
女の子達が百合百合する話が思いついたので初投稿です。
時刻:月例マンコ相撲トーナメント開幕十五分前
場所:両国国技館・放送席
「ゴクリ…!」
放送席で、アナウンサーの絶頂川 雄叫は、すでに臨戦態勢に入っていた。マイクを握る手は汗ばみ、その目は充血している。すり鉢状の観客席は、今か今かと開戦を待つ一万五千人の男と女の熱気で、陽炎のように揺らめいて見えた。
絶頂川アナ:「天知さん! もう待ちきれません! 私の“一番搾り”も、もう限界です!」
隣で、解説者の天知 理は、銀縁眼鏡の奥の冷静な瞳で、ゆっくりと資料に目を通している。
天知:「落ち着きなさい、絶頂川さん。あなたの“一番搾り”には誰も興味がありませんよ。…さて、全国一千万人のマンコ相撲ファンの皆様、そして、今日初めてこの神聖なる戦いをご覧になる皆様。まもなく、今月のトーナメントが開幕いたします。その前に、この放送は、初心者の方々のために、まず我々が生きるこの世界の“現実”と、この国技『マンコ相撲』の基本ルールについて、簡単にご説明させていただきます」
絶頂川アナが、ぐっと身を乗り出す。
絶頂川アナ:「そうです! なぜなら、マンコ相撲はただのスポーツではない! これは、我らが国家ネオジャパンの未来を懸けた、女神たちの“祈り”そのものだからですッ!」
天知は、こほん、と一つ咳払いをすると、理路整然と語り始めた。
「現在、我々人類は、種の存続の危機に瀕しています。原因不明の遺伝子異常により、男子の出生率は、女子の一万分の一にまで激減しました。今や、成人男性は国家によって厳格に保護されるべき“天然記念物”です。精子バンクによる人工授精も試みられましたが、成功率は低く、費用はあまりに高額でした」
絶頂川アナ:「そこで立ち上がったのが、我らがネオジャパン政府です! 少子化に歯止めをかける起爆剤として、このマンコ相撲を国技と認定! 優秀な遺伝子を持つ男性を“行司”として選抜し、トーナメントの勝者へと、その“子種”を直接授ける! なんという画期的なシステムでしょうか!」
天知:「ええ。実に合理的です。では、その基本ルールをVTRで見てみましょう」
モニターに、過去の試合の映像が映し出される。
天知:「ご覧の通り、力士は下半身裸。腕力に頼ることなく、純粋な腰の力だけで勝負を決めるため、腕はまわしで後手高手小手に縛られます。これが、マンコ相撲の基本スタイルです」
映像の中で、二人の力士の腰が激しくぶつかり合う。
天知:「勝利条件は二つ。一つは、相手を土俵の外に『押し出す』こと。もう一つは、相手を先に『絶頂させて喘がせる』ことです。パワーか、テクニックか。力士の特性によって、狙いは大きく変わります」
絶頂川アナ:「映像は、先代大関の必殺技『重戦車・プレス』! まさに鉄壁のパワーで相手を粉砕しています! かと思えばこちらの映像は! なんとアクロバティックな『三点倒立潮吹き(さんてんとうりつしおふき)』! テクニックの前に、相手はなすすべもなく絶頂している!」
天知:「そして、最も重要なルール。勝者は、その勝利の直後、“その場”で、つまりこの神聖な土俵の上で、行司を務める男性と交合し、子種を拝領する権利と義務を与えられます。これを『子種拝領の儀』と呼びます」
絶頂川アナ:「そうです! そして、このセックスの様子も、我々が責任を持って、その一部始終を解説させていただきます! 勝者の喘ぎ声の音階、腰の振り幅、潮の量と質! その全てが、彼女たちの“母”としてのポテンシャルを示すのです!」
天知:「そして、一ヶ月に及ぶこのトーナメントを勝ち抜き、見事優勝した力士には、その月を担当した行司と“一ヶ月間の同居妊活権”が与えられます。これこそが、全ての力士が目指す、最高の栄誉です」
天知は、そこで一旦言葉を切ると、真っ直ぐにカメラを見据えた。
「横綱、大関、関脇、小結…。番付は、そのまま女の価値。土俵は、女の人生そのものです。一見、バカバカしく見えるかもしれません。ですが、彼女たちは皆、真剣です。愛する男を、そして自らの子をその腕に抱く日を夢見て、その身を削り、魂を燃やしている」
絶頂川アナ:「その通りです! これは、子作りを願う全ての女性たちの、魂の叫び! さあ、理屈はもういいでしょう! 国技館は、すでに最高潮! 今月の行司様も、土俵脇にスタンバイしている! 間もなく、最初の取り組みが始まります! 今月、最初にその“祈り”を土俵に捧げる乙女は、いったい誰なのでしょうかァーーッ!?」
放送席のランプに、「ON AIR」の赤い光が灯る。
今、まさに、十六夜咲が、その重い足を引きずりながら、東の花道へと歩を進めようとしていた。
実況解説だけセリフ形式にしています