運命の転機
———2年後
あれから2年間、アタシは殺しに没頭していた。
マフィアを壊滅させ、軍隊を壊滅させ、契約違反を起こした愚か者を見せしめに殺し続けた。
おかげで一生かかっても使い切れないような大金を手に入れた。
けれど、アタシの心は満たされない。
どれだけ殺しても、どれだけ金を手に入れても満たされない。
そんな折に一つ奇妙な依頼がアタシの元に来た。
「はぁ? 無期限の指名依頼?!」
あまりの特殊さに思わず声が出る。
無期限依頼なんて前代未聞だ。
しかもアタシを指名しているなんて。
「左様でございます、ケイト様。今回は依頼主も実名を公開致しております。サクラコーポレーション社長オウカ・蒼葉様です」
その言葉を聞いて少し頭が痛くなる。
普通、依頼人は名乗らないものだ。
それが堂々と名乗っている。
頭がお花畑でできてんのか?
だが……
「サクラコーポレーションって、あのサクラ?! ……怪しい、けど乗った! 依頼書をちょうだい!」
サクラコーポレーションはここ数年で一気に世界有数の企業にのし上がったことで有名な企業だ。
そのトップからの依頼、さぞ心躍るものになるだろう。
たとえ罠だとしてもそれはそれでいい、その時は皆殺しだ。
「こちらになります。良い仕事をケイト様」
いつものように依頼書を受け取り自室で準備を済ませる。
さぁ、仕事といきましょうか!
———サクラコーポレーション 社長室
社長室に通されて早速驚からされた。
てっきり社長イスにはジジイでも座っているもんだと思ったが、座っていたのは女、それも若い女だ。
「初めまして、ケイト・リードくん。知っていると思うが私はオウカ、オウカ・蒼葉だ。これからよろしく頼むよ」
女……オウカはそう言ってアタシに自己紹介をする。
いつもなら口調や声の震えで相手の感情がほんのりわかるのだが、わからない。
コイツはなんだ?
「ご丁寧にどうも、それで依頼は何かしら? 殺し?」
表情を崩さず問い返す。
オウカは一息置いて答えた。
「何、簡単な仕事さ。娘の……蒼葉アキルの警護をして欲しい」
「はぁ?」
一瞬、思考が止まる。
このアタシに子守をして欲しいと?
馬鹿馬鹿しい、しかしオウカはそのまま続けて語る。
「何、ウチは訳アリでね。娘には出来るだけ安全に過ごして欲しいんだ、故に君に依頼を出した。その腕を見込んでね」
「なるほど、番犬代わりに欲しいってわけね。舐められたものねアタシ」
理解はできる。
大企業の令嬢となれば価値は高い。
とは言えこの仕事は無しだ、アタシの性に合わない。
「舐めてなどないさ、報酬は弾むよ。毎月君の欲しい金額を要求すると良い、それが君への報酬だ。ついでに辞めたくなったら好きに辞めてくれて構わない。これでどうだい?」
その一言で心が揺らぐ。
こっちは実質人質持ちで下手な手は打てないはず。
その上でのこの破格の条件なら悪くない。
打算的だが受けるに値する。
「……悪くはないわね。追加で副業……と言うか他の仕事も受けられるようにして? それなら受けてあげる」
追加の要望を出してみる。
これが通るなら後々さらに追加で条件を足していってやる。
「……良いだろう。取引成立だ、よろしく頼むよ。娘は今日本にいる。自家用ジェットを出すから乗って行くといい」
意外にも答えはイエスだった。
となれば取引成立だ。
「そりゃどうも、それじゃあ良い関係になれる様にお互い頑張りましょう?」
アタシは一旦ホテルに戻り、荷物をまとめてチェックアウトした。
3年近く世話になったホテルだ、いつか借りを返したいところだ。
それはさておき、アタシはオウカが用意したプライベートジェットで日本へと向かった。




