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混沌怪奇譚 夢幻に生きる者たちよ  作者: ラット
シスターズIII七大罪の魔王編
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新しい力

 ———1週間後 教会裏にて


「シズハ〜当たってねぇぞ〜……つうか、当てる気あるのか?」


 そう言いながら、聖装展開したクレアは私が放つ『勝利(ネツァク)』の攻撃を避け続ける。

 この1週間で『勝利(ネツァク)』で出せる攻撃パターンは劇的に増えた。

 斬撃、打撃、光弾、光柱(ビーム)現状はこの四つ、これらを織り交ぜたり斬撃の途中から光弾に変化させたりすることも出来るようになった、だけど当てられない。

 いや、クレアには当てたくない! 

 だってこの力は魔王を焼き尽くすほどの力がある。

 それを人に当てたら……考えるまでもない。

 だから……


「はぁ、しゃあねぇか」


 クレアはそう言って動くのをやめた。

 私は咄嗟に『勝利(ネツァク)』の進路を変えて外す。


「やっぱり、わざとか。それじゃダメだぜシズハ!」


 そう言ってクレアは私に近づいてきた。


「だって! あんなの当たったら……」


 言い切る前に腹部に痛みが走る。

 最初は理解できなかった、けど目で見てわかった。

 私は()()()()()()()()


「ダメじゃねえか? こんなに隙晒しちゃさぁ! 仲間が操られるくらい考えなきゃ!」


 痛い。

 痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い!!! 

 血が溢れて、これ、やだ……


「グッ……だあ!」


 クレアを思い切り蹴飛ばす。

 早く『慈悲(ケセド)』で傷塞がなくちゃ……


「させねぇ!」


 すぐさま次の一撃が来る。

 この間合いじゃ避けられない! 


「ッ! はぁ……っ『峻厳(ゲブラー)』起動!」


峻厳(ゲブラー)』の力を使い岩の壁を生やしガードする。

 早く、早く『慈悲(ケセド)』を使わなきゃ……


「邪魔くせぇなぁ、なら」


 岩の壁の隙間から光の輝きが見える。

 あれはマズイ! 

 逃げなきゃ……

 けど、血流しすぎて……動けない、嘘、やだ、こんな所でまだ死ねない! 

 それに、操られてるとは言えクレアにだけは殺されたくない! 


「はぁ、っ! 『栄光(ホド)』起動! 我が手に勝利を!」


 そう叫び『栄光(ホド)』を使う。

 それにより先程の光は消え去る。

 同時に『峻厳(ゲブラー)』を解除し……『勝利(ネツァク)』をクレアに放つ。

 収束した光の矢を右腕と両足に打ち込み動きを止める。


「がっぁぁぁあああ!!!」


 クレアが叫ぶ、けど今は『慈悲(ケセド)』で、傷塞がなきゃ……


「はぁ……はぁ…… 『慈悲(ケセド)』起動、我を癒せ」


 少しずつ傷が塞がっていく。

 だけど、血を流しすぎた。

 動けない、思考が鈍い、クレアを助けなきゃいけないのに。


「チッ、『慈悲(ケセド)』を使ったか。だが、その様子だとろくに動けないみたいだな? なら、死ね」


 そう言ってクレアは私の首を刎ねようとする。

 振りかざされた刃が首筋に当たり死を覚悟する。


「やっぱダメだな。シズハ、今日はもう休憩な!」


「は?」


 途端に口調がいつものクレアに戻る。

 何故? 

 だってクレアは……


「アタシが操られてると思ったって顔だな! 悪い、あれ演技だわ! 死にかければ本気になるかと思ったんだがなぁ〜」


 その言葉を聞いて私は激昂した。

 思いつく限りの罵倒をクレアにぶつけた。

 だって、だってあんなの悪趣味すぎる! 

 もし本当に私がクレアを殺したらどうするつもりだったんだ! 


「あー、悪い悪い。やり方が良くなかったな。けど、魔王どもはこれくらいはやってくるぜ? なら今のうちに慣れとけ」


 そう言ってクレアは立てない私に手を差し伸べる。

 私はその手を握って立ち上がり……クレアを全力でぶん殴った。


「……なんだ、やりゃできんじゃん」


「二度とあんな悪趣味なことしないでください! 次は本当に殺しますよ!」


「そうなることを祈ってるぜ、何せお前には『覚悟』が足りないからな!」


 そう言ってまたクレアは笑う。

 あぁ、頼むから笑わないで。

 私はそんな作り物の笑顔は見たくない! 


「おや、取り込み中だったかな?」


 不意に一人の少女の声が響く。

 私達二人はよく知る人物、不死の宇宙人リリスだ。

 その手にはアタッシュケースを持っていた。


「何、ちょっとした訓練の後の喧嘩さ! そんでもってお前が来たってことはできたんだな()()!」


 クレアは嬉しそうにリリスに問いかける。


「出来たが、君はまず傷を癒してもらえ」


 リリスの言葉でハッとする。

 私はすぐさまクレアに『慈悲(ケセド)』を使い傷を癒す。


「ふむ、生命の樹(セフィロト)の奇蹟か。まぁ、それはともかくご注文の()()()()だ。せいぜい大事に使えよ? 直すとなったらまた、グレンが死にかけるからな!」


 そう言ってリリスはホールを開いて消える。

 消える寸前に思い出したかのように顔だけ出してクレアに告げる。


「ちゃんと説明書読んでからつけろよ?」


「読むに決まってんだろ! アタシをなんだと思ってやがる!」


「ゴリラかな? まぁ、いい。じゃあな」


 そう言ってリリスはホールの中に消えた。


「誰がゴリラじゃ! どアホ!」


「クレアは脳筋で考えなしだからじゃないですか」


「シズハ、てめぇぶん殴るぞ?」


 クレアはそう言いながらもアタッシュケースを持って教会の2階の寝室に向かっていった。

 それに私もついていく。


「おっと、ここからはアタシ一人だけだ! ……覗くなよ?」


「そんな需要無いですよ。居間で待ってますね」


「ちょっとは乗れよぉ、つまんねーな」


 そう言ってクレアは一人寝室に入って行った。




 ◇◆◇




 説明書を読んだのち、着ている服を脱ぐ。

 失った左腕の代わりに新たな義手(左腕)を取り付ける。

 義手側の接着面が溶けて体と結合する。

 星外技術ってのはやっぱり凄い。

 何のラグもなく新しい腕を動かせる。

 そして失った右目に義眼を入れる。

 こっちも注文通りの仕上がりだ。

 これがあればまだアタシは戦える。

 1週間シズハと稽古して分かった、いや、分かっていた。

 アイツは優しすぎる。

 それは美点であり欠点だ。

 だからアタシがそれを補う。

 それがアタシの役目、これから苦痛の日々が待つシズハを少しでも苦痛から遠ざけるのがアタシの役目だ! 




 ◇◆◇




「と言うわけでどうよ? ニュークレアさんは! んん?」


 部屋から出てきたクレアは上機嫌に私に問う。


「前とそっくりですけど、やっぱり違和感ありますね」


「んー、どストレート。まぁ、こいつは戦闘用だしな!」


 そんな話をしているとジョンさんが部屋に入ってくる。


「二人とも悪いが、魔王が出た。場所は東京。現れたのは『暴食』のベルゼブルだ!」

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