わたしとアタシ
———12年前 某国外れ小さな町にて
「⬛︎⬛︎⬛︎! 起きなさい! もう朝よ!」
ママのその声でわたしは目覚める。
昨日は夜遅くまでテレビで映画を見過ぎちゃった、けど面白かったからいいや!
「はぁい……、おはようママ」
「おはよう⬛︎⬛︎⬛︎! さぁ、朝ごはんにしましょう。もうパパは下で待ってるわよ?」
「うん!」
そう言ってわたしは急いで一階のリビングに向かう。
大好きなパパとママと一緒に食べる朝ごはんはわたしの楽しみの一つだ。
「お、ようやく来たな⬛︎⬛︎⬛︎! パパはもうお腹すいちゃったよ!」
「パパは寝坊しなかったんだね。昨日一緒に映画見てたのに」
「ははは! パパには怖すぎてあの後寝てないからね!」
自慢げにパパは笑う。
相変わらずパパは怖がり屋さんだ。
4歳のわたしでさえ観れるようなホラー映画やアクション映画でびっくりしちゃうんだもん。
けど、パパは怖がり屋さんだけど一緒に映画を見てくれるから大好き!
「もう、貴方ったらもう少し度胸をつけたら?」
「ママと⬛︎⬛︎⬛︎が度胸あり過ぎなんだよ…… ⬛︎⬛︎⬛︎はママに似たのかもなぁ。けど、僕だってここぞっと言う時は度胸を見せるとも!」
「「本当〜?」」
「なんで二人して疑うんだよぉ……まぁ、それはさておき朝ごはんにしよう」
「それもそうね、それじゃあ———」
「「「いただきます!」」」
わたしの楽しい時間、家族みんなでご飯を食べること!
他にもたくさんあるけどこれが一番大好き!
パパとママとわたし、なんともない話をしながら笑ってご飯を食べる。
当たり前のことなんだけどわたしはこの時間が一番好きだ。
けど、今日は違った。
パパはいつもご飯を食べる時にテレビをつけてニュースを見る。
今日はそんなニュースを見てパパの顔が曇っていた。
「……隣国との関係悪化、か。変なことにならなければ良いけど」
わたしたちの住んでいる国とすぐ隣の国は仲が悪いって前にママが言っていた。
なんでそんなに仲が悪いの? って聞いたら昔からの事だから、とだけ言われた。
謝って仲直りすれば良いのに……
瞬間、家のドアが乱暴に蹴破られた。
「———!!!」
ドアの外に立っていたのは屈強な身体をして銃を持った兵隊さんだった。
そして隣の国の国旗のマークがついた軍服を着て怒鳴っていた。
「ま、まて、一体なんなんだ?!」
わたしは咄嗟にママの元に行ってしがみつく。
パパは両手を上げながらわたしとママの前に壁になるように兵隊さんの前に立つ。
「———!!!!!!」
「落ち着いてください、話し合お
パァン、と銃声が鳴る。
それと同時にわたしの頬に生温い液体と肉片がこびりつく。
それはパパの脳と血だ。
わたしは何が起こったのか理解できなかった。
ママはパパの元に行って泣き喚いている。
兵隊さんはママに向けて銃を構えている。
ようやくわたしはパパが殺された事を理解した。
———なんで?
パパは怖がり屋さんだけど優しくて良い人なのになんで殺されたの?
もう一度銃声が鳴る。
次はママが殺された。
血と脳がわたしにこびりつく。
外からは沢山の悲鳴が聞こえる。
町のみんなも殺されている?
なんで?
兵隊さんは今度は私に銃を向けた。
あぁ、わたしも殺されるんだ。
まるで映画の中の無関係な人達みたいにゴミみたいに殺されるんだ。
———そんな事あってたまるか。
パパとママは何もしていない、なのに目の前の兵隊さんは二人を殺した!
許せない、許せない! 許せない!!!
わたしが殺す! 必ず殺す!!!
わたしの中で決定的な何かが千切れて壊れた気がする。
けど、どうでもいい。
気がついたら身体が勝手に動いていた。
目の前の兵隊さんに走り寄ってその喉を噛みちぎる。
兵隊さんは首元を抑えて叫んでるが関係ない。
兵隊さんの首の傷口に両手を突っ込んで無理矢理傷を広げる。
激しい血飛沫をあげてのたうち回った後、兵隊さんは動かなくなった。
身体中を生暖かい血が濡らす。
金色の髪の毛も洋服も肌も真っ赤に染め上げる。
この日、わたしは初めて人を殺した。
わたしは……いや、アタシはもう⬛︎⬛︎⬛︎であることをやめる。
パパとママの大切な⬛︎⬛︎⬛︎はアタシじゃなくわたしでなきゃいけない。
そしてわたしは今死んだ。
これからはアタシとして生きていく。
———夜
町は酷い有様で兵隊どもが跋扈している。
アタシはスコップで穴を二つ作りパパとママを埋葬した。
自分でも驚いたけど大人二人を抱えて簡単に動けてしまえた。
二人を埋葬した後、あたしは殺した兵隊から武器を奪って家を後にした。
使い方はわからないが、鈍器ぐらいにはなる。
そうしてアタシは兵隊達の拠点に足を踏み入れた。
兵隊どもはギョッとした顔でこちらを見る。
全身血塗れのガキが銃持って入ってきたらそら驚くか。
とにかく、一番近くにいた兵隊の首を銃を使って全力で振り飛ばす。
するとまるで野球ボールのように首から上が吹っ飛んでいった。
そこから先はひたすらに近くにいる兵隊に飛び移り、首を捻り、顎を剥がし、目を潰し、兵隊を武器代わりに振り回したりしていたような気がする。
気がすると言うのは、気がついたら死体の山で寝ていたからだ。
寝起きは最悪だ、身体中痛いし動けない。
あぁ、けど動かなきゃ殺される。
苦痛に耐えながら廃墟と化した町に出る。
しばらく歩いてマンションの残骸を見つけた。
当分はここに住もう。
食事は最悪死体を食えば良い、とにかく生き残る為ならなんだってやってやる。
そうして3年の月日が経った———




