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混沌怪奇譚 夢幻に生きる者たちよ  作者: ラット
蒼葉アキルは静かな明日が欲しい
9/86

怪物の森と吸血鬼I

 翌朝、部屋に差し込む陽光で目が覚めた。

 まだ本調子とは言い難いがだいぶ疲れは取れたようだ。

 軽く髪を整えて食堂へと向かう。

 今日の当番は確かクリスだったはずだ。


「おはよう、クリス、もう朝食はできてるかしら?」


「お早う御座います、お嬢様、もうできてますよ。配膳を手伝って頂いても良いでしょうか?」


「構わないわ、今朝はトーストとスクランブルエッグにコーンポタージュなのね」


「はい、朝食はあまり重くないものの方が良いですからね」


「そうね、他のみんなが起きてくる前に配膳を終わらせちゃいましょう」


 みんなが起きてくる時間はまちまちだが、8時くらいまでには全員必ず起きてくる。

 今が7時40分くらいだから後20分もすれば全員起きてくるだろう。

 それより先に配膳を済ませ、一足早く朝食を取る。

 いかんせん昨日の尋問で調べなきゃいけないことが増えてしまった。

 まだ情報がないとはいえやれるだけのことはやっておきたい。

 それに、今日は月曜日だ、高校にもいかなきゃいけない。

 手早く朝食を済ませた私は食器を片付けて自室に戻って制服へと着替えた。

 調べたいことは山積みだが今はそれより目の前の学業だ。

 支度を整えて学校へと向かう。

 屋敷から学校まではそう遠くないからこの時間に出れば遅刻することはない。


「あ、お嬢様も支度が終わったんですね。他の皆さんも準備できましたので行きましょう」


「そう、じゃあ行きましょうか」


 この屋敷に住んでいる住民のうち、クリス、グレン、ケイト、雪奈、そして私は同じ予玖土高校に通う学生だ。

 学業をこなしながら超自然存在の対処をしているのはなかなかハードなスケジュールだ。

 正直、他のみんなには申し訳ない気分だ。

 まぁ、それもこれも私の一族が原因なんだが……


「どうしたのよ、くらい顔して? まだ疲れが取れてないの?」


 後ろの方を歩いていた私に近づいてケイトが顔を覗き込んでくる。


「いや、ちょっと考え事をしていただけよ」


「ふーん、うそね」


「な、嘘は言ってないわよ?」


「どうせまた、この状況は自分のせいだーとか考えてたんでしょ?」


「う、なんでいっつも人の考えを読み通せるのよ、アンタは……」


「まぁ、仕事柄ね。人の心を読むのは得意なの。そんなことよりあんまり思い詰めると美容に悪いわよ? 後、シワが増えるわよ?」


「二言ほど余計ね。けどまぁ、少し思い詰めてたのかもしれないわ、私は」


「そうそう、気楽に行きましょうよ」


 気楽に、か。

 そう生きられればどれほどいいことか。


「むー、また悲しそうな顔してぇ、そんなんじゃクリスくんに嫌われちゃうわよ?」


「な! クリスは別に関係ないでしょ!」


「あー、アキル顔ちょっと赤くなってる。やっぱり、クリスのこと好きなんでしょ?」


「な、ち、違う! そんなんじゃない! 確かにクリスのことは信頼してるしいい奴だとは思っているけどそれはあくまで執事としてで……」


「へぇー」


「そのニマニマするのやめろぉ!」


 そんなふうに雑談していたらいつの間にか校門の前についていた。


「あら、ついちゃった。じゃあこの話はここまでねーそんじゃまた放課後に」


 そういうとケイトはそそくさと走っていってしまった。

 ……あぁ、もやもやする! 

 なんであの子はああやって人をおちょくるのかしら、全くもう! 

 別に、クリスが嫌いなわけではないし好きだけど、それはあくまでライクの方であってラブの方ではないのよ! 

 そう、そうに決まってるわ! 

 ……もうこのことについて考えるのはやめましょう。

 なんだかひどく空回りしている気分だわ。

 そんなことより私もさっさと教室に向かいましょう。

 授業はそこまで難しくないし、いつも通り淡々と終わらせてしまいましょう。




 放課後になって帰宅するためまた全員で集まる。

 全員部活動などには参加してないので帰宅時間もほとんど同じだ。


「あ、そうだ」


 不意にケイトが話だす。


「今日聞いた話なんだけど、なんでも町外れの森あるじゃない廃墟になった洋館があるっていう」


「確かにあるけどそれがどうしたの?」


「なんでもその森に行くと化け物が出るらしいのよね」


「……詳しく」


「そういうと思って調べられるだけ調べたわよ、時間帯は特に関係ないらしいけど出てくる怪物は頭に触手が生えた大きなヒキガエルみたいなやつや羽の生えたピンク色のザリガニみたいなやつとかいろいろらしいわ。で、気になったのがその怪物達は森に入った人間を追っかけ回すんだけど、森を出た途端にその姿を消すんだって。まるで霧みたいに消えるそうよ」


「なるほどね、少し引っかかるけど……そうね、今夜一人でその森に行ってみるわ」


「え? お嬢様一人で行くんですか!」


 クリスが珍しく声を荒げる。


「ええそうよ、何か問題でも?」


「何か問題でもって、間違いなく怪物がいるんですよ! いくらお嬢様でも一人では危険ですよ!」


「あぁ、それなら心配いらないわ。私の考えが正しければ()()()()()()()()()()


「それはどういう?」


「多分、見たっていう怪物は幻覚の類いよ、私、その手の魔術を知っているから」


「ですが……」


「まぁ、読み違えてたり危なくなったら大人しく逃げるわよ、だから安心して」


 はぁ、とクリスは食い下がる。

 心配する気持ちはわかるが、今回の件は犯人というか魔術を行使している人物に心当たりがあるからだ。

 まぁ、同一人物だったらだが穏便にことを済ませられるだろう。


「とりあえず、いったん帰りましょう? もう、日も暮れ始めたしね」


 そう言って、みんなと一緒に帰路に着く。

 さて、菓子折の一つでも準備したほうがいいかしらね? 

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