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混沌怪奇譚 夢幻に生きる者たちよ  作者: ラット
シスターズIII七大罪の魔王編
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生命の樹

「さて、シズハ、お前の奇蹟はまず間違いなく『生命の樹(セフィロト)』だ」


 クレアが私を指差してそう告げる。

 生命の樹(セフィロト)、無限の光より生まれた10の光を宿す樹。

王冠(ケテル)』から始まり、『知恵(コクマー)』『理解(ビナー)』『慈悲(ケセド)』『峻厳(ゲブラー)』『(ティファレト)』『勝利(ネツァク)』『栄光(ホド)』『基礎(イェソド)』そして『王国(マルクト)』これら10の光からなるのが生命の樹(セフィロト)だ。


「私の奇蹟が…… 生命の樹(セフィロト)?」


「そうだ、そんでもってお前は()()()()()()()()()()()()


 力を出しきれていない? 

 魔王に対してあれだけのダメージを与えてクレアを死の淵から救えたのに? 

 困惑する私をよそにクレアは続ける。


「言っとくがお前が悪いわけじゃ無いぜ? 奇蹟の目覚めたての頃は誰もが陥ることさ! とにかく、お前の奇蹟は生命の樹(セフィロト)ってことはわかったな?」


「あんまり実感は湧きませんが一応は……」


「ならヨシ!」


 そう言ってクレアは笑う。

 思えばいつもクレアは笑ってばっかりだ。

 難しく考えているこっちがバカらしくなってしまう。

 そんな笑顔に今も私は救われているのかもしれないなぁ……


「さて、ここからは今後のシズハの役割だ。ズバリ! 魔王の再封印だ! 今の所『教会』最強戦力はシズハになっちまった。そんでもって魔王どもの目的不明だが強欲(マモン)が現世に現れた時点で戦線布告済みだ。当然『教会』側は魔王と戦わなくちゃならない。しかし『教会』も人員損失は少なくしたい。つまり……」


「私が戦うしか無い……ですか」


「正解、無論嫌なら言ってくれて構わないぜ? どんな手段使っても逃してやるからさ!」


 またクレアは笑う。

 だけど、今の私にはクレアの笑顔が痛くてたまらなかった。


「いいえ……いいえ! 私は戦います! 何より! 私はムカついてるんです! 魔王全員の首を刎ねるまで戦います!」


 私は机を勢いよく叩いて立ち上がる。


「マジかぁ……戦う(そっち)とっちゃうかぁ……つか、物騒だな相変わらず! まぁ、お前が決めた道だ横からあーだこーだ言わねぇが……『覚悟』はしろよ?」


 クレアが鋭い瞳で私を見る。

 私はその瞳を真っ直ぐ見返した。

 言葉はいらない。

 数刻の間の後クレアが喋る。


「マジみてぇだな、ならもう何も言わねぇ。思う存分魔王ども蹴散らせ! シズハ!」


「はい!」


 自らに自戒を込めて叫ぶ。

 私は魔王を必ず封印する。

 そしてもう、クレアが笑わない……無理して笑う必要のない世界にする! 

 だからこそ、私は力を使いこなしてみせる!




◇◆◇




———深夜 教会裏にて


「戦う……か、やっぱシズハはそっち選んじまうよなぁ」


アタシは部屋着で一人そう呟く。

正直、シズハには逃げて欲しかった。

そうすれば苦しまないから。

だって、たった一人で抱え込むにはあまりにもデカい問題だ。

なら、逃げちまった方が幸せだ。


「けど、今度は一人じゃないぜ。今回はアタシがいる……」


言葉にして自分を落ち着ける。

何が『アタシがいる』だ、ろくに力になれねぇくせに。

だけど、シズハの苦しみを一緒に背負うくらいなら出来るか?

そんな些細なことしかできねぇ自分が嫌で仕方がない。

()()()()()()ができたとしても力になれるかどうか……


「だぁ!アタシらしくねえな!」


そう言って草の上に寝そべって星を見る。

過去の事、現在(いま)の事、未来のことに思考を回す。

魔王はいつ来るか分からない、けど戦いになるなら情報を持ってる分ある程度は有利に立てるはずだ。

それに、契約を破棄した代償はちゃんと効いていた。

マモンが人の姿で来たのがその証だ。

後はシズハが完全に奇蹟を扱えるようになればいい。

ただ……


「どうか()()だけはするなよ、シズハ……」

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