冬の邂逅
———翌日 日本 冬 予玖土町
「ど田舎じゃねぇか! めちゃくちゃ移動に時間かかったんですけど?!」
叫ぶ。
だってしょうがない、日本に着いたのは昨日の夜なのに移動で半日も使ったんだから。
その上、季節は冬。
ある程度厚着してるとはいえ寒いし、ホテルもアテがないから結局野宿だ。
正直、仕事選びをミスった気がする。
しかし、目的地には着いた。
後は歩いて行くだけだ。
「と、思ったらなんなのよこの坂! こちとら荷物重いんだぞこんちくしょう!」
地図のとおりに行った先に待っていたのは町外れの山、そこの整備された坂をひたすら愚痴を言いながら上り続ける。
荷物はクソ重い、野宿で疲れてる、ついでに言えば警察に見つかりかけて心的負担もある。
あぁ、ムカつく!
マジで仕事間違えたか?
いや、落ち着けアタシ。
これは必要経費だ、ここを乗り越えればほぼ無尽蔵に金が手に入る。
落ち着け、クールになれ。
そうこうしているうちに鉄格子の門の先にある古びた外見の屋敷に辿り着く。
「……ここね」
古い作りの鉄格子の門の横にある真新しいインターホンを押して少し待つ。
しばらくして門の先の屋敷から一人の執事服の小さい男……アタシと同い年くらいのガキか? が出てきた。
「いらっしゃいませ。私は当館の執事のクリスと申します。貴女はケイト様ですね? 要件は奥様から聞いております。どうぞ中に」
そう言ってクリスと名乗った男は門を開けアタシを館の中に通す。
館の中は意外にも新しめで綺麗だ。
「しばらくお待ちください。主人を呼んで参ります」
そう言ってクリスは館の2階中央の部屋に向かった。
……にしても、屋敷の広さに対して人の気配が少ないな?
これだけデカい屋敷なら何十人と住んでそうなものだが、気配は6人くらいか?
しばらくしてクリスと一人の少女が2階から現れる。
「貴女がケイト・リード? 初めまして、私は蒼葉アキル。話は母から聞いてる。貴女の部屋に案内するわ」
そう言って現れた青い瞳の少女……蒼葉アキルの瞳は酷く冷たく、怯えている様にアタシには見えた。
まるで昔のアタシみたいに思えてしまうくらいに。
「あー、分かった。よろしく」
とりあえず無難な答えを返す。
コイツは間違いなく訳アリだわ。
とりあえず、寝床にありつけたのはありがたい。
もう野宿は懲り懲りだ。
「ここが貴女の部屋よ」
「おー、意外と広いじゃん! 気に入った! 家具が少ないのはアレだけど、勝手に買い揃えていいわよね?」
「ええ、構わないわ。それと、平時は好きにしてちょうだい。屋敷のものを壊したりしなければいいわ」
「あらまぁ、随分と緩いこって。まぁ、それなら好き勝手させて貰うわ」
「そう、改めて我が家へようこそケイト、貴女も今日から屋敷の一員よ」
そう言ってアキルは手を差し出す。
館の一員……ね、引っかかる言い方だがリップサービスは必要だ。
「ええ、よろしくアキル。精々仲良くしましょう?」
そう言ってアタシはアキルの手をとった。
こうして蒼葉邸での新しい生活が始まった。
にしてもさっきのアキルの発言といいまるで家族ごっこだ。
……家族か。




