復讐の刻
———3ヶ月後 某国首都にて
「今日は人が多いわね。まぁ、建国記念日だから当たり前か」
そんな独り言を呟いてアタシは目的地に向かう。
狙撃も考えたがやはりこの手で直々に殺さなければ復讐の意味がない。
そもそも狙撃スポットになりそうな場所は厳戒態勢が敷かれており、狙撃による殺害は狙えない。
なら、残る選択肢はただ一つ。
直々にぶっ殺す、それだけだ。
建国記念日の今日、大統領は首都の中心の広場で演説を行う。
狙うのはそのタイミングだ。
本来なら無謀もいいところだ。
正直アタシ自身、生きて帰れないと思ってる。
けど、それでいい。
たとえ刺し違えになったとしても奴を殺せるなら構わない。
元より未来のことなんて考えていないのだから。
時間までまだ少しある。
警備の人数は100人以上、どう動くのが最適解か脳内でシュミレートする。
「お嬢ちゃん、一人でどうしたんだい?」
不意に警備の人間に声をかけられる。
「友達を待ってるの!」
「そうかい、暑いから気をつけてね」
そう言って警備の人間は去っていった。
今のアタシの服装は白いワンピース、年齢も相待って警戒されない。
武器を持ち込むことも考えたが結局は素手が一番殺しやすい。
何より怪しまれないのが利点だ。
さて、どうしたものか。
あまりにも警備が多すぎる。
これじゃあ殺す前に逃げられる可能性もある。
何か手はないか……
あぁ、あるじゃないか丁度いいのが。
「ねぇ、さっきのお兄さん? 友達が見つからないの! できれば一緒に探して欲しいのだけど……」
「そうかい、じゃあ一緒に探そうか」
そう言って警備の男を人気のない場所へ誘導し、瞬時に首をへし折り殺した。
そうして拳銃を奪い、時を待つ。
うだるような暑さの中ゆっくりと死体と共に息を潜める。
そうして時はきた!
演説が始まると同時に拳銃を死体に数発撃ち込み、すぐさまその場を離れる。
広場はパニック状態となり人々が逃げ惑う。
そして大統領もまた逃げようとする。
あぁ、あぁ! この時を待っていた!
今のやつは無防備だ、脚が壊れても構わない!
全力で力を込めて大地を蹴り上げる。
瞬時に大統領の目の前まで飛びかかりその顔面を殴り抜く!
骨の砕ける音と吹き飛ぶ歯が私を高揚させる!
死ね、死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね!!!
ひたすらに怨敵の顔面を殴り続ける。
気がつけば大統領はただの死体になっていた。
「動くな!」
複数の声と共に銃口がアタシに向けられる。
あぁ、けどどうでもいいや。
死ぬくらいなら殺せるだけ殺そう。
ゆらりと立ち上がり警備の人間達の方を向く。
「……ッ! 何を笑っている!」
「アタシ今笑ってる? そう……ふふ」
先程と同じく大地を蹴り上げ、勢いで近場の警備員から順に殺し始める。
顔面を剥ぎ下ろし、頭蓋を割り、奪った銃で撃ち殺す。
ただひたすらに滅茶苦茶に目の前に立つ人間を悉く殺し尽くす。
そうしてどれだけ経っただろうか、広場は真っ赤に染まり残ったのは真紅のワンピースを着たアタシだけだった。
アタシは急いで近場の建物の屋根に跳躍し屋根を乗り継いで逃げる。
流石にこれ以上はキツい、とにかく今は逃げることにだけ専念する。
身体には苦痛が走るがそれでも無理矢理動かす。
そうして無事にアタシは某国の外れまで逃げおおせた。
———翌日 メイナードの拠点にて
「マジでやり遂げるとはビビったぜ、ケイト」
メイナードが上機嫌に語る。
「……まぁ、ね。とにかく今は寝かせて、身体中痛くて仕方ないの」
「なんでぇ、あんまり気分良くなさそうじゃねえか」
メイナードがそう言う。
実際メイナードの言う通りだ、パパとママの仇を討ったのに一つも気が晴れない。
それどころかどこかポッカリと穴が空いた様に虚しい。
わからない。
私は目的を果たしたのに、何故?
「メイナード、アタシ殺し屋になる」
ふと口から言葉が漏れた。
メイナードは驚いて黙り込んでしまったが、アタシは続ける。
「アタシ、多分人殺ししなきゃ生きていけない。それ以外の生き方がわからない。メイナード、アンタなら殺し屋の組織とか知ってるんじゃないの?」
そう言うとメイナードは頭を掻いて金貨を一枚と地図をアタシに渡した。
「それもって地図の印の場所にあるホテルに行きな、そこなら仕事にありつけるだろうよ」
「ありがとう、身体が治ったら出ていくわ」
「そうかい、……本当にそれでいいのか?」
メイナードがアタシの瞳を見て問う。
「ええ、だってもう戻れないもの。アタシは差し詰め映画に出てくる極悪悪役ってところね。相応の終わりが待ってるわよ、きっと」
「……そうか、なら好きにしろ」
そうして二ヶ月後アタシはメイナードの拠点を離れ、地図に記された場所……ホテル『カイン』に向かった。
フロントで金貨を見せると部屋へと通された。
どうやらメイナードが部屋と一ヶ月分の滞在金を払ってくれていたらしい。
……いつか恩を返さないといけないな。
部屋で簡単にホテルのルールを教えられた。
と言ってもルールらしいルールはホテル内での殺しの禁止とルールを破った場合は追放処分と言うなの処刑をされるぐらいだが。
残りは一緒に渡された資料で確認してくれとのことだ。
ここが当分の寝床兼仕事場になる。
とりあえずは明日に備えて眠る事にしよう。




