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混沌怪奇譚 夢幻に生きる者たちよ  作者: ラット
シスターズIII七大罪の魔王編
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失意

 ———教会2階寝室にて


 私はベッドで仰向けになり、ただ天井を見ていた。

 あの後ニュースで聞いたが10万人以上が死んだと報道されていた。

 私がもっと強ければ救えたかもしれない命の数。

 私がもっと早くについていたら? 

 私がもっと早くベルゼブルを倒せていたら? 

 もしかしたら助かったかもしれない。

 だけど、現実は違う。

 私は10万人の命を救えなかった。

 ……もっと力がいる。

 誰にも負けない力、誰も傷つけさせない力、圧倒的な力がいる。

 もっと強くならなければならない、私の奇蹟は人々を救うためのもの、その為なら私自身がどうなろうとも構わない! 


「相変わらず辛気くせえ顔してんな、シズハ」


 不意にクレアの声が聞こえて私はベッドから飛び起きる


「……いつから居たんですか?」


「さぁな? んなことより今回の事で悩んでるなら忘れろ! その方が楽だぜ?」


 クレアのその言葉は聞き捨てならなかった。


「何が忘れろですか! 10万人も死んだんですよ! 私達が……私が至らなかったせいで!」


「やったのはベルゼブルだろ? アタシらは出来ることをやった。それで十分だろ?」


 その言葉が頭に来た私はクレアを……殴ってしまった。


「……痛えなぁ、で? 少しは気分晴れたか?」


 クレアがこっちを見る。

 その表情は怒りではなく無表情だ。

 違う、私はこんなことがしたかったわけじゃない! 

 何で、私はクレアを殴るなんてことを……


「シズハ、今のお前の気持ちはわからねぇこともねぇ。実際、アタシらがもっと早く着いていたら助かったかもしれない命はある。けど、これが現実だ。そしてこれからも似たようなことが続くだろうよ。だから、辛いならアタシにぶち撒けろ! 泣いたっていい! 弱音を吐いたっていい! 怒りをぶつけたっていい! だけど……戦いからは逃げるな」


 クレアがそう言って私を抱きしめる。

 私は、私は……


「う、ぐ……私はまた助けられなかった……いっつも、いっつも!」


 私はクレアの胸の中で泣いた。

 苦しくて、辛くて、どうしようもなくって……うまく言葉にできない。


「いいよ、今だけは好きなだけ吐き出せ。辛いことは二人で背負おう。何たってアタシらは相棒(バディ)だ。だから……大丈夫」


 優しい声でクレアがそう言いながら、私の頭を撫でる。

 いつものクレアらしくないけれど、今はそれがありがたかった。

 私は弱くて、ダメで、だけどこれからずっと戦わなきゃいけない。

 自分で決めたことも成し遂げられないのに、なのに……


「もう大丈夫か?」


 私がひとしきり泣いた後、クレアが優しい笑顔で私に語りかける。


「……はい」


「そうか」


 私は涙を拭い、クレアに問う。


「クレア……私はどうすれば強くなれますか?」


「……」


 クレアは少しの間黙り込む。

 暫くしてその口が開かれた。


「無理に強くならなくても良いんじゃないか? シズハ、さっきも言ったがアタシたちは相棒(バディ)だ。だから、一人じゃ無理でも二人ならきっと何とか出来る。だから無理するな」


「それじゃあダメなんです! 私が強くならなきゃ! もしもの時にクレアを助けられない! もう……もう、大切な人を失うのは嫌なんです……」


 心から思った言葉をクレアに放つ。

 クレアは少し照れくさそうにした後に言葉を紡いだ。


「アタシを誰だと思ってる! 元魔王封印者クレア様だぞ! なぁに、そう簡単に死ぬほどやわじゃねぇよ! だから、シズハはゆっくりで良いから強くなれ!」


 いつもの調子でクレアはそう言い放つ。


「ふふ、そうでしたね! 私なんかよりもずっと強いんですもんね!」


「あったりまえよぉ! こちとら元最強シスターだからな!」


 そう語り合って、夜が深まっていく。

 そうだ、私は一人で抱えすぎたんだ。

 こんなに近くに頼りになる相棒がいるのに。

 だからこそ、私は戦い続けられる。

 暫くクレアと雑談をして眠りにつく。

 どうか、こんな日々を守れる位には強くなりたいと願いながら。

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