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混沌怪奇譚 夢幻に生きる者たちよ  作者: ラット
幕間IV紅い獣の誕生
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最後にもう一度

 現状はこうだ、アタシの目の前にはクソ野郎(ジェン)が居てアタシたちを囲むようにジェンの手下が四人。

 だけど手下の方からは敵意は感じない。

 そう……例えるならプロレス見に来た観客って感じの心情がする。

 対するジェンは殺意、慢心、それと絶対的な勝利への確信。

 アキルの方には誰もいない、ならさっさと逃げる一択のみ。

 手錠を引きちぎるのに2秒、そこからは全力で離脱すれば逃げ切れる。


「おいおいどうしたぁケイトよぉ? さっきから止まったまんまじゃねぇか? かかってこいよ!」


「アンタをどうやってぶち殺すか考えてただけだっつうの! それも決まったけどねッ!」


 全力で地面を蹴り、駆ける。

 このスピードならアキルのところに


「遅えよ!」


 ?! 何がッ……お腹痛い、ヤバ、コンテナにッ! 

 アタシは轟音と共にコンテナに衝突した。

 今ので腹の骨をやられたらしい……呼吸するたび痛いッ! 


「ふぅう! ストライク! 良い出来だぜ全くよぉ! このパワードスーツは!」


 パワードスーツ? あぁ、そう言うことか。

 ジェンの異様なまでの対応力とパワーは……

 とにかく、立たなきゃ……


「テメェに今までやられた恨み、返させてもらうぜケイトッ!」


「がぁ……」


 コンテナに向かって顔面を叩きつけられる。

 何度も、何度も何度も何度も。

 次第に視界が赤く染まり意識が朦朧とする。

 手足に力が入らない。

 あぁ、アタシここで死ぬのか。


「どうした? 世界最強の殺し屋! こんなもんかよッ!」


「……」


 壁へと投げつけられ体が悲鳴を上げるが、それすら今のアタシにはわからない。

 まぁ、悪役(ヴィラン)の最後なんてこんなもんか。

 あー、けどアキルは助けないとなぁ……

 うざったいし気に食わないけどなんだかんだ損得以外でアタシに歩み寄ろうとしてくれた奴だし……

 けど、無理か。

 出血は止まらない、手足は使い物にならない、意識は朦朧としてる。

 ……悪い、やっぱり無……理……


「私の家族にそれ以上手を出すなぁ!!!」


「あ? がァァァアァァァア?!」


 突如轟音と共にジェン達が吹っ飛ぶ。

 そして吹っ飛ばしたのは他でもない、アキルだ。


「あぁぅぅうッッッ!!!」


「はぁ、はぁ、アンタ……一体なにして、なんで右腕そんなにぐちゃぐちゃになってんだよ!」


 アタシの元に来たアキルの右腕は捻じり潰された様にぐちゃぐちゃになっていた。

 おそらくアキルは自分で右手の親指を折って手錠から抜け出した後、()()()()()

 その代償が今のアキルの右腕だ。

 痛くて仕方ないはずなのに、それでもアキルはアタシを左腕で起こそうとする。


「それは後、とにかく今は逃げ……ッ!」


 舞った砂埃の中から一つの影が現れる。

 ジェンだ。


「痛えじゃねぇかクソガキ! だが、スーツのおかげで助かったぜぇ。さて、クソガキ二匹を痛ぶって今度は俺が楽しませてもらうぜ!」


 ゆっくりとジェンは近づいてくる。

 アキルはもう限界だ。

 アタシももう長くない、なら……


「アキル、離して」


「けど!」


「大丈夫」


 初めて誰かに命を救われた。

 奪うことしかしてこなかった極悪人のアタシがだ。

 なら、ちゃんと礼をしなきゃなぁ! 


「おい、ジェン? 死ぬ覚悟は出来たか?」


「ほざけ死に損ないのガキが!」


 ジェンがアタシめがけて突っ込んでくる。

 アタシは壊れかけの足でジェンに向かって走る。

 そしてぶつかる刹那、ジェンの股下をくぐり抜け背後を取り、跳躍する。

 狙いはスーツのない頭! 

 壊れかけの両腕でジェンの頭を掴み、ジェンの両肩に足を乗せ全力で引っ張り上げる。


「な、何する! やめろ……やめろォォオ!!!」


 ジェンがアタシの足を握りしめ、砕く。

 だがもう遅い。


「じゃあなジェン、せいぜい綺麗に引っこ抜けてくれや」


 アタシはジェンの頭を身体から引き抜いた。

 これじゃまるでプレデターだな、は! 


「ケイト!」


 アキルが走って近寄ってくる。

 こんなグロい光景見てよく近づけるな。


「あ……


 そこでアタシの意識は途切れた。




 ———それから7年後


「まさか墓参りに来ることになるなんてね」


 墓石の前に花を添えながら一人の少女が語る。


「つうか、知らないうちに墓の場所変わってるとはねぇ。まぁ、アタシが作った粗末な墓よかマシだ」


 赤い髪を後ろでまとめた少女はそうボヤく。


「……まぁ、こんな血まみれの手から花なんざ手向けられても嫌か。さて、帰りますかね!」


 少し悲しげな顔をして少女は振り返る。

 瞬間、心地良い風が吹いた。


「⬛︎⬛︎⬛︎」


「……違うよ、パパ、ママ、今の()()()は……」




 さて、最後にアタシが誰か説明してやろう! 

 アタシはケイト、ケイト・リード! 

 4歳の頃に人を殺してから今まで無敵……無敵ってことにしとけ、な厄災さ! 

 国々のお偉いさん方も恐れる大悪党、10万殺しのケイトとはアタシのことよ! 

 そして今はなんの因果か蒼葉アキルの大親友で家族。

 みんなで協力して違法マフィアを潰したり、邪神崇拝集団をぶっ潰したり、邪神を撃退したりした。

 なんだかんだ刺激的な日々を送りながら予玖土町で暮らしてる。

 そしていつか酷い結末を迎える予定の悪役(ヴィラン)サ!

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